いない、と気づいたら、探し始める前にやることがあります。これ以上移動させないことと、見つかったときに怪我をしていないことのためです。
足元を確認しながらドアと窓を閉め、家族に知らせる。掃除機などを止め、近くの粘着シートや薬剤を回収する。そのうえで、まずケージの中をもう一度見ます。この記事は、そこから探す順番・探す時間帯・見つかったあとの確認へと並べています。
そして、動物の愛護及び管理に関する法律に基づく環境省の基準は、逸走したときの捜索と捕獲を「自らの責任において」と書いています。探すのは、まず飼い主の仕事です。そのうえで、屋外に出た可能性があるなら、自治体と警察に問い合わせる線も並行して持ってください。
目次
最初に部屋を閉め、ケージの中を確認する
いない、と気づいた直後にやることがあります。目的は「これ以上動ける範囲を広げない」ことと「見つかったときに怪我をしていない」ことの2つで、どれも数分で済みます。複数人いるなら、分担してください。1人で全部終わるまで探し始めない、という意味ではありません。
- 家族や同居人に、まず伝える。伝える内容は「見つけても自分で捕まえようとせず、見た場所を教えてほしい」です。驚いて追いかけると、家具の裏や壁の穴という、いちばん取り出しにくい場所へ移動されます
- 足元を見ながら、その部屋のドアと窓を閉める。ドア下の隙間はタオルで塞ぎます。換気設備や、ガス・石油の暖房機の給排気口は塞がないでください。ここを閉じるのは別の事故のもとです
- 動いているものを止める。掃除機、ロボット掃除機(スケジュール実行も切ります)、洗濯機、乾燥機、食洗機
- 粘着シート(ねずみ取り)と殺鼠剤・殺虫剤を回収する。置いたままにしないでください。貼り付いてからの対処より、貼り付かせないほうが先です
- 犬・猫を別室に移す。Wisconsin Herpetological Association も、探すときに減らすものとして「不要な大きい音、人の動き、家の中の他のペット」を挙げています
- 浴槽の水を抜き、トイレの蓋を閉める。
ケージはそのまま、電源も入れたままにしておいてください。片付けないでください。温度のある場所がその部屋に1つ残っていることと、あとで「戻っていた」と気づけることの両方に関わります。水入れの水もそのままにします。時刻と最後に姿を見た時刻のメモは、上の作業が済んでから、あるいは家族に頼んで書いてもらってください。
ドアを閉めても、探す範囲がその部屋に確定するわけではありません
閉めるのはこれ以上広げないためで、気づく前にどこまで移動していたかは分かりません。別の部屋、上の階、家の外の可能性は残ります。この部屋を探したから次はここ、という順番を作るために閉めるのであって、他を見なくていい理由にはなりません。
探す順番は、ケージから外へ広げる
資料が揃って言うのは、ケージのすぐ周りから始めて、同心円状に外へ広げるということです。部屋を飛ばして家全体を歩き回ると、探し漏れが増えます。目撃情報があるなら、その場所を先に見てください。
Wisconsin Herpetological Association(Dennis Roscoe, 2024年)が捜索の順番として最初に挙げているのは「ケージの背後・中・上・下、そして土台のまわり」です。そこから「近くのキャビネット、本棚、タンス、ソファ、ベッドとマットレス、椅子やその他の家具、そしてクローゼット、浴室、洗濯室などの狭い部屋」へ広げます。Melissa Kaplan「Finding Escaped Snakes in the House」も「ケージの背後、床沿いのすべて、その部屋の本棚とキャビネットの中」から始めます。
この順番について、言えることと言えないことがあります。国内の記事でときどき見る「ヘビには帰巣本能があるからケージの近くにいる」という説明です。帰巣そのものは、ニシキヘビ属で確認されています。フロリダの外来のビルマニシキヘビ12頭を追跡し、うち6頭を捕獲地点から21〜36km離して放した研究(Pittman ほか, Biology Letters 2014年)では、移動させた個体は捕獲地点の方向へ向かい、6頭のうち5頭が元の地点から5km以内まで戻りました。ただしこれは数十kmの野外での、別種(ビルマニシキヘビ)の話です。ボールパイソンが家の中でケージへ戻ることや、その近くに留まることを示した研究ではありません。両資料が近くから探すのは、候補の多いところから順に潰すという手順の話だと読んでください。近くにいると決めつけて、別の部屋や上方を見ないのは逆方向です。
そして「何日で見つかる」は予測できません。Wisconsin はこう書いています。「動物がいつ見つかるか、そもそも見つかるかどうかについて、決まった時間の枠は本当に存在しない」——そのうえで「数分で見つかることもあれば、何か月、あるいは1〜2年経ってから思いがけず出てくることもある」としています。1日で見つからないことは、探し方が間違っている証拠ではありません。ただし、長く経ってから見つかった例があることは、安全に待てる期間を示すものではありません。探すことと連絡は、続けてください。
壁沿いと、狭い場所
探す動線は、開けた床の真ん中ではありません。Wisconsin は「多くのヘビ(や他の爬虫類)は、家の中の開けた場所を横切るのではなく、壁や巾木に沿って移動する」としています。探す動線も壁沿いに取ってください。
- 家具の裏と下。本棚、食器棚、タンス、テレビ台。Kaplan は「壁と本棚のすき間は、あなたのぽっちゃりしたコーンスネークやボールパイソンには狭すぎると思っていても」見ろ、と書いています
- ソファとベッド。Kaplan は「下から見て、布地に破れがないか確かめる」「クッションの全部の間、ベッドのマットレスの隙間」を挙げ、張り地の家具は、側面・背面・底面の間に手を入れて確かめるとしています
- 箱・ゴミ箱・靴・鞄。Kaplan は「ティッシュの箱でも、書類箱でも、居心地のいい洞になるものなら何でも」としています
- 壁の穴と、配管の立ち上がり。Kaplan は「壁へ通じている穴」と、トイレのタンクと壁の間を挙げています。国内だとエアコンの配管穴、洗面台とキッチンのシンク下、洗濯機の排水口まわりがこれに当たります。見つけた穴は位置をメモして、回収したあとで塞ぎます
暖かい家電のまわり
Wisconsin は「これらの動物のほとんどは、暗くて、安心でき、できれば暖かい隠れ場所を好む」とし、「少なくともいくらか熱を出す家具・家電・機器も確かめる価値がある」として「コンロ、冷蔵庫、電気ストーブ、洗濯機と乾燥機」を挙げています。国内の住宅なら、冷蔵庫の背面と下、給湯器まわり、テレビやルーターの裏、こたつ、電気毛布がこれに当たります。
ただし「いちばん暖かい場所に必ずいる」わけではありません。資料が挙げているのは「暗い・狭い・暖かい」の3つで、暖かさだけで順位は付きません。暗くて狭ければ、暖かくない場所にもいます。
家電の隙間は、見つけてすぐ手を入れる場所ではありません
冷蔵庫や洗濯機の内部・下にいる場合は、まず運転を止め、安全に操作できるなら電源を切ってください。ただし電源を切っても、モーターやコンプレッサーの高温部はすぐには冷えません。熱い部分と可動部に手を入れないでください。
そして体のどこまでが中にあるか分からないまま、家電を引きずったり傾けたりしないでください。挟みます。ヘビは狭い場所で体を左右の壁に突っ張ります(後ろの章で挙げる Marvi と Hu が、コーンスネークでこの向きの力を測っています)。狭い隙間から引っぱって出すのも、鱗や体を傷めるのでやめてください。安全に取り出せないと感じたら、無理をせず、メーカーや修理業者、爬虫類を診られる動物病院に相談してください。
探すのは今から。夕方と夜に、もう一度
時間帯が効きます。Wisconsin は「ほとんどのヘビは、昼行性と考えられている種も含めて、夜あるいは薄明薄暮(明け方や夕方)に活動的になることが多い」とし、「明け方、夕方、あるいは夜間に、ケージのすぐ近くから探し始める」としています。
これは「夜まで待て」という意味ではありません。気づいた時点で始めて、昼に見つからなくても夕方と夜にもう一度回る、という読み方をしてください。ボールパイソンが夜に動く種であることは、当店のシェルターの記事に書いたとおりです(日中は巣穴に潜んでいる種なので、昼にシェルターから出てこないこと自体は異常ではありません)。昼に部屋を一巡して見つからなかったことは、いないことの証明にはなりません。
道具は2つです。Wisconsin が挙げているのは「十分な光量の懐中電灯と、手持ちの点検鏡」。部屋の照明では家具の下は見えません。鏡は、頭を入れられない隙間の奥を見るためのものです。ホームセンターの自動車用品で売っている柄付きの点検鏡で足ります。
ひととおり探しても見つからないとき。ただし小麦粉と罠は資料が食い違う
ここは正直に書きます。よく紹介される方法について、資料どうしの評価が食い違っています。
Kaplan は、室内をひととおり探しても見つからなかったあとの手順として、こう書いています。壁沿いに「カサカサ鳴るスーパーのビニール袋」を置き、「午後9時から10時ごろ、完全に暗くなったら、照明もテレビもステレオも消して、できるだけ静かにする。懐中電灯は消したまま手元に置いて、ただ座って聞く」。それでも駄目なら、寝る前に「出入口を横切るように、幅1インチほどの小麦粉かコーンスターチの帯を敷く」——翌朝、通った跡が短い距離だけ残って向きが分かる、という方法です。
この「午後9〜10時」は、探し始める時刻ではありません。探し終えたあとに消灯して物音を待つ場面の時刻です。前の章の「夕方と夜にもう一度回る」とは別の話なので、混ぜないでください。
いっぽう Wisconsin は、「小麦粉を敷いてヘビの居場所を追う」ことと各種の生け捕り罠を、インターネットに残っている古い情報として挙げています。評価は「ヘビや他の爬虫類に対して、一般的に言って、確実に機能すると言えるような『罠』は実際にはほとんど存在しない」。そして「これらの方法の多くは労力が非常に大きいわりに、見つかる保証はほとんど、あるいはまったくない」としています。
当店の立場は「探す作業の代わりにしない」です。音と粉は費用がかかりませんが、袋の音はその場の動きを、小麦粉の跡は通過したことを教えるだけで、反応が無いことは不在の証拠になりません。壁沿いを懐中電灯と鏡で見る作業を、粉を敷いたからといって減らさないでください。
餌を使った罠は、当店は勧めません
Kaplan は「空の1リットルの炭酸飲料のボトルに、温かいネズミ(死んでいてよい)を入れる」という方法も挙げ、食べたあと太って出られなくなったらボトルを切ればよいとしています。当店はこの方法を勧めません。解凍した餌を室内に何時間も置くことになり、狭い口に入り込ませる前提でもあります。解凍後の扱いは姉妹店 LilRats の冷凍餌の衛生管理の記事にあるとおりで、常温での放置は前提から外れます。生きた餌も、解凍した餌も、室内に放置しないでください。
そしてこの方法は、常温に何時間も置かれた餌を生体が食べることを狙うものです。Kaplan は「ヘビが軽食に出てきて、食べたあとそこに留まるかもしれない」と書いています。当店は、餌の有無にかかわらず、飲料ボトルに入り込ませる方法を勧めません。位置を絞る目的なら、音の出るビニール袋のほうが安全です。
粘着シートに貼り付いていたら、剥がさない
初動で回収してくださいと書いたのは、国内の家屋でこれが起きやすいからです。すでに貼り付いた状態を見つけた場合も、引っぱって剥がさないでください。
Wildlife Center of Virginia の指示は具体的です。「トラップの露出した粘着面に、ペーパータオル、紙、または薄い段ボールをすぐに被せる」。そのうえで「動物とトラップをまとめて段ボール箱か容器に入れ、許可を持つ野生動物リハビリ担当者か獣医師に電話する」。同団体は「貼り付いた動物を取り外す作業はかなり難しい」とし、油を使う場合はそのあと油を落とす工程まで必要になるとしています。剥がれたあとも「追加の損傷や外傷がないか、専門家の診察を受けるべき」です。
要するに、露出した粘着面を紙で覆って、シートごと容器に入れて病院に電話する。これだけです。受け入れ先を今から探すことになると、この電話が長くなります。当店の病院の探し方の記事は、まさにこの状況のために元気なうちにやっておく作業をまとめたものです。
部屋の外、家の外に出た可能性があるとき
閉め忘れたドアや窓がある、あるいは何日か経っている場合です。家の中の探索はやめずに、並行して外向きの連絡をします。
- 同じ建物の住人と、隣の家に伝える。集合住宅なら管理会社にも。伝える内容は「見かけたら触らずに連絡してほしい」です。黙っておくほうが安全、ということはありません。知らない人が見つけたときの行動が、いちばん読めません。Wisconsin も屋外に出た場合について、近隣や地域の協力を仰いで探す範囲を広げることを挙げています
- 自治体の窓口に連絡する。逸走した動物の届出を受け付けている自治体があります。たとえば千葉市は「動物の逸走届」を用意しており、対象を「犬や猫、その他の動物が逃げてしまった場合」としています。同市は「逃がしてしまって間もない場合は、至急センターへ電話でお問合せください」としています。窓口の名前・受付の形・そもそも届出を受け付けているかは自治体ごとに違います。「お住まいの市区町村名+動物愛護センター」または保健所で調べてください
- 拾われている可能性のほうも当たる。同じ千葉市のページは「逃げた動物は、もよりの警察署、または近隣の保健所に保護されている場合があります」とし、「併せてお問合せいただくと、おうちへ帰る可能性が高くなります」としています。すでに保護されていないか、自分から問い合わせてください
- 伝える内容をまとめておく。種名(ボールパイソン)・体長・色柄・いつどこから逸走したかを1つのメモにしておくと、どの窓口にも同じ説明ができます。Wisconsin も「モルフを含む色・柄・見分けのつく身体的特徴を記した、最新の写真と説明を持っておく」ことを挙げています。所有を示す材料にもなります
屋外では、自分で温度を選べません
Wisconsin は、逸走そのものの害としてまず「その動物の至適温度域の外にさらされる場合はとくに、健康と福祉が損なわれうる」ことを挙げています。屋外に出た可能性があるなら、季節にかかわらず探索の優先度は上がります。なお環境省の基準は「その他」の項で、逸走や放し飼いによって「野生動物の捕食、在来種の圧迫等の自然環境保全上の問題が生じ」ないよう配慮することを挙げています。飼い主の側の事情とは別に、外に出したままにしない理由がここにもあります。
逸走防止・捜索の責任と、自治体への連絡
「逃げたときに何か届け出る義務があるのか」は、調べにくいところです。国のレベルで確認できることを挙げます。
まず動物の愛護及び管理に関する法律の第7条第3項が、こう定めています。「動物の所有者又は占有者は、その所有し、又は占有する動物の逸走を防止するために必要な措置を講ずるよう努めなければならない」——努力義務です。そして同条第1項は、第7項に基づく基準が定められたときは「動物の飼養及び保管については、当該基準によるものとする」としています。その基準が、環境省「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」(平成14年環境省告示第37号、最終改正 平成25年環境省告示第82号)です。第3の7が「逸走防止等」という項目で、こうなっています。
引用:所有者等は、次の事項に留意し、家庭動物等の逸走の防止のための措置を講ずるとともに、逸走した場合には、自らの責任において速やかに捜索し捕獲すること。
続く号は3つで、「飼養施設は、家庭動物等の逸走の防止に配慮した構造とすること」「飼養施設の点検等、逸走の防止のための管理に努めること」、そして「逸走した場合に所有者の発見を容易にするため、マイクロチップを装着する等の所有明示をすること」です。そして同基準の第2は、この基準でいう「動物」を「哺乳類、鳥類及び爬(は)虫類に属する動物」と定義しています。ヘビもこの基準の対象です。
もう1か所あります。同基準の第3の8は、特定動物「その他の大きさ、闘争本能等にかんがみ人に危害を加えるおそれのある動物」について、逸走した場合に「速やかに関係機関への通報を行うとともに、近隣の住民に周知し、逸走した動物の捕獲等を行い」と書いています。ボールパイソンがここに当たるかどうかは、当店では判断できません。ただ、前の章で挙げた「近隣に伝える・自治体に連絡する」は思いつきの気遣いではなく、この形が基準の中に書かれているものだと知っておいてください。
整理すると、第3の7が逸走時の捜索・捕獲を、第3の8(6)が人に危害を加えるおそれのある家庭動物等についての通報と近隣への周知を書いている、という形です。届出の要否と手続きは、ここからは決まりません。千葉市のように窓口を用意している自治体がある、というのがこの記事で言えることで、全国一律の届出義務があるとは書けません。お住まいの自治体に確認してください。
ボールパイソンは特定動物ではない
混ざりやすい話を分けておきます。環境省の特定動物リストでニシキヘビ科から指定されているのは、モレリア・アメティスティヌス(アメジストニシキヘビ)、モレリア・キングホルニ(オーストラリアヤブニシキヘビ)、ピュトン・モルルス(インドニシキヘビ)、ピュトン・レティクラトゥス(アミメニシキヘビ)、ピュトン・セバエ(アフリカニシキヘビ)の5つです。ボールパイソン(Python regius)はこのリストに入っていません。
参考までに、横浜市の報道発表によれば、2021年5月6日に戸塚区の個人宅から逸走したアミメニシキヘビ(特定動物)は、5月22日午後4時40分に「飼育者住居アパートの屋根裏」で発見され、4時44分に捕獲されました。16日かかり、見つかった場所は同じ建物です。
この事案で、ボールパイソンの飼い主にも効く点が2つあります。
- 見つかったのは、すでに2回探された場所でした。市の発表は、同じ屋根裏を「5月11日(火)、17日(月)にも、戸塚消防署、戸塚警察署、管理会社等が、サーモカメラ等の活用や、屋根裏に立ち入るなどして捜索を行っていましたが、その際は発見されませんでした」としています。一度見た場所を、候補から消さないでください。
- 逸走の原因も書かれています。市は、飼育者が「許可を取得した設備と異なる設備に保管して、必要な施錠設備を簡易なものとしていたことからヘビが逸走した」と供述したため改善指導を行った、としています。「施錠を簡易なものにしていた」——後ろの章で挙げる、間に合わせの留め具の話がそのまま出てきます
「指定されていない」から言えることは、限られています
横浜の事案を挙げたのは、探す範囲の順番を統計的に示すためではありません。1件の事例です。そして指定の有無から、行政や警察が実際にどう動くかは決まりません。ボールパイソンが特定動物でないことは、許可を要しないという意味であって、「連絡しても取り合ってもらえない」という意味ではありません。捜索は自分で進めながら、自治体と警察の両方に問い合わせてください。賃貸の契約や管理規約で飼育に条件が付いていることがあり、自治体の条例が別に何かを求めている場合もあります。そこは当店では一般化できません。
見つかったあと
捕まえて戻して終わり、にはしないでください。まず状態を見ます。
反応が鈍い、呼吸がおかしい、明らかな外傷がある、粘着物が付いている。このいずれかなら、回復を待たずに爬虫類を診られる動物病院に連絡して、保温と搬送の指示を受けてください。連れて行き方は病院の探し方の記事に書きました。
こうした異常が見られなければ、次を確認します。
- 戻す前に、出口を塞ぐ。脱走できたケージにそのまま戻せば、同じことが起きます。扉・フタ・配線の穴・通気口を点検してください(見るところは後ろの章にまとめました)。その場で直せないなら、換気があって、確実に閉まって、温度を確保できる容器を一時的に使ってください
- ケージの温度を確認する。普段どおりホット側とクール側の2点を見ます。戻すのは元の設定値までです。下がった分を取り返そうとして設定を上げないでください。この線引きは当店の停電対策の記事に書いたのと同じです
- 急に温め直さない。熱いお湯に浸ける、熱源に直接当てる、はやらないでください
- 体を見る。鱗の剥がれ、切り傷、口や鼻のまわりの汚れ、目の状態。ほこりや髪の毛が巻き付いていないか。Wisconsin も「逃走中に起きたかもしれない、その他の怪我や異常がないか探す」としています
- 脱水を見る。Wisconsin が最初に挙げているのが「その動物がまだ十分に水分を保てているかを確かめる」ことです。新しい水を用意してください。ただし、飲んだかどうかだけで脱水していないとは判断できません。評価は獣医師が行うものです
- 体重を測る。脱走前の数字と比べます
- そのあとしばらく、呼吸器を見る。Wisconsin は「ケージの外の温度に長くさらされたことは、より熱帯・亜熱帯寄りの多くの種にとってしばしば懸念材料であり、呼吸器感染症やその他の健康上の問題をより注意深く見ておくべきである」としています。症状と受診の線引きは当店の呼吸器感染症の記事にあります
- 記録を残す。いつ逃げて、いつ見つかって、その間の室温の最低値、どこにいたか。受診することになったら、そのまま問診票になります
ここは2か所、Wisconsin と当店で判断が違います
給餌。Wisconsin は「かなりの期間いなくなっていて、目に見えて体重が落ちている場合はとくに、そのあとまもなく食事を与えることが勧められることもある」としています。当店は、温度が安定して普段どおりの様子に戻ってからを勧めます。消化には十分な体温が必要で、足りないと消化不良や吐き戻しにつながるためです(当店の適温の記事、停電対策の記事)。順番の話で、食べさせるなという話ではありません。ただし著しく痩せている、脱水が疑われる、普段と様子が違うという場合は、与える前に爬虫類を診られる動物病院に相談してください。弱っている個体に食べさせること自体が、負荷になります。
入浴。同記事は「逃走中に汚れることが多いので、よく洗って浸けてやると、きれいになるうえに水分補給にもなる」としています。当店は、長時間の入水は勧めません(水入れに浸かる話の記事)。汚れを落とすなら短時間にとどめ、水分は水入れから飲ませてください。
出口を作らないための点検
再発のほうです。閉め忘れだけでなく、ケージの構造と固定方法も点検してください。
Wisconsin は「大多数の場合、脱走は人のミスによって起きる。ヘビに適さないケージやセットアップを使っていた、十分に塞がれていない、脱走できるだけの大きさの隙間がある、そもそも脱走できない作りになっていない、あるいはケージの扉や天面を開けたままにした」としています。閉め忘れと、ケージの作りの両方が挙がっていることに注意してください。Kaplan はもっと強く、「10回のうち9回は、ケージがヘビ用に設計されていないか、決意したヘビの粘り強さと、狭いところに体を収める性質をほとんど考えずに作られているために脱走が起きる」と書いています。ただしこの「10回のうち9回」に、集計の裏づけは示されていません。割合としてではなく、閉め忘れだけを疑って終わりにしないという向きの話として読んでください。
間に合わせの留め具は、対策になりません
ここは、当店の既存記事より資料のほうが厳しいことを先に書いておきます。
Wisconsin はこう書いています。「板、レンガ、石、ケージクリップ、その他の間に合わせの掛け金や器具といったものは、脱走を防ぐ手段として適切ではない」。Kaplan も「板やレンガは適切なケージの覆いではないし、金属かどうかによらず、間に合わせの掛け金も同様である」としています。2つの資料が揃って、重しや間に合わせの留め具に頼るなと言っています。
当店のケージのサイズの記事は、上開きフタについて「ロープやクリップで確実に固定されるか」と書きました。この記事では、そこをもう一段厳しく書き直します。重しを載せるだけ、ロープを掛けるだけ、適合の分からないクリップで留めるだけは、対策として数えないでください。「適合の分からない」と限定しているのは当店の判断で、Wisconsin はケージクリップそのものを不適切な例に挙げています。個々の製品については、メーカーが指定している固定方法と用途を確認してください。
Wisconsin が勧めているのは「ヘビ用に設計・製造された、安全で、施錠でき、脱走できない作りで、かつ十分に換気されたプラスチック・PVC・FRP などのケージやラックシステム」、そして「ガラスの水槽を使うなら、きちんと適合したスクリーントップなどの天面が、必ずケージに固定されていること」です。RSPCA も royal python のケージについて、まず「逃げられないよう、確実に閉まるようにすること」を挙げています。
そのうえで、当店の既存記事の点検項目のうち、残る3つはそのまま有効です。
- 前開き扉:鍵やロックがかかるか。閉め忘れが起きにくい構造か
- 配線の穴:ヒーターやサーモのコードを通す隙間は塞がっているか
- 通気口:頭が通るサイズになっていないか
隙間の幅では線を引けない
当店の既存記事は「ヘビは頭が入る隙間があれば通り抜けますし、想像以上に力があります」と書いています。「何ミリの隙間なら通れないか」を示した信頼できる資料は、当店では見つけられませんでした。数字で線を引けないので、点検は隙間の幅を測るのではなく、「押して動くところが無いか」「頭が入る開口が無いか」で見ることになります。
力の大きさのほうは、測った研究があります。Marvi と Hu(2012年、Journal of the Royal Society Interface)は、発泡材を敷いた通路の幅と傾斜を変えて、若いコーンスネーク3個体を通らせ、体の動きと通路の壁にかかる力を測りました。60°に傾いた通路を登るとき、ヘビは腹側の鱗を引っかけて摩擦係数を2倍にし、左右の壁を押す力の合計は体重の最大9倍に達していたと報告しています(片側の壁で測った値を2倍した合計です)。滑り落ちないために必要な力の最大4倍まで押しているという計算も付いています。
この数字を、フタの固定強度や重しの重さに換算しないでください。種はコーンスネーク、条件は傾いた通路を登るときの左右の壁への力で、ボールパイソンがフタを持ち上げる力でも、隙間の一部分にかける力でもありません。フタの安全性は倍率で判断せず、前の節のとおり、製品に適合した固定・施錠で確保してください。
掃除・給餌・ハンドリングの前後に確認する
ケージ本体が大丈夫でも、開けた状態は毎日生まれます。
- 一時的に入れておく容器は、蓋がロックできるものを使う。当店のケージ掃除の記事に書いたとおり、洗面器やダンボールは蓋が甘く、ボールパイソンは隙間から出ます
- 戻したら、その場で閉めて施錠までかける。「あとで」を作らないことです。ロック忘れは、ロックが無い状態と同じです
- ハンドリングは、逃げられても被害が小さい部屋で。ドアを閉め、床に物を減らしてから始めます。持ち方そのものは持ち方の記事に書きました
- ラック飼育は、タブが完全に入っているかを毎回見る。半端に出ていると、その隙間がそのまま出口です。ラックの構造についてはシステムラックの記事にまとめてあります
- ケージの周りも整えておく。これは万一のときに探す時間を短くするためです。ケージの下と背後に物を詰め込んでいると、最初に見るべき場所がいちばん見にくい場所になります
まとめ
探す前に、移動範囲を減らして危険を取り除く(分担してよい)家族に伝える。足元を見ながらドアと窓を閉める(換気設備と燃焼器具の給排気口は塞がない)。掃除機・洗濯機・ロボット掃除機を止める。粘着シートと殺鼠剤を回収する。犬猫を分ける。浴槽の水を抜く。ケージは電源を入れたまま片付けない
ドアを閉めても、探す範囲はその部屋に確定しない閉めるのはこれ以上広げないためで、気づく前の移動は分かりません。別室・上方・屋外の可能性は残ります
ケージの周りから同心円状に。壁沿いと狭い場所を、懐中電灯と点検鏡でWisconsin Herpetological Association:「ケージの背後・中・上・下、そして土台のまわり」から。「壁や巾木に沿って移動する」。探すのは気づいた時点から始め、夕方と夜にもう一度回ります
「何日で見つかる」は予測できない。一度見た場所も消さないWisconsin:「決まった時間の枠は本当に存在しない」「数分で見つかることもあれば、何か月、あるいは1〜2年経ってから思いがけず出てくることもある」。横浜市の逸走事案(アミメニシキヘビ)で16日後に見つかった屋根裏は、5月11日と17日に消防署・警察署・管理会社が「サーモカメラ等の活用や、屋根裏に立ち入るなどして捜索を行っていましたが、その際は発見されませんでした」という場所でした
小麦粉と罠は、資料が食い違うKaplan は探し終えたあとの手順として音の罠と小麦粉を挙げ(「午後9〜10時」は消灯して物音を待つ時刻)、Wisconsin は古い情報として「一般的に言って、確実に機能すると言えるような『罠』は実際にはほとんど存在しない」としています。探す作業の代わりにしないでください。餌を使うボトル罠は当店は勧めません
粘着シートは、初動で回収。貼り付いていたら剥がさないWildlife Center of Virginia:「露出した粘着面に、ペーパータオル、紙、または薄い段ボールをすぐに被せる」→「動物とトラップをまとめて容器に入れ、獣医師に電話する」
家電は、止めて電源を切る。動かさない・引っぱらない電源を切っても高温部はすぐに冷えません。体のどこまでが中にあるか分からないまま引きずらない・傾けない・引っぱらない。安全に取り出せないなら相談してください
捜索と捕獲は「自らの責任において」と書かれている環境省「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」第3の7:「逸走した場合には、自らの責任において速やかに捜索し捕獲すること」。同基準は「動物」に爬虫類を含みます。届出の要否はこの引用からは決まりません——自治体に確認してください
ボールパイソンは特定動物ではない。ただし対応の有無は別特定動物リストのニシキヘビ科は5種で、Python regius は入っていません。指定の有無から行政・警察の動き方は決まらないので、自分で探しながら、自治体と警察の両方に問い合わせてください。千葉市:「逃げた動物は、もよりの警察署、または近隣の保健所に保護されている場合があります」
見つかったら、まず状態を見る反応が鈍い・呼吸がおかしい・外傷・粘着物なら、回復を待たず病院へ連絡。そうでなければ元の設定値のケージに戻し、急に温め直さない。脱水・体重・外傷を見て、そのあとしばらく呼吸器を見ます
間に合わせの留め具は対策にならないWisconsin:「板、レンガ、石、ケージクリップ、その他の間に合わせの掛け金や器具は、脱走を防ぐ手段として適切ではない」。Kaplan も同旨。横浜市の発表も、逸走の原因として飼育者が「必要な施錠設備を簡易なものとしていた」と供述したことを記録しています。施錠できる専用ケージか、確実に固定されたスクリーントップで確保してください
隙間は幅で線を引けない。力の数字は換算しない何ミリなら通れないかを示した信頼できる資料は見つかりませんでした。Marvi と Hu(2012)の「左右の壁を押す力の合計が体重の最大9倍」はコーンスネークが傾いた通路を登るときの値で、フタを持ち上げる力ではありません
参考にした資料
「」でくくった引用のうち、英語の資料からのものは当店の訳です。出典の重みは同じではありません。動物愛護管理法と環境省の告示は国の法令・基準、横浜市と千葉市は行政機関の公表情報、RSPCA は動物福祉団体の飼育解説、Pittman ほかと Marvi and Hu は査読論文、Wisconsin Herpetological Association と anapsid.org は爬虫類の団体・専門家による解説で、査読を受けたものではありません。探し方の具体論は最後の2つに依っており、だからこそ両者が食い違う点を本文でそのまま書いています。
- 動物の愛護及び管理に関する法律(昭和48年法律第105号)(2026年9月29日閲覧)
- 環境省「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」(平成14年環境省告示第37号、最終改正 平成25年環境省告示第82号)(2026年9月29日閲覧)
- 環境省「特定動物リスト」(2026年9月29日閲覧)
- 横浜市健康福祉局「逸走したアミメニシキヘビ(特定動物)の捕獲について」(令和3年5月23日/2026年9月29日閲覧)
- 千葉市「動物の逸走届・保護届」(2026年9月29日閲覧)
- Roscoe D. How to Find an Escaped Snake (or Other Reptile). Wisconsin Herpetological Association. 2024年7月10日(2026年9月29日閲覧)
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- Wildlife Center of Virginia「The Dangers of Glue Traps」(2026年9月29日閲覧)
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本記事は脱走したときの手順と、出口を作らないための点検を整理したものです。法令の解釈、賃貸契約・管理規約・自治体の条例の適用については当店では判断できません。また個体の診察・検査・治療の要否は獣医師が判断します。傷や体調の異変があるときは、日数を数えずに受診を優先してください。

