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飼育

ボールパイソンの冬の保温|温度が上がらないときの順番と、断熱・電気代の考え方

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寒くなってケージの温度が上がらなくなったとき、最初に浮かぶのが「もっと強いヒーターに替えようか」だと思います。ただ、原因は器具の故障とは限りません。多くは室温が下がったぶん、ケージから逃げていく熱が増えている——中と外の温度差が大きいほど、単位時間に逃げる熱は増えます。出口が広がっているところへ出力だけを足しても、やり方によっては空気が暖まらないまま接触面だけが高温になります。

この記事は、冬という条件が加わったときに何を測り、どこから手を付けるかを書きます。冬に両端を測る理由、断熱材を置いてよい位置と、ふさいではいけない通気の区別、電源につながったままの熱源を覆わない理由、そして電気代を消費電力から概算する式です。

目次

  • 冬に足りなくなるのは、多くの場合ケージの外側の条件
  • 冬は両端を測る。特にクール側と、夜間の最低値
  • 逃げる熱を減らす。ただし置いてよい場所は製品が決める
  • ケージを断熱するより、部屋を先に決める
  • 電気代は「W」と「動いている時間」から自分で出す
  • 冬にやりがちな5つ
  • 冬の「食べない」を、温度不足と決めつけない
  • 冬の停電は、部屋のほうから落ちる
  • 当店 LilBalls の冬
  • まとめ
  • 参考にした資料

冬に足りなくなるのは、多くの場合ケージの外側の条件

気温が落ちてくると、まず増えるのが「ケージの温度が上がらない」という相談です。そこで最初に浮かぶのがヒーターのワット数を上げることですが、手を付ける順番としてはここが最後になります。

理由は熱の出入りにあります。ヒーターが作った熱は、ケージの壁・底・通気口から外へ逃げていきます。単位時間あたりに逃げる熱の量は、中と外の温度差が大きいほど増えます。夏に27℃あった室温が冬に18℃まで落ちれば、同じヒーターが同じ設定で動いていても、出ていく分だけが増えます。器具の故障でないなら、室温が下がったぶん熱損失が増えて、今の加熱では前と同じ温度を保てなくなっている——冬に多いのはこの形です。

能力に余裕のある熱源に替えれば、熱損失が増えていても温度は取り戻せます。気をつけたいのはやり方のほうです。熱源の種類とセンサーの位置によっては、空気が十分に暖まらないまま、接触面だけが高温になることがあります。当店のパネルヒーターの記事で書いたのはこの形です。また、すでに最大出力で連続運転しているなら、サーモスタットの設定温度を上げても能力不足は解消しません。

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出力を上げること自体が悪いわけではありません

測って本当に能力が足りていなければ、熱源を大きいものに替える・足すという判断は必要です。ここで言いたいのは順番だけで、「ワット数の大きい器具は危ない」という意味ではありません。消費電力が大きいほど電気代が増えるとも限りません——同じ温度を保つのに必要な熱量が同じなら、大きい出力が短い時間動くこともあります。危ないのは接触面の温度と制御のほうで、W数そのものではありません。

器具そのものの選び方は保温器具の使い分けの記事に、制御の話はサーモスタットの記事にあります。この記事で扱う順番は測る → 逃がさない → 足すで、これは停電対策の記事と同じです。足すところから入ると、何が効いたのか分からなくなります。ただし、いま適温を保てていないなら、この順番より安全な保温の確保が先です。室温・設置・断熱・熱源の能力をまとめて見直してください。

冬は両端を測る。特にクール側と、夜間の最低値

温度を測っている方でも、冬は見る場所が増えます。ホット側とクール側の両方を測ったうえで、冬に特に注意して見るのがクール側と夜間の最低値です。

ホット側も安心はできません。サーモスタットが制御しているとはいえ、能力が足りなければホット側も設定に届きません。センサーの位置がずれていれば、表示と実際の面の温度も一致しません。冬に「クール側だけ見ればいい」という話ではなく、両端が下がっているのか、片側だけが落ちているのかを区別するために両方を測ります。測り方そのものは温湿度計の記事に書いたとおりです。

そのうえで、資料が下限として挙げている数字を並べます。

  • RVC(英国王立獣医大学)は「クール側は約24℃に保つこと」とし、背景の保温について「夜間の温度が約24℃を下回らないよう、サーモスタットで設定すること」としています
  • ARAV(米国爬虫類両生類獣医師協会)は「ケージのクール側は75°F(23.8℃)を下回るべきではない」とし、日中の環境温度を80〜85°F(27〜29℃)としています

当店の適温の記事でも、資料ごとに数字は違うものの「24℃を下回らせない」という点はほぼ共通していると書きました。冬に崩れやすいのが、この下限です。

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24℃は飼育目安であって、危険と安全の境目ではありません

23℃になった瞬間に何かが起きる、という数字ではありません。ここで挙げた RVC・ARAV が下限側に置いている目安なので、そこを割っていたら原因を探し、必要な保温を確保する合図として使う——という読み方をしてください。見て記録するだけで終わらせないでください。一度割ったことより、どのくらいの低さが、どのくらい続いているかのほうが問題になります。

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朝に最低値を読む——冬はこれが効きます

やり方は温湿度計の記事に書いたとおりで、冬に始める習慣ではなく通年の話です。ただし差が出るのは冬です。昼間に今の値を見ても、自分が寝ているあいだにどこまで落ちたかは分かりません。

RVC はこの温度計について「熱源はサーモスタットにつなぎ、そのうえで温度は別途、デジタル式の最高最低温度計で測って、適切な温度範囲が達成されていることを確認すること」としています。「別途」はサーモの表示とは別に、という意味で、目的は範囲(勾配)が取れているかの確認です。サーモの数字はセンサーのある1点の話なので、それだけでは両端が分かりません。

冬は勾配の形も変わります。ホット側を設定どおり維持できているあいだは、制御されていないクール側のほうが大きく落ちて、ホット側との差が広がります。適温の記事に書いた「ヘビに選ばせる」という前提は、クール側が下限を割るほど下がると、片方が選びにくい温度になって弱まります。

逃げる熱を減らす。ただし置いてよい場所は製品が決める

測って足りないと分かったら、次は逃げ道です。費用の少ないものから挙げます。

  1. 置き場所を変える。窓際・外壁に接した面・玄関に近い場所は、同じ部屋でも冷えます。ケージを数十センチ動かすだけで条件が変わることがあり、費用はかかりません
  2. 床から離す。床付近は冷えやすく、ケージを直に床へ置いていると底面から熱が逃げ続けます。台に載せるだけでも変わります
  3. 外気に面した側面を覆う。断熱材や板で、外へ向いている面をふさぎます。ただし、その面に熱源があるなら対象外です——背面にヒートマットを貼る構成(RVC が挙げている置き方)やヒートテープを背面に通すラックでは、背面は熱源の面です

ただし、どこに何を置いてよいかは、製品の設置条件に従ってください。

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断熱材は、説明書が認めた位置にだけ置く

熱源に接触させないだけでは足りません。接していなくても放射熱で温まりますし、器具が必要としている放熱のための空間をふさいでしまうことがあります。使用している製品の説明書で認められた位置に置き、指定された離隔距離と放熱空間、そしてケージの換気を確保してください。底面ヒーターの下敷きや隙間の取り方は製品ごとに違うので、他製品の設置例をそのまま流用しないでください。断熱材の多くは可燃物なので、配線・保温球・セラミックヒーターからは離してください。

そして、覆ったら/動かしたら測り直してください。断熱は夜の下がり方だけでなく、日中の上がり方も変えます。パネルヒーターの記事に書いた48時間の試運転と同じで、昼・夜・暖房が止まる時間帯を通して、両端の最高最低温度とヘビが触れられる面の温度を見てください。ケージを動かした場合は、ヒーターとサーモスタットのセンサーの位置がずれていないかも確認します。

具体例を1つ挙げますが、これはその製品に限った指示です。英国のメーカー Pro Rep はヒートマットの取扱説明書で、ガラスやプラスチックの容器の外側に設置する場合について、マットの下に発泡ポリスチレン(発泡スチロール)を敷き、マットと容器の底とのあいだに少なくとも5mmの隙間ができるようケージを持ち上げて空気が流れるようにし、マットが過熱しないようにすることを求めています。これはヒーターの熱を下へ逃がさないための断熱であって、ヒーターを包むための断熱ではありません。「床から離す」と言われてパネルヒーターの下に毛布を押し込む、という取り違えをしないでください。同じ説明書は、両面を覆うことや熱を閉じ込める設置も警告しています。詳しくは当店のパネルヒーターの記事にも書きました。

そしてもう1つ、冬にいちばん出やすい手があります。

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通気は断熱の対象ではありません

Merck Veterinary Manual は「温度と湿度を保つために換気を減らすのは望ましくなく、しばしば皮膚疾患と呼吸器疾患を引き起こす」としています。温度が上がらないときに通気口をふさぐ、ケージ全体を包む——資料が否定しているのは「保温・保湿のために換気を減らすこと」そのもので、材料が何かは関係ありません。ふさいでよいのは熱の逃げ道であって、空気の通り道ではありません。

同マニュアルの細菌性疾患の項は、呼吸器感染症の発生に影響する条件として「呼吸器や全身の寄生虫、好ましくない環境温度や湿度、換気不足、不衛生な状態、併発疾患、栄養不良」を挙げています。好ましくない温度と換気不足が、同じリストに並んでいます。温度を取り戻そうとして換気を削ると、片方を直してもう片方を作ることになります。

通電中ならではの制約もあります。

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電源が入っている熱源は覆わない

停電対策の記事では、ケージを毛布や段ボールで包む方法を書きました。ただしあの手順は「覆う前に、電気式の熱源のプラグを抜く」が前提です。冬の常用はその逆で、熱源は電源につながったままです。ここで言う「電源が入っている」は、サーモスタットがいま通電している瞬間だけでなく、自動で再通電しうる状態を含みます。サーモが切っている最中でも、覆えば次に入ったときに布の下で発熱します。保温球や上部ヒーターの上に布・段ボールを載せる、器具ごとケージを包む、といった覆い方はしないでください。プラグを抜いた直後も、熱源は高温のことがあります。停電時に覆うときも、覆いを高温の部分に触れさせず、換気は残してください。

ケージを断熱するより、部屋を先に決める

断熱を詰めていくと、どこかでケージ単体の上限に当たります。Merck も「ガラスは断熱性が低く、熱損失が大きいために劇的な温度変動につながることがある」としています。薄くて通気口が要る容器である以上、ケージ側でできることには限りがあります。

日本の住環境では、部屋の温度を先に作ってしまうほうが結果的に楽です。当店の適温の記事でも、エアコンで空間の温度を確保したうえで局所の温かさを足す二段構えを挙げています。冬は室温の維持が、そのままケージ内の温度に効いてきます。

部屋で作ると決めたときに、冬だけ出てくる論点が2つあります。

  • 暖かい空気は上にたまる。床置きのケージは、部屋の中でも冷えやすい高さに置かれています。実測すると床付近と目線の高さで差が出ることがあるので、サーキュレーターで空気を回すか、ケージを台に載せて高さを稼ぐほうが、ヒーターを足すより早いことがあります
  • 相対湿度が落ちる。空気中の水蒸気量が同じでも、温度を上げれば相対湿度の表示は下がります。冬に暖房を入れた部屋で湿度計の数字が落ちるのは主にこれです。詳しくは湿度の記事に書きました。ここでも、対処として通気口をふさぐ方向には行かないでください

複数匹を飼っている場合は、部屋で作る利点がさらに大きくなります。ケージ1つずつに器具を足していくと、器具の数だけ故障する箇所が増えます。システムラックの記事で書いた考え方と同じで、まとめて温められる範囲はまとめたほうが、管理する対象が減ります。

電気代は「W」と「動いている時間」から自分で出す

冬の保温でいちばん多い不安が電気代です。金額は契約している料金プランと地域で変わるので、ここでは数字を当てずに出し方を書きます。

式は 消費電力(W)÷ 1000 × 動いている時間(h)= 消費電力量(kWh)。これに自分の契約の電力量料金単価を掛ければ金額になります。単価は検針票や電力会社のマイページに書いてあります。

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この式は「概算」です

使えるのは、消費電力が一定か、その時間の平均値を使う場合です。公表されているW数から出した概算と、電力計で測った実際の消費量は別物だと思っておいてください。正確に知りたいなら、コンセントに挟むタイプの電力計で測るのがいちばん早いです。

ここで、器具の種類によって「動いている時間」の意味が変わります。サーモスタットで ON/OFF する器具なら、実際に通電していた時間を使います。自己制御式の器具は切れるのではなく出力が変わります。公表値が「安定消費電力」の場合、それを最大値として扱わず、あくまで参考値として概算してください。実際の消費電力量を知りたいなら、電力計で測るのが確実です。

なお「動いている時間」は、サーモスタットを使っていても24時間とは限りません。設定温度に届かなければ連続で通電しますし、ON/OFF 式なら実際に入っていた時間、ディマー(調光)式やパルス比例式なら、出力(平均出力)を落としたまま動き続けることもあります。制御方式による違いはサーモスタットの記事に書きました。

公表されている消費電力を並べておきます。

  • 「ピタリ適温プラス」(底面のパネルヒーター):1号が4W相当、2号が8W相当、3号が15W相当、4号が20W相当。これは「安定消費電力」(◯W相当)という表記です。この製品には温度設定のスイッチがなく、環境温度に応じて自分で出力を変える自己制御式なので、常にこのW数を消費し続けるわけではありません
  • 上部ヒーター「暖突」:S が13W、M と LONG が32W、L が57W。こちらも「安定消費電力」という表記です

この桁を頭に入れておくと、削るべき場所が変わります。ここで挙げた器具の消費電力は、一般的な家電と比べると小さい部類です。冬の電気代として大きく効くのは、多くの場合ケージの器具ではなく部屋を暖めている側のほうです。ただし、部屋の暖房を弱めれば家全体の電気代が下がるのか上がるのかは、部屋の断熱・広さ・飼育数・暖房方式によって変わります。当店で条件を揃えて測り比べた数字はないので、ここは断定しません。金額より先に見るべき線のほうがはっきりしています——暖房を弱めた結果クール側が24℃前後を割るなら、そこは節約してよい場所ではありません。削ってよいのは、逃げていく熱のほうです。

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断熱が減らすのは、運転している時間か、平均出力

逃げる熱が減れば、同じ温度を保つのに必要な熱量が減ります。ON/OFF 式のサーモなら、設定温度に達して切れている時間が長くなり、消費電力量が下がります。調光式やパルス比例式なら、時間ではなく平均出力のほうが下がります。ただし条件付きです。通電中の消費電力がほぼ一定の器具で、断熱後もなお能力が足りず最大出力で連続運転するなら、同じ時間の消費電力量はほぼ変わりません(温度が少し上がるだけです)。逆に、ピタリ適温プラスのように環境温度で通電量が変わる製品なら、連続通電でも消費電力は下がりえます。また、断熱したからやけどのリスクが減るわけでもありません。熱がこもれば接触面の温度はむしろ上がりえます。断熱したあとも、面の温度は測り直してください。

なお暖突の製品ページには「保温球の約1/3の消費電力で同等性能が得られます」という記載があります。これはメーカー側の表示で、当店が同条件で測り比べた数字ではありません。器具の選択そのものは保温器具の使い分けの記事を、飼育にかかる費用全体の見通しは飼育方法の総合ガイドにありますが、あちらに書いている金額は執筆時点の参考値です。料金は契約と時期で動くので、上の式で自分の条件から出し直してください。

冬にやりがちな5つ

ここまでの内容を、失敗の形でまとめ直します。

  • 測らずにサーモの設定温度を上げる。熱源とセンサーの位置によっては、空気が十分に暖まらないまま接触面だけが高温になります。上げる前に、両端と面の温度を測ってください
  • 通気を減らして温度を保とうとする。Merck が否定しているのはこの目的そのもので、皮膚と呼吸器の疾患につながるとしています
  • 熱源を足した結果、ヘビが温度を選べなくなる。問題は熱源の数ではなく、ケージ内のどこへ行っても同じ温度になってしまうことです。適温の記事のとおり局所の加熱は片側に寄せ、背景の保温を足したあともクール側が適切な範囲に収まっているかを実測してください
  • 夜に、背景の保温まで止める。RVC は日中のバスキング用の熱源は夜に消すとし、そのうえで背景の保温はサーモスタットで夜間も約24℃を下回らないよう管理するとしています。つまり区別は「光る/光らない」ではなく「バスキング用か、背景の保温用か」です。夜に止める熱源があるのは構いませんが、必要な背景の保温まで一緒に止めて24℃前後を割らせないでください。なお、繁殖のために意図して夜間温度を下げるクーリングは別の話です(繁殖完全マスターガイド)。この記事が扱っているのは、意図せず下がってしまう場合です
  • 熱源のそばに布を置く。保温球・セラミックヒーターの近くに毛布やカーテンが来ていないか、模様替えや置き場所の変更をしたときに確認してください

冬の「食べない」を、温度不足と決めつけない

冬に給餌が止まると、多くの方が温度を疑います。順番としては正しいので、疑ったら測って、確かめてから次に進んでください。

温度が低いまま続いたときに起きうることは、当店の適温の記事に書いたとおり、消化の遅れと吐き戻し、そして呼吸器系の不調です。ただし呼吸器感染症について、低温が単独の原因になるわけではありません。前掲の Merck のリストのとおり、寄生虫・湿度・換気・衛生・併発疾患・栄養など複数の条件が関わる中の1つとして「好ましくない環境温度」が挙がっています。呼吸器の症状そのものの見方と、加温の扱いは呼吸器感染症の記事にまとめてあります。

一方で、温度も湿度も正常なのに冬に食べないことがあります。当店の拒食の記事に「季節性によるもの」として挙げたのがこれで、成体になると自発的に食べない時期が出ることがあります。ただし、温湿度が正常だというだけで季節性と判断はできません。体重・体型・活動性と、吐き戻しや呼吸の異常がないかを記録しながら見てください。体重が落ちてきた、動きが鈍い、他の症状が出た——このいずれかがあれば受診してください。症状がなくても、拒食が長く続くようなら一度相談しておくと安心です。

環境が正常だと確認できているあいだは、慌てて設定をいじらないでください。環境を動かしてしまうと、次に何が起きても切り分けが増えます。

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呼吸の異常があれば、通常の適温域を保ちながら速やかに獣医師へ連絡

開口呼吸・分泌物・異常な呼吸音があれば、通常の適温域は保ったうえで、速やかに爬虫類を診られる獣医師に連絡してください。受診までの保温をどうするかも、そのとき相談します。低いまま待つという意味ではありません——低温になっているなら適温域へ戻してください。逆に、治療として行われる「至適温度域の中間〜上限側での維持」を、飼い主が自己判断で先取りしないでください。この線引きは呼吸器感染症の記事で、Merck の記述と接触面の温度の話を添えて詳しく書いています。

冬の停電は、部屋のほうから落ちる

部屋で温度を作っている飼い方ほど、停電したときに失うものが大きくなります。ケージの器具だけでなく、暖房も同時に止まるからです。

手順は停電対策の記事にまとめてあるので繰り返しませんが、冬に入る前に確認しておくと違うものが2つあります。電池式の温湿度計があるかどうかと、使い捨てカイロの有効期限です。停電中に測れないと、覆う・足すの判断そのものに入れません。

復旧のときも順番があります。覆いと応急の熱源を外してから、熱源のプラグを再接続する——覆ったままだと、通電が戻ったときに布の下で発熱するからです。再接続したあとは、サーモの設定が保持されているか、器具が正常に動いているか、そして実測の温度を確認してください。下がった分を取り返そうとして設定を上げないでください。戻すのは元の設定値までです。

当店 LilBalls の冬

当店は、季節による設定の上げ下げをしていません。エアコンで部屋そのものを年間27〜28℃に保ち、繁殖のための意図的なクーリングも行っていません。この方針は適温の記事と繁殖完全マスターガイドに書いたとおりです。

「冬だから何かを変える」のではなく、冬でも同じ数字を保つために、外から入ってくる条件のほうを打ち消すという考え方をしています。湿度の記事でも同じことを書きました——平常値を決めておいて、測定値がそこから外れたら原因を調べて戻す。季節ごとに運用を切り替えるより、管理する項目が少なくて済みます。

設定を一定にしておく利点は、電気代や手間だけではありません。環境の記録が残っていると、体調が変わったときに原因を検討しやすくなります。ただし、設定を変えていないことと環境が変わっていないことは同じではありません。室温も湿度も外の条件で動きますし、温湿度以外の要因もあります。「設定を触っていないから環境は関係ない」とは言い切れないので、そこは測った記録のほうで確かめてください。

まとめ

  • 順番は「測る → 逃がさない → 足す」。室温が下がると熱損失が増えて、今の加熱では前と同じ温度を保てなくなります。測って本当に能力が足りなければ、熱源を替える・足す判断は必要です。いま適温を保てていないなら、順番より先に安全な保温の確保を優先してください
  • 冬は両端を測る。特にクール側と夜間の最低値。RVC は夜間も約24℃を下回らないようサーモで設定すること、ARAV はクール側が23.8℃を下回らないことを挙げています。最高最低温度計を朝に読むのは通年の習慣ですが、差が出るのは冬です
  • 断熱は置き場所・床から離す・外気に面した側面から。ただし置いてよい位置は製品の説明書が決めます。離隔距離と放熱空間、そして換気を確保してください
  • 通気は断熱の対象外。Merck は「温度と湿度を保つために換気を減らすのは望ましくなく、しばしば皮膚疾患と呼吸器疾患を引き起こす」としています
  • 電源につながっている熱源は覆わない。毛布や段ボールで包む手順は、停電時にプラグを抜いてから行うものです。抜いた直後も残熱があるので、覆いを高温部に触れさせず換気を残してください
  • 電気代は W ÷ 1000 × 時間の概算。公表W数を入れた概算と、電力計で測った実測は別物です。単価は自分の検針票を見てください。断熱が減らすのは運転時間か平均出力で、能力が足りず連続通電のままなら(消費電力が一定の器具では)変わりません
  • 冬の拒食は、測って確かめてから。温湿度が正常というだけで季節性とは判断できません。体重と様子を記録し、体重減少や他の症状があれば受診してください

温度と湿度を含めた環境全体を見直したい方は、6つの質問で環境のストレス度がわかる当店のストレスチェックツールもあわせて使ってみてください。

参考にした資料

  • Merck Veterinary Manual「Management and Husbandry of Reptiles」(換気の記述)/同「Bacterial Diseases of Reptiles」(呼吸器感染症の条件と至適温度域の記述)(いずれも2026年9月26日閲覧)
  • RVC(英国王立獣医大学)Beaumont Sainsbury Animal Hospital「Royal python care and advice」(2022年12月改訂)
  • ARAV(Association of Reptilian and Amphibian Veterinarians)ボールパイソン飼育ガイド(2026年9月26日閲覧)
  • Pro Rep「Heat Mat & Heat Strip Instruction Manual」(2026年9月26日閲覧)
  • 「ピタリ適温プラス」製品仕様/「暖突」製品仕様(いずれも2026年9月26日閲覧)
  • ボールパイソンの適温は何度?/パネルヒーターの選び方と設置方法/爬虫類の停電対策/ボールパイソンの湿度は何%?/ボールパイソンの呼吸器感染症(いずれも当店)

消費電力はいずれもメーカーの公式ページが公表している値で、当店の実測ではありません。お使いの製品の銘板と説明書の値を優先してください(同じ型でも仕様が改訂されることがあり、販売店の掲載値が公式と食い違っている例もあります)。「保温球の約1/3」も同じくメーカー表示です。低温が消化や体調に与える影響について、ボールパイソンで「何℃が何日続くと何が起きるか」を示した資料は確認できていません。本記事が挙げているのは、資料が下限として置いている目安です。

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