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モルフ

ボールパイソンのクラウン|クリプティックと掛けたクラッチで、公開した7匹はすべてクリプトンの名前です

eyecatch

クラウンは Clown(道化師)で、Crown(王冠)ではありません。1996年ごろにアフリカから輸入された1匹のオスの、目の下にあった黒い模様が道化師の涙を思わせたことから、この名前が付きました。潜性で、模様が大きく減り、背に太い暗色の帯が通ります。

長く「見た目で分けるモルフ」として扱われてきましたが、クラウンを正面から扱った査読論文が出ています。オンライン公開は2024年11月、掲載は Pigment Cell & Melanoma Research の2025年38巻1号です。ブリーダーと愛好家から集めた脱皮殻からDNAを取り、クラウン38匹をまとめた群とそうでない群を比べたもので、浮かび上がったのはMC1R という遺伝子の、たった1アミノ酸の置き換わりでした。

同じ論文は、クリプティックが同じ MC1R 上の別の置換だとも報告しています。クラウンとクリプティックを掛けて出る「クリプトン」については、論文は複合ヘテロ接合という仮説を示し、その検証のための遺伝子型判定も行っています。当店の2023年の記録にちょうどその組み合わせがあり、9卵が9匹孵って、公開した7匹は全部クリプトンとして登録されています。クラウンとして登録された個体は1匹もいません(名前は親の組み合わせと見た目から付けたもので、遺伝子検査の結果ではありません)。

この記事では、見分けどころの頭の模様、コンボの実例、アムールやギズモとの関係、「het クラウンは見た目で分かる」という長い議論、そして脱皮殻でできる遺伝子検査を、Morphpedia・World of Ball Pythons・査読論文・当店の公開記録にあたって整理します。確かめられていることと、まだ確かめられていないことは、分けて書きます。

目次

  • 名前は「王冠」ではなく「道化師」です
  • クラウンの特徴は、頭の模様によく出ます
    • 頭:頭頂に模様が乗り、目のストライプは消える傾向
    • 胴:体側の明るい面が広がり、背に太い暗色の帯が通ります
  • 名前は1996年の1匹から、最初のクラウンは1997年組から
  • 査読論文が指したのは、MC1R の1アミノ酸です
    • 皮膚を切って見ると、色素細胞の数と場所が変わっていました
    • 論文の限界と、読むときの注意点
  • クラウンの席は、クリプティックたちと共有です
    • 当店の記録:公開した7匹は、すべてクリプトンとして登録されています
    • アムールとギズモは「クリプティックと同じ変異」と書かれています
  • コンボで化ける、と言われてきたモルフです
    • 当店が出してきたクラウンのコンボ
  • 「het クラウンは見た目で分かる」という話
    • 遺伝子検査があるモルフのひとつです
  • 飼い方はノーマルと同じ。ただし重ねる相手は見てください
  • 参考資料

名前は「王冠」ではなく「道化師」です

クラウンは Clown(道化師)で、Crown(王冠)ではありません。当店のモルフ図鑑も、わざわざ「クラウンは、Clown(ピエロ)でCrown(王冠)ではないのでご注意ください」と注意書きを入れています。

由来は、最初の1匹の顔にありました。MorphMarket の Morphpedia は「最初に野生で捕獲されたクラウンのボールパイソンは、目の下に小さな黒い涙のような模様を持っていて、それが道化師がよく描いている涙の滴を思わせた」と書いています。当店の図鑑の記述も同じで、「野生で捕獲した個体(最初のクラウン)の目の下には、ピエロ(道化師)に描かれている涙のような黒い模様があった」としています。

つまり、名前の出どころは模様です。高貴さでも希少さでもありません。

ちなみに「ロイヤルパイソン」のほうは本当に「王」の話ですが、こちらも由来がはっきりしません。どこから来た呼び名なのかはロイヤルパイソンとボールパイソンの違いの記事に整理しました。

クラウンの特徴は、頭の模様によく出ます

クラウンは色と模様の両方を変えるモルフです。ただ、コンボになると色は相手に引きずられるので、資料が手がかりとして挙げているのは、たいてい頭の模様のほうです。

頭:頭頂に模様が乗り、目のストライプは消える傾向

Morphpedia のクラウンのページは、頭をこう書いています。

「ノーマルのボールパイソンの、すっきりした暗い頭と比べると、クラウンの頭は明るくて賑やかで、唇の上・目の下・頭のてっぺんに模様が出る」

当店の図鑑も、同じところを別の言い方で押さえています。「体の模様の延長のような乱れたヘッドスタンプが確認できます」「顔はノーマルのボールパイソンに見られるようなアイラインのような模様は消失します」——さらに「鼻付近にヒゲのような表現を表す個体も多くいます」とあります。

World of Ball Pythons の説明文も、短い1文のなかに同じ点を入れています。「Clown is a genetic black back, with a distinct head pattern where the eye stripes are almost always removed.(クラウンは遺伝的なブラックバックで、目のストライプがほぼ必ず消える、はっきりした頭の模様を持つ)」

資料によって、書いていることが違います。頭の上が賑やかになるほうは Morphpedia と当店の図鑑の2つ。目を通るストライプが消えるほうは World of Ball Pythons と当店の図鑑の2つで、Morphpedia の頭の記載には出てきません。しかも World of Ball Pythons は「ほぼ必ず(almost always)」と書いていて、例外を残しています。どちらも傾向の話で、1匹を見て決める物差しにはなりません。

当店のモルフ図鑑のクラウンのページに載せている頭部の写真。頭頂に模様が乗り、唇の上にも模様が出ています

ボールパイソンのクラウンの頭部を上から寄って撮った写真。頭のてっぺんと唇の上に模様が出ている

胴:体側の明るい面が広がり、背に太い暗色の帯が通ります

Morphpedia の胴の記載は「クラウンのボールパイソンは模様が大幅に減り、太く暗い褐色の背側のストライプと、ノーマルの『エイリアンヘッド』からのわずかなバンドだけになる。模様はくっきりして整理され、斑点や滲みが少ない」です。

当店の図鑑は「サイドのパターンが減少し、背中に褐色の乱れたラインが現れる個体が多くいます」、腹は「中央に黄色のラインがうっすら見え、サイドには点々の模様が確認できます」。Morphpedia の腹の記載「中央の鱗に黄色みが走り、外縁に薄れた斑点が出る、おおむねきれいな腹」と向きが同じです。

Morphpedia は「ティアドロップ(涙の滴)」という項目も立てています。「クラウンはふつう、体に沿って涙の滴のようなバンドを見せる。太さも長さもさまざま」。名前の由来になった目の下の模様とは別に、胴にもこの呼び名が使われます。

色はあてになりません。当店の図鑑は体色を「金色、黄土色のような色」と書き、Morphpedia の歴史の項は最初の1匹を「淡い黄金色の地色」としています。ただしクラウンは組み合わせる相手で色が大きく変わります。下で触れる当店の個体名を見ても、ブラックパステル・チョコレート・GHI・ファイアなど、地色を動かすモルフと重ねたものが並びます。「金色っぽいかどうか」は、クラウンの判定基準になりません。

名前は1996年の1匹から、最初のクラウンは1997年組から

名前が付いた年と、クラウンが最初に孵った年は違います。Morphpedia の History は、こう書いています。

  • 1996年ごろVida Preciosa International(VPI)の Dave & Tracy Barker が、アフリカから見慣れないオスのボールパイソンを輸入した。変わった頭の模様と、淡い黄金色の地に極端にすっきりした胴の模様を持っていた。目の下の斑点が道化師の涙を思わせたので「クラウン」と名づけた

  • 1997年同じ模様を示すオス1匹・メス2匹の幼体を、アフリカから入手した

  • 1998年そのオスを数匹のノーマルのメスに掛けた。孵ったのはノーマルに見える子ばかりだった。これで、この変異は(遺伝するものだとしても)不完全顕性ではないと分かった

  • 1999年1997年組が繁殖できる大きさになったので掛け合わせ、最初のクラウンの子が生まれた

  • 2000年1996年のオスと1997年のクラウンを掛け、さらにクラウンが生まれた

  • 2001年BHB Reptiles も同じ特徴の野生個体のオスを入手しており、VPI のクラウンと掛けて最初のクラウンのクラッチを出した

当店の図鑑も、年の並びは同じです。1998年にノーマルのメスからヘテロを取ったことをもって、顕性でも不完全顕性でもないことが示された、という書き方です。ノーマルしか出なかったこと自体が、この場合は答えになっています。

この2つを独立した2件として数えることはできません。Morphpedia の「1999年」に付く脚注は World of Ball Pythons を指しており、History 本文の脚注は Ralph Davis Reptiles の「The Matrix」を指しています。当店の図鑑も、同じ Ralph Davis Reptiles のページを参考に挙げています。元をたどると、同じ1本か2本の記述に行き着きます。

Morphpedia の基本情報欄は、最初に作出された年を1999年としています。World of Ball Pythons も同じく1999年です。1996年のオスは名前の由来になった個体で、最初のクラウンを出した個体ではありません。Morphpedia は「実証された系統(proven lines)」の欄に「VPI Line, BHB Line」の2つを挙げています。

査読論文が指したのは、MC1R の1アミノ酸です

クラウンを正面から扱った査読論文が、マギル大学などの Garcia-Elfring らから出ています。Pigment Cell & Melanoma Research の2025年38巻1号に載ったもので、オンライン公開は2024年11月28日です。クラウンだけでなく、あとで触れるクリプティックの検証も同じ論文に入っています。

Garcia-Elfring A, Roffey HL, Abergas JM, Wuyts J, Hendry AP, Tzika AC, Barrett RDH. “A Ball Python Colour Morph Implicates MC1R in Melanophore–Xanthophore Distribution and Pattern Formation.” Pigment Cell & Melanoma Research. 2025;38(1):e13215. doi:10.1111/pcmr.13215(オンライン公開は2024年11月28日)

調べ方は、脱皮殻を集めることでした。商業ブリーダーと愛好家に呼びかけ、孵化の記録でモルフが分かっている個体の脱皮殻からDNAを取り、クラウン38匹ぶんをまとめた群と、クラウンを持たないことが血統から分かっている群(ハイポ/ゴースト21匹、スパイダー26匹)を比べています。

その結果、クラウンの群だけで差が固定されていたのは第3染色体の、ひと続きの区間でした。その区間に入っていた遺伝子は98個。解析ソフトのふるいを通った塩基置換のうち、タンパク質を変えるものは1つだけで、それがメラノコルチン1受容体(MC1R)の c.149G>A、アミノ酸でいうと p.Ser50Asnでした。

「1つだけ」には、論文自身が但し書きを付けています。VCF ファイルをさらに調べると、7つの遺伝子にまたがる9か所のミスセンス変異(ZFHX3・COG8・CDH1・MC1R・SPG7・PIEZO1・IL17C)があり、これらは解析ソフトのふるい(読みの深さ・対立遺伝子の頻度・群間でのデータの揃い方)を通らなかった、と書かれています。「タンパク質を変えるのは MC1R だけだった」のではなく、「ふるいを通ったものの中では MC1R だけだった」ということです。

MC1R は、鳥や哺乳類では「どの種類のメラニンをどれだけ作るか」を決める遺伝子として知られています。人の赤毛もこの遺伝子の変異と結びつけられています。ところが論文は、ボールパイソンでは違う役割をしているらしい、と書いています。

「In contrast, our results suggest that MC1R signalling might play a key role in pattern formation in ball pythons, affecting xanthophore–melanophore distribution.(これに対し、我々の結果は、ボールパイソンでは MC1R のシグナル伝達が模様の形成に重要な役割を果たしていて、黄色の色素細胞と黒い色素細胞の分布に影響しているかもしれないことを示唆する)」

鳥や哺乳類で知られている「色の種類を決める」という役割とは、働き方が違うらしいということです。論文自身も、クラウンでは「色の濃さと模様の両方が変わっている」と書いています。

クラウンとクリプティックは、同じ MC1R の中の違う場所です

MC1R 上のクラウンの置換とクリプティックの置換、および組み合わせごとの表現を並べた図

皮膚を切って見ると、色素細胞の数と場所が変わっていました

同じ論文は、クラウンの個体1匹から3か所の皮膚を取り、顕微鏡と電子顕微鏡で見ています。

  • 背の黒いところノーマルと同じように、真皮にも表皮にも黒い色素細胞(メラノフォア)があった

  • 背の茶色いところ黒いところに比べて真皮のメラノフォアが減り、黄色い色素細胞(キサントフォア)が入っていた

  • 体側の黄色いところ表皮のメラノフォアはまばらにしかなく、真皮のメラノフォアはほぼ完全に欠けているように見えた。キサントフォアは、中身がまだ層になっていない未成熟なものだった

電子顕微鏡で色素の粒そのものを見ても、ノーマルとの違いは背の黒い皮膚に未成熟なメラノソームがあったこと1点だけで、論文はこれを「サンプルが1歳の幼体で、比較した野生型が3歳だったせいかもしれない」と断っています。そのうえで、こう結論しています。

「クラウンで見られる皮膚の模様と色の濃さの違いは、おそらくメラノフォアの移動と数が変わったことによるもので、メラノフォアの微細構造が変わったせいではない」

論文の限界と、読むときの注意点

この論文は、自分の限界を本文に書いています。結論として受け取るなら、ここまで込みです。最後の1項目だけは、論文が書いていることではなく、この記事で原文を照合して気づいたことです。

  • 「原因の候補」であって「原因」ではありません。本文の言い方は “associated(関連がある)”・“likely cause(原因である可能性が高い)”・“putatively responsible(おそらく原因)” です。ただし冒頭に置かれた要約ボックスだけは「Our study demonstrates that MC1R influences…(我々の研究は MC1R が…に影響することを示している)」と限定なしで書いています。同じ論文の中でも、言い方の強さが揃っていません

  • 区間の中の大きな欠失や構造変異は調べていません。比較に使ったのはビルマニシキヘビのゲノムで、ボールパイソン自身の染色体レベルのゲノムがまだ無いためです

  • 機能の検証はこれからです。論文は「functional validation, for example with CRISPR-Cas9 gene-editing, is necessary to confirm our findings.(我々の結果を確定するには、たとえば CRISPR-Cas9 によるゲノム編集のような機能的検証が必要である)」と書いています

  • 最も差が大きかった1か所は、MC1R ではありません。いちばん有意だった塩基は遺伝子と遺伝子のあいだにあり、両隣の遺伝子はこれまで動物の体色と結びつけられたことがないものでした

  • ふるいを通らなかったミスセンス変異が、7遺伝子に9か所あります。上の但し書きのとおりです。MC1R 以外が消えたのではなく、解析の条件で候補から外れただけです

  • (この記事で原文を照合したところ)論文の中で、数字が噛み合っていないところがあります。候補領域は「3.23メガ塩基」と書かれていますが、併記された座標(667,960〜3,296,430)の差は約2.63メガ塩基です。クリプティックの置換も「クラウンの変異から491塩基下流」と書かれていますが、併記された c.149 と c.541 の差は392です。どちらが正しいかは本文からは決められないため、距離と区間の長さは、この記事では確定した値として使っていません

クラウンの席は、クリプティックたちと共有です

Morphpedia はクラウンに「Complex: Clown(クラウンコンプレックス)」という欄を立てていて、関連するモルフとしてクリプティックとギズモを挙げています。当店の図鑑も「クラウンコンプレックス(クリプティック/ギズモ/アムール)」と書いています。

対立遺伝子——同じ場所(席)を取り合う関係です。対立遺伝を解説した記事に基本を書いていますが、ここでは買う前・組む前に効く形で整理します。

この論文は、その関係にも踏み込んでいます。クリプティックの個体を PCR で調べたところ、同じ MC1R の c.541G>A(p.Asp181Asn)という別の置換が見つかりました。同じ遺伝子の、別の位置です。

父から受け取った1本にクラウンの置換、母から受け取った1本にクリプティックの置換。この組み合わせが「クリプトン」の表現につながる、というのが論文の仮説です。

確率は組み合わせで変わります。クラウン(ホモ)×クリプティック(ホモ)なら子は全頭クリプトン。het クラウン × het クリプティックなら、クリプトンは4分の1で、残りは片方の het か、どちらも持たない子です(いずれも、親が表記どおりの遺伝子型だったときの、子1匹ごとの理論上の確率です)。対立遺伝の記事にはこの掛け合わせが「クリプトンが誕生します」とだけ書いてあるので、割合はここで補っておきます。

この部分は、論文の中では仮説として書かれています。原文は「We hypothesise that Clown and Cryptic share a common genetic basis, with Crypton resulting from compound heterozygosity.(クラウンとクリプティックは共通の遺伝的基盤を持ち、クリプトンは複合ヘテロ接合の結果である、と我々は仮説を立てる)」です。そのうえで論文は、クリプトンと申告された5匹を含む追加の検体について、遺伝子型判定も行っています。ただし1匹ずつの判定結果は本文になく、参照先の補足表をこの記事では確認できていません。ここで言えるのは、仮説が示され、その検証のための判定が行われたところまでです。

当店の記録:公開した7匹は、すべてクリプトンとして登録されています

当店の繁殖記録に、ビジュアルどうしを掛けた組み合わせが1件あります。

クラッチ LCB20231023010
オス:レッサー レオパード クラウン/メス:クリプティック
2023年10月23日に9卵、2023年12月24日に9匹が孵化

この9匹のうち、当店が個体ページとして公開しているのは7匹です。名前はこうなっています。

  • クリプトンLIL2023045・LIL2023046

  • レッサー クリプトンLIL2023047・LIL2023048・LIL2023049

  • レッサー レオパード クリプトンLIL2023050・LIL2023051

7匹すべてがクリプトンとして登録されていて、クラウンも、クリプティックも1匹もいません。父がクラウンの席を2つともクラウンの型で埋め、母が2つともクリプティックの型で埋めているなら、子は必ず片方ずつ受け取ります。結果はクリプトン一択で、公開した名前はその予測と合っています。

ただし、これは遺伝子検査の結果ではありません。当店が個体に付けた名前は、親の組み合わせと見た目から決めたものです。その名前を根拠に「予測が正しかった」と言えば、話が一周してしまいます。ここで外から確かめられるのは、「このクラッチに紐づく公開個体7匹が、すべてクリプトンという名前で登録されている」——そこまでです。

クラッチ LCB20231023010(レッサー レオパード クラウン ♂ × クリプティック ♀、9卵9匹孵化)の子たち。同じクラッチでも、模様の出方は1匹ずつ違います

クラウンとクリプティックの交配から孵ったボールパイソンの幼体が、白いケースの中に集まっている写真。明るい個体と暗い個体が混じっている

公開している7匹は、孵化した9匹すべてではありません。当店の個体一覧は販売用に公開したものなので、クラッチの全数とは一致しません。ここで確かめられるのは「公開した7匹が、すべてクリプトン名で登録されている」までで、残り2匹の表現も、レッサーやレオパードがどう渡ったかの割合も、公開情報からは読めません。割合の読み方はモルフ計算機の使い方に書きました。

当店が公開しているクリプトンは、このクラッチの7匹を含めて全部で10匹です。残る3匹(レオパード クリプトン Het デザートゴースト1匹、クリプトン 66% Het デザートゴースト系2匹)には親クラッチの記載がないので、どの交配から来たのかは公開情報では分かりません。

片方がヘテロのクラッチもあります。クラッチ Lil25004はスポットノーズ クラウン Het デザートゴースト ♂ × パステル DHet デザートゴースト クリプティック ♀で、7卵が7匹孵りました。父はクラウンを2つ持ち、母はクリプティックを1つだけ持つ組み合わせなので、子は半分がクリプトン、半分が het クラウンという見込みになります。上のクラッチのように「全頭クリプトン」にはなりません。

アムールとギズモは「クリプティックと同じ変異」と書かれています

当店の図鑑には、アムールのページに「現状知る限りでは、明確な証明のソースは確認できていません」という記述が残っています。一方、クリプティックのページには「現在(2023年9月)は、クリプティックとアムールは同一の遺伝子であることが証明されています」とあります。当店のサイトの中でも、書かれた時期によって温度差があります。

いまの MorphMarket は、名前の側では統合しています。Morphpedia のクリプティックのページは、別名(aliases)の欄に「Amur, Gizmo」と書いていて、アムールにもギズモにも独立したモルフのページはありません。ただし同じページの「実証された系統」の欄は「NERD line, Gizmo, Amur」と3つを並べていて、系統としては別のまま扱われています。

論文も、この点に1段落を割いています。

「In the ball python breeding hobby, the recessive colour morphs known as Amur and Gizmo were initially treated as distinct morphs that were allelic with Cryptic and Clown. Subsequent genotyping by a private company (Proherper.com) showed that Cryptic, Amur, and Gizmo carry the same mutation as Cryptic. It remains to be seen if they carry additional mutations at this or another locus.
(ボールパイソンの繁殖の趣味では、アムールとギズモとして知られる潜性のモルフは、当初クリプティックやクラウンと対立遺伝子の関係にある別のモルフとして扱われていた。その後、ある民間企業〈Proherper.com〉による遺伝子型判定で、クリプティック・アムール・ギズモがクリプティックと同じ変異を持つことが示された。これらが同じ座や別の座にさらに変異を持っているかどうかは、まだ分かっていない)

「まだ分からない」がかかる範囲は、限られています。論文が未解明としているのは「同じ座や別の座に、さらに変異を持っているかどうか」のほうで、3者が同じ変異を持つという判定そのものではありません。ただし論文は、これを民間企業による遺伝子型判定の結果として紹介しています。

当店の図鑑のアムールのページには、オリジネーターを尊重して「一旦はアムール、クリプティックは別モルフとして繁殖等進めていく予定です」という方針が書かれています。系統の名前は由来を示すものなので、残っていて構いません。一方で繁殖計画を組むときは、同じ席を使うものとして扱うのが無難です。

検査の側も、まとめています。ボールパイソンのモルフ検査を出している ProHerper Labs の公開一覧では、「Cryptic/Migraine/Gizmo/Amur」が1行の検査としてまとまっています(クラウンは別の行です)。

ただしこれは、論文とは別の裏付けにはなりません。ProHerper Labs は World of Ball Pythons を運営している会社で、上の論文が「ある民間企業」として名前を挙げているのも、同じ会社です。商品一覧の行の分け方は、遺伝学の所見そのものではなく、検査メニューのまとめ方でもあります。同じ出どころを2回数えることはできません。

当店には、「アモン」として登録された個体も、2026年生まれで573〜578の6匹います。アモンはアムールとクラウンを1つずつ持つ個体の呼び名で、クリプトンと同じ成り立ちです。ただしこの6匹は親欄が空なので、どの交配から来たのかは公開情報では分かりません。

コンボで化ける、と言われてきたモルフです

World of Ball Pythons のクラウンの説明文は、こう締めています。

「It's one of the best morphs out there, as it always throws a curve ball whenever it is combined with something else. Clown never disappoints.(何かと組み合わせるたびに必ず予想外の球を投げてくるという意味で、クラウンは出回っているモルフの中でも最高のひとつだ。クラウンが期待を裏切ることはない)」

当店の図鑑も「クラウンは、発見されてからの歴史が長いため様々なコンボモルフが生み出されています」と書き、Morphpedia には名前の付いたクラウンのコンボが並びます——キラークラウン(スーパーパステル+クラウン)、グレイル(ラベンダーアルビノ+クラウン)、バットマン(レオパード+スポットノーズ+クラウン)、キャンディードクラウン(ゴースト+クラウン)など。

これは愛好家の評で、論文の記述ではありません。上の論文は、コンボの見栄えや商品としての価値については何も書いていません。ただしアルビノとクラウンを両方持つ個体の見た目を、色素細胞の分布を考えるための材料として使っています。

論文は、アルビノとクラウンの両方を持つ個体の写真から、黄色がどこに出ているかを読み取っています。アルビノは黒い色素を作れないので、残った黄色だけが見えるようになるからです。皮膚切片の組織観察とは別で、見た目からの推測です。

アルビノだけを持つ個体では、黄色はノーマルの茶色い部分にあたる場所に出て、黒い部分にあたる場所は白くなります。これに対しアルビノ+クラウンの個体では、黄色の広がりが体側だけでなく背の正中線にまで及んでいました。ノーマルでは、そこに黄色はありません。

論文は、クラウン単体の背に出る明るい褐色の帯もこの黄色の広がりのせいかもしれないとしています(原文は “possibly responsible for”)。そして全体の解釈としては、「MC1R の変異が、発生の途中でメラノフォアの生き残りや移動に影響し、キサントフォアとのやりとりにも関わっているかもしれない、と推測できる」(原文は “we can thus speculate”)というところで止めています。

論文が踏み込んでいるのはここまでです。コンボが派手になる理由を説明したものではありません。それでも、クラウンが変えているのが色の濃さだけでなく色素細胞の置かれ方だとすれば、相手のモルフが持ち込む色の出どころも動く——という読み方は、観察と矛盾しません。

当店が出してきたクラウンのコンボ

当店が公開している個体一覧357件のうち、名前に「クラウン」が入るものは181件です。ただしこの181件には「Het クラウン」のようにヘテロとして書かれたものも含まれますので、181匹が見た目にクラウンというわけではありません。繁殖記録のほうは、公開している38クラッチのうち22クラッチがクラウン絡みでした(いずれも2026年10月時点)。

組み合わせの幅は、名前を並べるのが早いと思います。

  • 地色を動かす相手ブラックパステル クラウン、GHI ハリケーン ブラックパステル クラウン、チョコレート クラウン Het デザートゴースト、シナモン クラウン

  • 模様を動かす相手スペシャル スポットノーズ クラウン、レッサー レオパード クラウン、イエローベリー クラウン、ブラックパステル レオパード クラウン Het ラベンダー

  • 潜性どうしを重ねたものレオパード ゴースト クラウン Het デザートゴースト(ゴーストもクラウンも見た目に出ています。Morphpedia でいう「キャンディードクラウン」の組み合わせです)

  • ヘテロで仕込んでいるものクラウン Het デザートゴースト、パステル クラウン Het TSK アザンティック、GHI モハベ DHet デザートゴースト クラウン

当店のモルフ図鑑のクラウンのページにも、スポットノーズ チョコレート クラウン/ファイア ディスコ イエローベリー クラウン/パステル クラウン/ファイア クラウンの写真を載せています。実物は図鑑のクラウンのページにあります。

当店の繁殖記録には、オーナー自身の動機も残っています。クラッチ Lil25024 の記事に、「3,4年前に初めてイベントでStranger Clownを見て感動し他のコンボも見たくてKINOVAからPastel Stranger Clownを買い2年間何度も指切りを確認するも、一切産まれず、ようやく今Stranger Clown絡みの個体と出会えそうで感激」とあります。2年かかっています。

うまくいった回だけを並べるのはフェアではないので、同じ年の数字も出します。クラッチ Lil25021(パステル ストレンジャー クラウン × パステル シナモン クラウン)は6卵のうち孵ったのは1匹、クラッチ Lil25009(ディスコ ファイア イエローベリー クラウン × スーパーファイア Het クラウン)は5卵のうち1匹でした。ただし、クラウンだから落ちたとは言えません。当店が公開している38クラッチを、親の名前にクラウンの表記が入るかどうかで分けると、入るほう22件は140卵・128匹(全部孵ったのは18件)、入らないほう16件は86卵・69匹(全部孵ったのは11件)です。この分け方には「Het クラウン」「50% Het Clown」のような表記も入るので、持っている遺伝子で分けたものではありません。この記録から、遺伝子と孵化の成績の関係を判断することはできません。(公開記録のうち1件は孵化日が産卵日より前になっているため、年では切らず全件で数えています)

「het クラウンは見た目で分かる」という話

クラウンは潜性のモルフとして扱われていて、2本ある染色体の片方だけにクラウン型の変異を持つ個体(ヘテロ)には、クラウンらしい表現は出ないとされています。ただし「わずかな差も一切出ないか」は、分類の名前だけでは決まりません。ホビーの中では「het クラウンは分かる」という主張が繰り返されてきました。

MorphMarket のコミュニティに、「Is Clown really an Incomplete Dominant Trait?(クラウンは本当は不完全顕性なのでは?)」という2022年1月5日から2月22日までの全92件のスレッドが公開されたまま残っています。日付も発言者も見られるので、読者が自分で確かめられます。

  • 分かるという側「ずっと一貫して気づいている。すごく微妙だから、het パイほど多くの人が拾えていないだけだ」「レオパードと組むとよく出る」。別の参加者は「het クラウンのほうが見た目で分かりやすいと思う。het パイよりもずっと」

  • 分からないという側「自分もかなりの数の het クラウンを孵してきたが、自分には選べないし、誰にも選べないと思う。もちろん間違っているかもしれないが」

  • 写真でのクイズある参加者が7枚の写真を出し、「het クラウンを見つけてみて」と投げかけた。先に出た回答は「少なくとも4番と6番」。そのあと出題者が明かした答えは「2番・4番・6番」だった

やりとりの中で、「分かる」と言っている側の人自身がこう書いています。「100%の精度で判定できると主張しているわけではない。絶対にできないから。ただ、手がかりはあると思う」

このスレッドには、過去の失敗例も出てきます。ある参加者が「多くの人が(今もそう思っている人がいるが)ペイントを不完全顕性だと考え、自分が見えていると思った『マーカーや特徴』で大量の個体を売ったが、それは一度も証明されなかった」と書きました。

これを受けた別の参加者——上の写真クイズを出した人で、「手がかりはある」と言っている側の人でもあります——の返しは、「これはいい教訓だと思う。なぜなら、心の底ではクラウンとパイは不完全顕性かもしれないと思っているけれど、ラベルを変えると誰にとっても事態がひどくややこしくなりかねないからだ。……いまのところ潜性のラベルのままにしておくほうが無難に思える」でした。

この参加者は、誤った表示を招きかねない分類の変更に慎重だ、ということです。

上の論文は、この議論には答えていません。測ったのは変異の場所で、ヘテロの個体がどう見えるかではないからです。

論文がヘテロをどう集めたかは、2通りに分かれています。サンガー法で確かめた群は「血統から分かっている」個体(het クラウン17匹、het クリプティック12匹など)。いっぽう検体数を増やすためにヨーロッパから追加した80匹は、採取時の分類が「ブリーダーがそう述べた(described by breeders as)」という括りです(het クラウン36匹、het クリプティック38匹など)。申告と遺伝子型判定がどれだけ一致したかは、本文では分かりません。

遺伝子検査があるモルフのひとつです

見た目で決めずに済む道が、クラウンにはあります。

Morphpedia は、クラウンとクリプティックの両方に「Genetic Test Available(遺伝子検査あり)」のタグを付けています。Morphpedia に載るボールパイソンの形質231件のうち、このタグが付くのは55件です(2026年10月時点)。World of Ball Pythons のクラウンのページにも「Genetic Tests Available: Clown」と出ます。

実際に検査を出している会社のうち、公開の一覧でクラウンを確認できたのはProHerper Labsです(一覧の中身はクリプティックの章に書いたとおりで、World of Ball Pythons の検査リンクの飛び先もここです)。

検査の材料は脱皮殻です。ProHerper Labs の手順書は、「最低でも手のひらの大きさ」の乾いた脱皮殻を求めています(ベビーなら1匹ぶん全部。1枚で最大5つの検査に使えるとあります)。乾いていれば室温で3か月は保存でき、冷凍庫に入れたほうが検査が失敗しにくいこと、日に当てて乾かすと検査が失敗することも書かれています。上の論文が脱皮殻からDNAを取ったのと同じやり方で、採血もプロービングも要りません。

もう1社、Rare Genetics Inc. も脱皮殻による検査を出しています。自社サイトでは「No popping, no probing—just a safe, lab-verified shed test.(ポッピングもプロービングもしない。安全で、ラボで検証された脱皮殻の検査だけ)」と説明しています。

検査には等級があります。Rare Genetics Inc. は自社の基準としてテストに A+/A/B/C の等級を付けていて、最上位の A+ の条件は3つで、「その変異を記述した査読論文が1本以上あること」「ホモ・ヘテロ・ノーマル合わせて1000検体を超える照合が既知の遺伝と一致していること」「その表現を起こす既知の変異をすべて検査が網羅していること」。想定精度は99.9%超としています。いちばん下の C については、「陰性という結果は、まだ検査のない別の変異を持っている可能性がある、という意味になりうる」と自社で明記しています。

どのモルフがどの等級にあたるかの一覧は、この記事を書いた時点では確認できませんでした。料金と納期も変わるのでここには書きません。注文する前に、検査の対象・等級・結果の読み方を会社に直接確認してください。

また、上のスレッドの中で「いまの遺伝子検査でこの議論は決着するのか」と問われた参加者が、「決着しない。検査が示すのはヘテロかホモかだけで、潜性なのか不完全顕性なのかは示さない」と答えています。検査が答えるのは「持っているか」で、「どう見えるか」ではありません。

「ヘテロ」と書かれていても、そのとおりとは限りません。イエローベリーでは、ヘテロと申告された130匹のうち約4分の1が申告どおりではなかった、という数字が報告されています。イエローベリーの記事に整理しました。

飼い方はノーマルと同じ。ただし重ねる相手は見てください

Morphpedia のクラウンのページは、健康上の問題(issues)の欄が空のままです。当店の図鑑のクラウンのページにも、クラウンだから気をつけることは書いてありません。ただし「欄が空」は「問題が無いことが確かめられた」とは違います。言えるのは、クラウンのために飼育条件を変えるべきだという記載が、今回確認した資料にも当店の記録にも出てこないということです。ふだんの飼い方は、当店のこれらの記事がそのまま当てはまります。

  • 温度適温と温度勾配の作り方

  • 湿度資料ごとに違う数字と、60〜80%の作り方

  • ケージ床面積の考え方と選び方

気をつけるとすれば、重ねる相手のほうです。Morphpedia に載るクラウンのコンボの中には、アシストール(ヘテロレッドアザンティック+パステル+スパイダー+クラウン)のようにスパイダーを含むものがあります。スパイダーには頭が揺れる症状(ウォブル)の報告があり、クラウンと組んだからといってそれが消えるわけではありません。スパイダーとウォブルの記事に、分かっていることと分かっていないことを分けて書きました。

当店の図鑑のクラウンのページは、最後をこう締めています。「クラウンは、その表現のかっこよさから世界中にたくさんのファンがいます。個人的には、一番好きな潜性モルフです」

参考資料

  • 査読論文Garcia-Elfring A, Roffey HL, Abergas JM, Wuyts J, Hendry AP, Tzika AC, Barrett RDH. “A Ball Python Colour Morph Implicates MC1R in Melanophore–Xanthophore Distribution and Pattern Formation.” Pigment Cell & Melanoma Research. 2025;38(1):e13215. doi:10.1111/pcmr.13215

  • MorphpediaClown/Cryptic(MorphMarket、最終更新2025年2月5日)

  • World of Ball PythonsClown

  • コミュニティIs Clown really an Incomplete Dominant Trait?(MorphMarket Community、2022年、全92件)

  • 遺伝子検査Genetic tests(ProHerper Labs)(ボールパイソンのモルフ検査の一覧に「Clown」と「Cryptic/Migraine/Gizmo/Amur」。脱皮殻の集め方と保存のしかた)/Rare Genetics Inc.(脱皮殻による検査とテスト等級の説明)

  • 当店の一次情報モルフ図鑑:クラウン/クリプティック/アムール/クラッチ LCB20231023010

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