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飼育

ボールパイソンの引っ越しと運び方|ヘビの移動は別に手配。新居のケージが動いてから移す

eyecatch

引っ越しが決まると、ヘビの話は「当日どうやって運ぶか」から考えたくなります。ただ、先に効いてくるのは日程のほうです。

ヘビを、家財と同じ便で運んでもらえるとは限りません。国土交通省が公示している標準引越運送約款は、引受けを拒絶することがある荷物として「動植物」を挙げています。日本通運は「取り扱っておりません」と書き、アート引越センターは専門業者への取り次ぎを案内しています。自分の車で運ぶのか、爬虫類を扱える輸送に頼むのか——ヘビの移動は別に手配するものとして、見積りの前に決めることになります。

もう1つあります。迎えるときの資料は「連れ帰る前の少なくとも3日間、ケージの温度が継続して維持されていること」を勧めていますが、新居のケージを当日に組むと、この3日が取れません。だから家財の搬出と、ヘビの移動は、それぞれの条件で決めます。新居の設備を先に動かして確かめられていれば、同じ日になることもあります。

容器や保温そのものは、当店の冬に迎える記事に資料つきでまとめてあります。この記事が扱うのは引っ越しに特有の「順番」です。あわせて、その記事で「見つからなかった」と書いた輸送時の温度について、オーストラリアの州が在来の爬虫類を対象に出している基準に記述があったので、ボールパイソンを測った値ではないことを添えて報告します。

目次

  • 家財と同じ便で運べるとは限りません
  • 飼い主の側にも、輸送の基準があります
    • 移動の前の、餌と水
  • 輸送の温度は、今回の資料では「避ける両端」だけでした
  • 新居の設備を、事前に動かせないとき
  • 荷造りの期間も、環境の一部です
  • 着いた日と、そのあとの1週間
  • 新居が飼える家かどうかは、運ぶ前の話です
  • まとめ
  • 参考にした資料

家財と同じ便で運べるとは限りません

引越運送の条件には、認可の制度があります。貨物自動車運送事業法第10条第1項が、運送約款を定めて国土交通大臣の認可を受けることを求めていて、同条第3項は「国土交通大臣が標準運送約款を定めて公示した場合…標準運送約款と同一の運送約款を定め…たときは、その運送約款については、第一項の規定による認可を受けたものとみなす」としています。全社に同じ条件を強制する仕組みではありませんが、ひな型である標準引越運送約款(平成2年運輸省告示第577号、最終改正 令和7年国土交通省告示第193号)と同じものを使っている会社は多く、まずここを見ることになります。

その第4条第2項に、こうあります。

「荷物が次に掲げるものであるときは、当該荷物に限り引越運送の引受けを拒絶することがあります。(略)三 動植物、ピアノ、美術品、骨董品等運送に当たって特殊な管理を要するため、他の荷物と同時に運送することに適さないもの」

読み方に注意がいります。これは「拒絶することがあります」であって、動物の輸送を禁じた条文ではありません。そして同じ約款の第24条第1項は、この第4条第2項に挙がった荷物について——次の引用に出てくる「当店」は、約款を使う引越業者のことです——「当店がその旨を知って引き受けた場合に限り、当店は、当該荷物の滅失、損傷又は遅延について、損害賠償の責任を負います」と定めています。この約款の上では、動植物であることを知って引き受けた場合に限って、その荷物の滅失・損傷・遅延についての責任が生じるという形です。黙って荷物に紛れ込ませる理由が無い、というのがここから言えることです。

  • 日本通運は、取り扱わないと書いています公式の引越しQ&Aは「当社では、個人のお客様が飼われている犬・猫などのペット輸送は、ペットを運ぶための快適な輸送環境を整えることが難しいという理由から、取り扱っておりません。」とし、代わりに航空会社や地域の運送会社を挙げています

  • アート引越センターは、専門業者への取り次ぎを案内しています「当社では専門業者によるペット輸送の取り次ぎも承っております。」という書き方で、陸路と空路の両方を挙げ、手配は同社が行うとしています。運ぶのは取り次いだ先の専門業者です。扱える動物の範囲は、このページには書かれていません

  • ヘビを扱えるかどうかは、取り次ぎ先しだいですアートのページにあるのは、料金が「ペットの種類や、大きさ、年齢、移動の距離、輸送手段」で変わるという記述だけで、ヘビを引き受けてもらえるかどうかは書かれていません。見積りや問い合わせの段階で種名と、容器の形・大きさを伝えて確認してください

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自分で運ぶ以外の道もあります

ニューサウスウェールズ州の飼育基準は、長距離の輸送について「Keepers should seek the services of a transport company that has relevant small animal handling experience when transporting a reptile over a long distance.(飼育者は、爬虫類を長距離輸送するときは、小動物の取扱経験のある輸送会社のサービスを求めるべきである)」としています。自分の車だけが選択肢ではありません。遠方への引っ越しで飛行機を使う場合の扱い(ANA Cargo は国内貨物で、輸送できる爬虫類の代表例にヘビを挙げています)は、当店の冬に迎える記事に、宅配便・鉄道の扱いと合わせてまとめてあります。

ただしどの業者もヘビを扱えるとは限りません。受け入れの可否、容器の条件、温度の扱い、引き渡しの場所と時刻——ここを確認してから日程を決めてください。

ヘビの移動は、家財とは別に手配する。新居のケージが動き出してから移す、という順番になる

引っ越しでヘビの移動を家財と別に手配することを示した図。左は家財として運んでもらうものとしてラック、床材、家具、そして②で先に運ばない場合のケージを挙げ、標準引越運送約款が「動植物」を引受けを拒絶することがある荷物に挙げていることを添えている。右は別に手配するものとして、口を閉じた布袋を通気のある硬い容器に入れたヘビ本体、温度計、移動中の保温を挙げ、自分の車で運ぶか爬虫類を扱える輸送に頼むかを先に決めると書いている。下段は移す日までの順番で、1に新居の電気を使える状態にし旧居の使用中止日は運び出す日より後ろにする、2にケージ一式(保温器具・サーモスタット・温度計)を新居に設置して通電する、3にホット側とクール側の両方を実測して落ち着くまで待ち夜間の最低値も見る、4にヘビを移し移動時間はできるだけ短くして容器の中にも温度計を入れる、5に熱源と外側の梱包を外し容器か袋をケージに入れて開けケージを確実に閉める、6に照明を消して扉を閉め自分で出てくるのを待ち翌朝まで触らない、の6段階。ただし開口呼吸・泡・異常な呼吸音・出血や外傷・著しい反応の低下があるときは、翌朝を待たずに爬虫類を診られる動物病院へ連絡するよう注記している。また、2と3を当日にまとめるとRSPCAが迎えるときに勧めている「連れ帰る前の少なくとも3日間、温度が継続して維持されていること」が取れないこと、設備を先に移す場合は移してからヘビを動かすまでのあいだ旧居か預け先で環境を保てることが条件になり、設備が一式しかないならそこが先に決まること、取り方は鍵が先に手に入るなら先に設置する・設備をもう一式用意する・ヘビを移す日を家財の搬出日より後ろにする・預け先に相談するの組み合わせになること、新居の設備を先に確認できていれば家財と同じ日になることもあることを注記している。

飼い主の側にも、輸送の基準があります

業者に課される基準があることは、冬に迎える記事に書きました。引っ越しでは手配するのが自分になるので、今回効いてくるのは別の告示です。

環境省の「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」(平成14年環境省告示第37号、最終改正 令和4年環境省告示第54号)。第2が、この基準でいう「動物」を「哺乳類、鳥類及び爬(は)虫類に属する動物」と定義しているので、ヘビもこの基準の対象です。第3の5が、まるごと輸送の項目になっています。

「所有者等は、家庭動物等の輸送に当たっては、次の事項に留意し、動物の健康及び安全の確保並びに動物による事故の防止に努めること。

(1) 家庭動物等の疲労及び苦痛をできるだけ小さくするため、なるべく短い時間による輸送方法を選択するとともに、輸送時においては必要に応じ適切な休憩時間を確保すること。

(2) 家庭動物等の種類、性別、性質等を考慮して、適切に区分して輸送する方法をとるとともに、輸送に用いる容器等は、動物の安全の確保及び動物の逸走を防止するために必要な規模及び構造のものを選定すること。

(3) 輸送中の家庭動物等に適切な間隔で給餌及び給水するとともに、適切な温度、湿度等の管理、適切な換気の実施等に留意すること。」

読むところは3つです。短い時間を選ぶこと、容器は逸走を防止できる規模と構造であること、温度・湿度・換気に留意すること。容器の具体的な形は、この告示には書かれていません。口を閉じた布袋を、通気のある硬い容器に入れる——という形は、当店の病院の探し方の記事と冬に迎える記事に、資料つきでまとめてあります。

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(3) の「適切な間隔で給餌」は、1日の移動で必ず餌を与えよという意味ではありません

この基準は家庭動物一般に向けて書かれていて、ヘビもその対象です。ただし「適切な間隔」の中身は、動物によって違います。爬虫類について書かれた基準は、むしろ輸送中の給餌を禁じています(次節)。資料の言葉を、対象の違う動物の間でそのまま移さないでください。

移動の前の、餌と水

オーストラリア・ニューサウスウェールズ州のCode of Practice for the Private Keeping of Reptiles(2013)は、輸送の章の遵守事項(Standards)にこう書いています。

「A reptile must not be fed during transport.(輸送中に爬虫類に給餌してはならない)」
「A reptile must have access to water prior to transport to avoid dehydration.(脱水を避けるため、爬虫類は輸送の前に水を利用できる状態になっていなければならない)」

そして指針のほうに、ヘビを名指しした項目があります。

「Snake and monitor species should not be transported unless they have had sufficient time to digest any food. This will help to prevent regurgitation of food.(ヘビとオオトカゲの仲間は、食べたものを消化するのに十分な時間が経つまでは輸送すべきでない。これが吐き戻しの防止になる)」

クイーンズランド州の基準は、移動中の水についても線を引いています。「Animals must be provided water during transport only if it is likely that the time required for transport will be in excess of one day, or for a shorter period on particularly hot days (>30 deg. ambient temperature).(輸送中に水を与えなければならないのは、輸送に1日を超える時間がかかりそうな場合、または特に暑い日——外気30度超——には、それより短い時間の場合に限る)」。これは給水が必要になる条件を示した条文で、容器に水入れを常設する方法を指定したものではありません。暑い日は、半日以内でも給水を考えることになります。長時間になるときや気温が高いときの給水の方法は、輸送を頼む業者か、爬虫類を診る獣医師に先に相談してください。

実務に落とすと2つです。ケージの水入れは、移動の直前まで普段どおり置いておく。そして引っ越しの日程が決まったら、その前後の給餌をいつにするかを先に決める。「運ぶ前に食べさせておく」は、順番が逆になります。

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「給餌後◯時間で運べる」という数字は、引いた資料のどこにもありません

当店は持ち方の記事で、給餌後48時間はハンドリングを避ける(大きめの餌を食べたときはさらに長く)という線を書いています(出どころは RSPCA の案内です)。ただしこれはハンドリングについての目安で、「48時間経てば輸送してよい」という意味ではありません。上で引いた輸送の基準は「十分な時間」としか書いておらず、日数を定めていません。

決め方は、数字ではなく個体です。ふだんの給餌の間隔、食べた餌の大きさ、前回いつ食べたか。迷ったら、移動の日をずらすか、爬虫類を診る獣医師に相談してください。

輸送の温度は、今回の資料では「避ける両端」だけでした

当店は冬に迎える記事で、「ボールパイソンの輸送時の温度を数字で示した資料は、調べた範囲では見つかっていません」と書きました。その後、温度に触れている基準に当たりました。ただしボールパイソンについての数字ではありません。経緯から書きます。

環境省は、爬虫類の飼養管理基準を作るための文献調査(令和4年度)で、海外の基準を項目ごとに整理しています。その「6.輸送」の欄に、オーストラリアの州の基準から引かれた温度の記述がありました。孫引きにせず原典に当たったところ、クイーンズランド州のCode of Practice: Captive Reptile and Amphibian Husbandry(Department of Environment and Science、2020年版)でした。環境省の資料に載っていることは、日本でこの数字が採用された・推奨されたという意味ではありません。海外文献の紹介として整理されているものです。

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この数字は、目標値でも安全範囲でもありません

クイーンズランド州の基準で温度の記述が置かれているのは、輸送の章の一般情報(General information)です。温度計で測ることなどを定めた最低基準(Minimum standards)とは区別されています。そして原典自身が「理想的な輸送温度は種によって異なる」と前置きしています。クイーンズランド州が、在来の爬虫類・両生類(484種)の飼養について出している基準です。ボールパイソンの輸送適温を検証した資料ではありません。この節でもう1つ引くニューサウスウェールズ州の基準も、同じく州の免許制度のもとで在来種を飼う人に向けて書かれたものです。

ですので、この記事は「避けるべき両端が書かれている」までしか言いません。12℃を保温の下限の目標にしないでください。30℃を狙って保温しないでください。「12〜30℃なら安全」という読み方は、この資料からは出てきません。

とくに下限側です。当店の適温の記事が資料の帯として挙げているクール側は24〜28℃で、夜間も24℃前後を維持するという書き方です(当店自身の設定は、部屋ごと年間27〜28℃)。12℃という線は、そこからずっと下にあります。上限の30℃のほうも、同じ記事がホットスポットの帯として挙げている30〜33℃と重なります。ケージなら暑ければ涼しい側へ移れますが、容器の中では移れません。

  • 避ける両端は、30度より高い/12度より低い「Ideal transport temperatures for reptiles vary according to species. Generally, no reptile being transported should be exposed to temperatures higher than 30 deg. or lower than 12 deg.(爬虫類の理想的な輸送温度は種によって異なる。一般に、輸送中の爬虫類を30度より高い温度、あるいは12度より低い温度にさらすべきではない)」

  • 温度管理は、断熱した容器で。ただし換気は別に要る「The control of temperature is best achieved by placing the bags containing live reptiles and amphibians in an insulated container (e.g. polystyrene box with tight fitting lid). Allow adequate ventilation.(温度の管理は、生きた爬虫類・両生類を入れた袋を断熱容器——蓋のぴったり閉まる発泡スチロール箱など——に入れるのが最もよい。十分な換気を確保すること)」。密閉ではありません

  • 容器の中に温度計を入れて測る(最低基準)「The temperature inside an animal's transport container should be monitored using a thermometer placed in the container with the animals, especially during hot conditions (>30 deg. ambient temperature).(容器の中の温度は、動物と一緒に容器に入れた温度計で監視するべきである。とくに外気が30度を超える暑い条件では)」。外から触って確かめるのではなく、中を測ります。ここが実際にやることです

  • 日なたに置かない。停めた車の中も同じ(最低基準)「Containers must not be left in the sun or in parked cars in the sun, even for brief periods.(容器を日なた、あるいは日なたに停めた車の中に置いたままにしてはならない。短時間であっても)」。「短時間であっても」まで書かれています

  • 極端に暑い時期の、車での長距離は避けることが望ましい「It is desirable to avoid transporting reptiles and amphibians in cars for long distances during extremely hot weather.(極端に暑い時期に、爬虫類・両生類を車で長距離輸送することは避けることが望ましい)」として、温度が極端なときは航空貨物を挙げています。引っ越しの日取りが選べるなら、ここは日取りの話になります

ケージと移動用の容器では、温度の意味が違う。逃げ場のある場所の数字を、逃げ場のない容器に持ち込まない

ケージと輸送容器で温度の意味が違うことを説明した図。左のケージは温度勾配があり、暑ければ涼しい側へ、寒ければ暖かい側へヘビが自分で移れる。当店の適温の記事が資料の帯として挙げているのはホットスポット30から33℃、クール側24から28℃で、当店自身の部屋の設定は年間27から28℃である。右の移動用の容器は布袋と箱の中に逃げ場がなく、暑くなっても寒くなってもその温度から移れない。今回確認した資料が示していたのは、目標値ではなく避ける両端だけだった。注意書きとして、州の基準は輸送中の爬虫類を30度より高いあるいは12度より低い温度にさらすべきではないとしているが、これは理想的な輸送温度は種によって異なると前置きしたうえでの一般的な記述であり、ボールパイソンの推奨輸送温度でも安全な範囲でもないこと、12℃を保温の下限の目標にせず、30℃を狙って保温もせず、容器の中に温度計を入れて実際に測ること、移動の条件が読めないときは輸送業者や爬虫類を診る獣医師に先に相談することを挙げている。出典はクイーンズランド州が在来の爬虫類・両生類を対象に出しているCode of Practice のThermoregulation の一般情報で、ボールパイソンを測った値ではない。

容器そのものの条件は、先ほどのニューサウスウェールズ州の基準が具体的です。「adequately insulated from noise, heat and vibration(騒音・熱・振動から十分に遮断されていること)」、「adequately ventilated(十分に換気されていること)」、「must not be placed in direct sunlight(直射日光の当たる場所に置かないこと)」。車の中で効いてくるのは、「振動」「熱」「直射日光」の3つです。吹き出し口の正面を外した足元に置くか、シートベルトで固定する。日の当たる席に置きっぱなしにしない。暖房の吹き出し口は足元にあることが多いので、「足元なら安全」ではありません(吹き出し口の正面を避ける話は冬に迎える記事にもあります)。

夏に運ぶときの車内温度そのものは、当店の夏の暑さ対策の記事に JAF のテストの数字を引いてあります。エアコンを切ってから5分で車内が約5℃上がる、という単位の話です。冬の熱源の置き方(容器の中に入れない、タオルで包んで箱の外の片端に置く)は冬に迎える記事に、使い捨てカイロを同じ扱いにできない理由は停電対策の記事にあります。

新居の設備を、事前に動かせないとき

ここが、引っ越しが「迎える日」と違うところです。

先に断っておきます。これから引く RSPCA の案内は、新しい個体を迎えるときの準備について書かれたもので、すでに飼っている個体を引っ越しで移す場面を扱った文書ではありません。同じ線を引っ越しに当てているのは当店の判断です。

RSPCA のTaking your reptile home は、迎える前の準備として2つの期間を勧めています。

「We'd recommend that you get this set up and run it for at least a week to make sure you're comfortable with how everything works and give a chance to iron out any problems that may crop up.(少なくとも1週間は組んで動かし、扱いに慣れ、出てくる問題をつぶす時間を取ることを勧める)」

「The temperatures in the vivarium should have been constantly maintained for at least three days prior to the reptile being brought home.(ケージの温度は、その爬虫類を家に連れ帰る前の少なくとも3日間、継続して維持されていること)」

「継続して維持されている」は、ケージ全体を1つの温度にせよという意味でも、昼夜の変化を無くせという意味でもありません。必要な温度環境が、3日のあいだ途切れずに保たれているということです。そして、これは迎え入れ前の準備についての助言で、「3日に満たなければ必ず危険」と書かれているわけでもありません。

それでも、引っ越しでここを気にする理由があります。新居でケージを組んだその日は、設備が意図どおり動くかを誰も確かめていないからです。サーモスタットの差し忘れ、コンセントの容量、効かないエアコン——1週間動かす意味は、そこにあります。

どう取るかは、家の条件で変わります。次の4つは、どれか1つを選ぶものというより、組み合わせて成立させるものです。

  • 鍵が先に手に入るなら、設備だけ先に運ぶケージ・保温器具・サーモスタット・温度計を、家財の搬出より前に新居へ入れて通電しておきます。電気が使える状態になっていることが前提なので、使用開始の手続きを先に済ませてください(期限は契約先の案内に従ってください)。ただし、設備を持ち出したあと旧居に残るヘビをどうするのかが先に決まっている必要があります——「設備をもう一式用意する」「預け先に相談する」と組み合わせることになります

  • 設備をもう一式用意できるなら、それがいちばん素直です新居側に新しいケージ一式を先に立ち上げ、旧居の設備は最後に運び出して予備にする。旧居の環境を保ったまま、新居で日数を取れます。ラック飼育で数が多い場合は、全部ではなく「先に移す数匹ぶん」だけでも成り立ちます

  • ヘビを移す日を、家財の搬出日より後ろにする設備が一式しかなく、鍵も当日という場合です。旧居のケージを最後まで通電したまま残し、ほかの荷物を先に出します。確かめることが3つあります——旧居をいつまで使えるのか(契約と鍵の返却、退去の立会い)、旧居の電気の使用中止日が、ヘビを運び出す日より後ろになっているか、そしてその間、自分がどちらの家にいるのか。ここが確保できないなら、この選択肢は成立しません。なお、日を後ろにずらすだけでは、新居での事前確認はできません。一式しかない設備を新居へ移して温度を確かめているあいだは、預け先など、別に飼育環境を用意する必要があります

  • 預け先に相談する設備も日程も動かせないときの相談先として、爬虫類を診る動物病院、迎えたショップやブリーダーがあります。どこでも預かってもらえるわけではありません。種の受け入れ可否、温度の管理、逸走の防止、ほかの個体との分け方、体調が変わったときの連絡——ここを確認したうえで決めてください

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新居で、前と同じ設定値が同じ温度になるとは限りません

サーモスタットのダイヤルは引き継げますが、部屋は引き継げません。断熱、日当たり、エアコンの効き、コンセントの位置、ラックを置く壁。設定が同じでも、ケージの中の温度は変わります。立ち上げの順番は冬の保温の記事の「測る → 逃がさない → 足す」と同じです。測る場所と数は温湿度計の記事にあります(ホット側とクール側の2点、空気と床は別に測る)。

夜間の最低値まで見てください。引っ越し直後は家具が少なく、カーテンもまだ付いていないことがあります。昼に測った値だけで決めないでください。

荷造りの期間も、環境の一部です

引っ越しは当日だけの出来事ではありません。数日から数週間かけて、部屋そのものが変わっていきます。人の出入りが増え、物が減り、振動と音が増える。ヘビから見ると、引っ越しは当日より前から始まっています。

この節は、資料から引いたものではなく、当店の運用です。ひとつだけ裏づけのある項目には、出どころを添えます。

  • ケージの周りは、最後に手を付ける段ボールを積むなら、ケージから離れた場所から。ラックの前に荷物を積むと、温度の様子を見に行けなくなります

  • この機会にレイアウトを変えない変える要素を増やさないでください。床材の種類と、シェルター・水入れの配置は、衛生上の問題がなければ、引っ越しに合わせて一度に変えません。新しい部屋で食べなくなったとき、原因の候補が1つ減ります(シェルターの数と置き方はシェルターの記事)。床材については、先ほどのニューサウスウェールズ州の基準に「A small amount of faeces may be left in the enclosure following cleaning as scent marking helps some species (e.g. pythons) to recognise their home range.(掃除のあと、少量の糞をケージ内に残してよい。においによるマーキングが、パイソンなどいくつかの種にとって自分の行動圏を認識する助けになるため)」という記述があります。この記述も参考にした当店の運用で、引っ越しのときの床材交換を禁じる基準ではありません。汚れた床材の交換と、必要な清掃は通常どおり行ってください(同じ基準は、排泄物を溜めないことと、汚れたシェルター・水入れを清掃することも求めています)

  • 開けっ放しの時間が増えます荷造り中は、扉も窓も開きます。ケージの蓋とロックを、作業を始める前に確認してください。出てしまったあとの探し方と、出口を作らない点検は脱走の記事にあります

  • 食べない時期があっても、慌てない環境が変われば、餌を食べない期間があり得ます。ただし「引っ越しだから」で片づけるのも早すぎます。温度・湿度・落ち着ける場所を先に実測してください。切り分けは拒食の原因と対策、やりがちな対応は拒食中についやりがちな対応3選にあります

着いた日と、そのあとの1週間

着いてからの手順は、迎える日と同じものが使えます。解説は冬に迎える記事に書いたので、ここでは引用と、引っ越しで変わるところだけ置きます。RSPCA がヘビについて書いているのは、次の2つです。

「Place the plastic container or bag carefully inside the vivarium and open it carefully to allow your snake to emerge. Secure the vivarium, turn off the room lights and close the door to the room where the vivarium is kept to reduce stress. Leave the snake alone until the following morning when you can check back on them.(プラスチック容器か袋をケージの中に静かに入れ、そっと開けてヘビが自分で出てくるようにする。ケージを確実に閉め、部屋の照明を消し、ケージのある部屋の扉を閉めてストレスを減らす。翌朝まではそのままにして、朝になってから様子を見る)」

「It's best not to handle your snake unnecessarily for the first week but instead allow them time to become used to their new environment.(最初の1週間は不必要に扱わず、新しい環境に慣れる時間を与えるのがよい)」

順番は、容器を開ける→ケージを閉める→照明を消す、です。出てくるのを待つあいだ、ケージを開けたままにしません。熱源や外側の梱包は、一緒にケージへ入れません。

  • 引っ越しで変わるのは、周りですケージの周りに段ボールが積まれていないか。様子を見に行く導線と、温度計を読む位置が塞がれていないか。荷ほどきの音と人の出入りは、着いた日がいちばん多くなります

  • その日のうちに、蓋をもう一度確認する着いた直後は、注意がヘビのほうに向いています。運んだあとのケージは、ロックの掛かりが変わっていることがあります(脱走の記事)

  • 餌の再開を、着いた日に試さない食べない期間があり得ます。温度・湿度・落ち着ける場所を先に実測してから、いつもの間隔に戻します(拒食の原因と対策)

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翌朝まで待つのは、異常がないときの話です

開口呼吸、泡、異常な呼吸音、出血や外傷、反応が明らかに鈍い——こうしたものがあれば、翌朝まで待たずに爬虫類を診られる動物病院へ連絡してください。移動中の温度の保ち方も、そのときに相談できます。病院の探し方はこちらの記事、呼吸の異常は呼吸器感染症の記事にあります。

新居が飼える家かどうかは、運ぶ前の話です

最後に、順番としていちばん前に来るものを書きます。運び方より前に、その家で飼えるかどうかです。

賃貸の「ペット可」が何を指すのかは、契約ごとに違います。国土交通省の賃貸借契約書のひな型に、ボールパイソンという種名は出てきません。何が許されていて何が許されていないのかを、入居前のどの段階で、誰に確認するのか——当店の賃貸・一人暮らしの記事に、ひな型の条文と、確認の順番をまとめてあります。契約のあとで聞くと、選択肢が「飼えない」しか残らないことがあります。

まとめ

  • ヘビを、家財と同じ便で運んでもらえるとは限りません標準引越運送約款 第4条第2項第三号は「動植物」を、引受けを拒絶することがある荷物に挙げています(禁止の条文ではありません)。日本通運はペット輸送を取り扱わないとし、アート引越センターは専門業者への取り次ぎを案内しています。ヘビの移動は、別に手配するものとして見積りの前に決めます

  • 自分の車だけが選択肢ではありませんNSW の基準は長距離について小動物の取扱経験のある輸送会社を挙げています。ANA Cargo は国内貨物で爬虫類の代表例にヘビを挙げています。ただしヘビを扱えるかは業者ごとに違うので、種名と容器を伝えて確認してください

  • 飼い主にも輸送の基準があります環境省「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」第3の5。短い時間を選ぶ/容器は逸走を防止できる規模と構造/温度・湿度・換気に留意する。ヘビもこの基準の対象です(第2の定義に爬虫類が入っています)

  • 今回の資料にあったのは、避ける両端だけでしたクイーンズランド州が在来の爬虫類・両生類について出している Code of Practice が、30度より高い/12度より低い温度にさらすべきでないとしています。ボールパイソンの推奨温度でも、安全範囲でもありません。12℃を下限の目標に、30℃を狙う温度にしないでください——当店の適温の記事が資料の帯として挙げているクール側は24〜28℃で、夜間も24℃前後です

  • やることは、容器の中を測ることです同じ基準が「動物と一緒に容器に入れた温度計で監視するべきである」としています。断熱容器に入れ、換気は確保する。日なた、日なたに停めた車の中には、短時間でも置かない。車内では吹き出し口の正面を外してください

  • 移動の前に、餌の予定を決め、水は置いておくNSW の基準は「輸送中に給餌してはならない」、「ヘビは食べたものを消化する十分な時間が経つまで輸送すべきでない」、「輸送の前に水を利用できる状態に」としています。「何時間空ければ運んでよい」という数字は、引いた資料にはありません。当店が持っている給餌後48時間はハンドリングの目安で、移動に当てられる数字ではありません

  • 家財の搬出と、ヘビの移動は、それぞれの条件で決めるRSPCA は連れ帰る前の少なくとも3日間、温度が継続して維持されていることを勧めています(迎えるときの準備についての案内で、引っ越しに当てているのは当店の判断です)。新居のケージを当日に組むと取れません。先に設置する/設備をもう一式/移す日を後ろへ/預け先に相談するを組み合わせます。設備を先に移すなら、その間に旧居か預け先で環境を保てることが条件です。新居の設備を先に確かめられていれば、同じ日になることもあります

  • 設定値は引き継げても、部屋は引き継げません同じダイヤルで同じ温度になるとは限りません。ホット側・クール側の2点を実測し、夜間の最低値まで見てください

  • 着いたら、容器を開けてからケージを閉める熱源と外側の梱包を外し、容器か袋をケージに入れて開け、ケージを確実に閉めてから照明を消して扉を閉める。翌朝まで触らない。最初の1週間は不必要に扱わない(RSPCA)。ただし呼吸の異常・外傷・著しい反応低下があれば、待たずに受診してください

引っ越しで用意するものは、移動中の環境と、着いた先の環境の2つです。どちらも保てるように日程を組む——この記事で書いたことは、結局そこに戻ります。

参考にした資料

国内の法令・告示・各社の案内

  • 標準引越運送約款(平成二年運輸省告示第五百七十七号、最終改正 令和七年国土交通省告示第百九十三号。第四条第二項第三号「動植物、ピアノ、美術品、骨董品等運送に当たって特殊な管理を要するため、他の荷物と同時に運送することに適さないもの」、第二十四条第一項「当店がその旨を知って引き受けた場合に限り…損害賠償の責任を負います」/2026年10月14日閲覧)
  • 貨物自動車運送事業法(平成元年法律第八十三号。第十条第一項の認可、第三項「標準運送約款と同一の運送約款を定め…たときは…認可を受けたものとみなす」/e-Gov 法令検索・2026年10月14日閲覧)
  • 家庭動物等の飼養及び保管に関する基準(平成14年環境省告示第37号、最終改正 令和4年環境省告示第54号。第2の定義「哺乳類、鳥類及び爬(は)虫類に属する動物」、第3の5「動物の輸送」(1)〜(3)/2026年10月14日閲覧)
  • 環境省「爬虫類に関する飼養管理基準策定に向けた調査結果について」(令和4年度・資料1-2。「6.輸送」の欄にオーストラリアの州の基準から引かれた温度の記述があります。海外文献の紹介として整理されたもので、日本での採用・推奨を示すものではありません。本記事は孫引きにせず、下のクイーンズランド州の原典に当たりました/2026年10月14日閲覧)
  • 日本通運「ペットは運んでもらえますか?」(「当社では、個人のお客様が飼われている犬・猫などのペット輸送は、ペットを運ぶための快適な輸送環境を整えることが難しいという理由から、取り扱っておりません。」および代替として航空会社・地域の運送会社への言及/2026年10月14日閲覧)
  • アート引越センター「ペットの引越しは?」(「当社では専門業者によるペット輸送の取り次ぎも承っております。」陸路・空路の案内。対象となる動物の種類の記載はありません/2026年10月14日閲覧)

海外の基準

  • Code of Practice: Captive Reptile and Amphibian Husbandry(Queensland Department of Environment and Science。PDF のフッタは 220820。Transport の Thermoregulation。在来の爬虫類・両生類(484種)の飼養を対象にした基準です。一般情報として30度より高い/12度より低い温度にさらさないこと・断熱容器と換気・極端な暑さでの車による長距離輸送を避けること、最低基準として容器内に温度計・日なたや日なたに停めた車の中に置かないこと・輸送中の給水は1日を超える場合か猛暑日に限ること/2026年10月14日閲覧)
  • Code of Practice for the Private Keeping of Reptiles(NSW Office of Environment and Heritage、2013。遵守事項(Standards)と指針(Guidelines)から。8.1.1 輸送中に給餌してはならない、8.1.2 輸送の前に水を利用できる状態に、8.1.4 騒音・熱・振動からの遮断、8.1.5 換気、8.1.7 直射日光、8.2.1 ヘビとオオトカゲは消化の時間が足りるまで輸送すべきでない、8.2.4 長距離では小動物の取扱経験のある輸送会社を求めるべき、および掃除のあとに少量の糞を残してよい理由(においによるマーキング)/2026年10月14日閲覧)
  • RSPCA「Taking your reptile home」(設備を少なくとも1週間動かすこと、連れ帰る前の少なくとも3日間は温度が継続して維持されていること、成体のヘビは口を閉じた布袋を通気のよいプラスチック容器に入れること、到着後の手順と「最初の1週間は不必要に扱わない」/2026年10月14日閲覧)

当店の記事

  • 冬に迎える/夏の暑さ対策/適温/温湿度計/冬の保温/停電対策/持ち方/シェルター/脱走/病院の探し方/呼吸器感染症/拒食の原因と対策/拒食中についやりがちな対応3選/賃貸・一人暮らし

本記事は、法令・告示、各社が公開している案内、オーストラリアの州の基準および RSPCA の案内に沿って整理したものです。各社の取扱いと法令の運用は変わることがあります。運べるかどうかは、利用する時点で各社にご確認ください。引用した海外の基準は、その州の制度と対象種を前提に書かれたものです。体調に関する判断は獣医師が行います。

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