爬虫類の飼育で「サーモスタットは必須」とよく言われます。ただ、その理由を「ヒーターは温度を制御できないから」と説明されると、少し引っかかる方もいるはずです。温度を設定できるパネルヒーターは実際に売られているからです。
この記事では、まずヒーター側の温度制御とサーモスタットが守っているものの違いをはっきりさせたうえで、やけどがなぜ気づかれないまま進むのか、方式をどう選ぶか、センサーをどこに固定するか、壊れたときと停電したときにどうなるかを順に整理します。
設定温度の具体的な数字と、当店 LilBalls が実際にどう運用しているかも書きます。
目次
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ヒーターが守っているのは、ケージの中の温度ではない
「サーモスタットは必須」とよく言われますが、その理由を「ヒーターは温度を制御できないから」と説明するのは正確ではありません。温度を制御するヒーターは実際に売られています。
正しくはこうです。ヒーター側の温度制御が守っているのは「ヒーター自身の表面温度」であって、「ヘビが実際に受け取る温度」ではありません。この 2 つがずれるから、サーモスタットと温度計が要ります。

サーモスタット本体とセンサー、パネルヒーターの形
自己温度制御のヒーターは実在する
たとえば国内で広く使われているビバリアのマルチパネルヒーターは、設定ダイヤルで表面温度を約 25〜45℃ の範囲で変えられる製品です。取扱説明書には「設定温度に対して自己温度制御が行なわれ点灯消灯が繰り返されます」とあり、ヒーター側に自己温度制御があって、設定温度付近で点灯・消灯を繰り返す仕組みです。
そのうえで、同じ説明書が自分で釘を刺しています。「設定温度は、発熱体表面の温度です。保温目的の位置の温度確認はかならず温度計を設置してご確認ください」「発熱体表面温度とケージ内の床温度は、設置条件で異なります」。ヒーター側の制御が守っているのは発熱面で、ヘビが乗る面ではない——メーカー自身がそう書いているわけです。
精度にも幅があります。設定値誤差は ±5℃。さらに「発熱面の表面温度は、設定された温度誤差以上には上昇しませんが、飼育ケースやケージを覆って密閉された状態では設定温度以上に上昇する場合があります」と書かれています。「自己温度制御」は「正確」という意味ではありません。
外付けサーモを重ねる前に説明書を見る
自己温度制御タイプに外付けサーモスタットを重ねてよいかは、製品ごとに違います。国内製品でも答えが正反対に分かれるので、つなぐ前に必ずヒーター側の説明書かメーカーの案内を確認してください(後述)。「サーモは常に足せばいい」ではありません。
制御の無いヒーターは、上限まで行って止まらない
一方、温度制御を持たない製品も多くあります。この場合コンセントに挿すと、その設置条件で行き着くところまで温度が上がって、あとはそのままです。
「弱」「中」「強」の切り替えが付いていても、それが出力の段階を選ぶだけなのか、温度を設定しているのかは表示だけでは分かりません。出力を選ぶだけのタイプなら、室温が下がれば「強」でも足りず、室温が上がれば「弱」でも熱くなりすぎます。まず自分のヒーターがどちらなのかを確かめてください。
サーモスタットは、センサーで測った温度に応じてヒーターへの電力を加減し、設定温度を保つ装置です。国内で売られている爬虫類用の製品は、センサーが読んだ温度に応じて電源を入切するものが中心です(後述)。
では実際、何度まで上がるのか
製品ではなく設置条件で決まります。自己温度制御を持つビバリア マルチパネルヒーターでも、説明書の表面設定温度は「室温 20℃ 時」の目安として書かれています。室温が違えば、同じダイヤルでも行き着く温度が変わるということです。
床面に伝わる量も設置で動きます。同じ説明書は「発熱面とケージ内の床面の間に熱を吸収する物がない場合は床温度が設定温度に近くなります」とし、逆に床温度が目標に届かないときは「床材の厚みを少なくするか、発熱面の下に断熱材を敷き、下方向への熱吸収量を減らして上方への放熱効果を上げてください」と案内しています。床材の厚みと断熱材だけで、同じヒーターの同じ設定でも床面の温度は変わります。
温度制御を持たないヒーターでは、この「行き着くところ」がそのまま上限になります。自分の環境で「ヘビが乗る面が何度か」を測っていないなら、サーモスタットを入れる前提で組んでください。
やけどは、ヘビが逃げないまま進む
多くの哺乳類は熱ければ離れます。爬虫類はそうとは限りません。獣医監修の解説では、爬虫類について「危険なほど熱い熱源から、すすんで離れようとしない」と書かれています(PetMD・獣医監修)。
なぜそうなるのかははっきり分かっていません。同じ記事は「正確な理由は不明だが、熱と痛みの受容体が別々である可能性を研究は示唆している」という書き方をしています。あわせて「熱による傷害が完全に現れるまでに数日かかることがあるため、その瞬間には不快感を感じていない可能性がある」とも述べています。あくまで「可能性」であって、確定した説明ではありません。
別の動物病院の解説は、少し違う角度から「爬虫類は代謝が遅く、哺乳類とは痛みの反応が違うため、数日のあいだ明らかな徴候を示さないことがあり、飼い主が気づく前にやけどが悪化しうる」としています(Tree of Life Exotic Pet Medical Center)。こちらは「痛みを感じていない」ではなく「外から見て分からない」という話です。
どちらにしても「上に乗っているから平気なはず」は成り立ちません。乗ったまま、気づかれないまま進むことがあります。
これは獣医側だけが言っていることではありません。ビバリア マルチパネルヒーターの説明書には「低温やけどについて」という項があり、「ペットが本製品を使用中、長時間、体の同一ヶ所に当てていると皮膚障害を起こし、低温やけどをすることがあります。ペットがやけどに気づかないこともありますので、異常だと思われる場合は直ちに獣医師にご相談ください」と書かれています。「幼体、高齢、けが、病気、皮膚のデリケートなペットに使用される場合は特にご注意ください」とも。メーカーが注意書きとして載せている程度には、現実に起きることです。
当店の適温の記事では「一番よい温度計はヘビの行動」と書いていますが、あれは温度勾配が機能しているかを見るための話です。やけどを検知する手段にはなりません。逃げないので、行動に出ないことがあります。この 2 つは用途が別です。
そして治りは遅いです。PetMD は「爬虫類のやけどは治るまでに数週間から数か月かかることがある」としています。数日の温度管理の不備が、長期の治療につながりえます。

下から温まっている範囲に乗ったまま、自分からは離れない(PetMD・獣医監修)
やけどが疑われたら
まず熱源から離して、爬虫類を診られる動物病院に相談してください。見た目に出るまで時間がかかるので、「様子を見る」は不利に働きます。
後者の病院は、対策として「どんな熱源でも、必ずサーモスタットで制御すること」「ホットロックや直接接触する加温器具は避けること——これらはやけどの頻繁な原因です」と明記しています。サーモを付けても、露出した高温部にヘビが直接触れられる設置は別途避ける必要があります。

床面が上がりすぎる経路と、その止め方
方式より先に、ヒーター側が併用を認めているかを見る
海外の解説では ON/OFF 式・調光式・パルス比例式の 3 方式から選ぶ、という整理をよく見かけます。ただし日本で普通に買える爬虫類用サーモスタットを当たると、選択肢はそこにありません。この記事で取扱説明書とメーカーの製品ページを確認した国内メーカーの爬虫類向け 4 製品は、調光式・パルス比例式としては案内されていませんでした。
確認した国内メーカー品は、入切式が中心
- ビバリア マルチタイマーサーモ(取扱説明書)… 「ヒーター用コンセントは設定した温度とセンサーが感知した温度の差に応じてヒーターの電源を消したり、点灯したりします」。制御温度範囲 20〜50℃(設定精度 ±1℃)、使用できるヒーター容量 150W まで、ライト容量 150W まで
- ビバリア ビバサーモ RT300(取扱説明書)… 「電子制御式デジタルサーモスタット」。コンセント出力型で、最大容量 300W まで、制御温度範囲 15〜45℃(±1℃)。異常感知シグナルは「センサー:異常(断線、短絡)、異常温度:設定温度±5℃以上、ヒューズ切れ」(制御の方式そのものは説明書に明記されていません)
- GEX エキゾテラ タイマーサーモ(製品ページ)… 「設定した温度と、センサーが検知した温度の差に準じて通電をON/OFFします」。制御温度は 15〜40℃、保温器具 300W 以下・照明器具 300W 以下
- 神畑養魚 レプタイルサーモ(製品ページ)… 「爬虫類保温球専用のサーモスタット」で「1W~最大310Wまでの保温球の接続使用が可能」、20〜40℃。メーカー表示が保温球専用なので、パネルヒーター用として使える製品とは扱わないほうが安全です(これは表示からの判断です)
これは「国内で買えるのは入切式だけ」という話ではありません。爬虫類専用品に限らなければ、水槽用・小動物用・産業用の温調器や海外メーカー品の国内流通もあります。ただ国内メーカーの爬虫類向けから選ぶ場面では、方式を比べることにはなりません。実際に迷うのは次の 3 点です。
1. つなぐヒーターが、併用を認めているか
ここが最初です。同じ「ケージの外から温めるヒーター」でも、メーカーの答えは正反対に分かれます。
- GEX ヒーティングトップは、メーカー自身が「小さいケージで使用した際に、ケージ内の気温が上がりすぎる場合は、サーモスタットとの併用をおすすめします」と書いています(製品ページ)。併用する相手も「イージーグローサーモなどのサーモスタット」と名前で挙げています
- みどり商会 ピタリ適温プラスは、公式 FAQ の「ピタリ適温プラスにサーモスタットを接続しても良いですか?」に対して「可能ですが、推奨しません。故障した場合、保証の対象にはなりません」と答えています。あわせて「任意の温度設定は保証できません」とも書かれています(よくある質問)
どちらも国内で広く使われている製品です。「サーモは常に足せばいい」ではありません。つなぐ前にヒーター側の説明書か公式 FAQ を見て、認められている組み合わせかを確かめてください。認めていない製品に重ねるなら、壊れたときに保証が無いことを引き受けるという話になります。
2. 容量(W)と、1 台に何をつなぐか
容量はヒーターとライトで別枠になっていて、しかもそれぞれ 1 台までという製品があります。ビバリア マルチタイマーサーモの説明書は警告として「ヒーターコンセント、ライト(タイマー)コンセントには150W以下の器具をそれぞれ各一台のみ使用する。(火災・故障の原因)」と書いています。
守らなかったときにどうなるかも、同じ説明書に書いてあります。液晶が表示されなくなる症状について「容量以上のヒーターやライトを接続した場合や、本製品一台に対して複数のライトやヒーターを管理しようとした場合などに起きます。復帰しませんので、新しい製品をお求めください。」——直らない、という扱いです。
1 台で複数のケージを見ることもできません。同じ説明書の警告に「本製品はセンサーをセットしているケージのみで使用する。複数のケージで使用しない。」とあります。ケージが増えたらサーモも増えます。
3. 異常を知らせる機能があるか
センサーの断線やヒューズ切れを検知して知らせる製品があります。あるとサーモの壊れ方に気づきやすくなりますが、「知らせる温度」がヘビの安全域とは別物である点に注意が要ります。詳しくは故障の節で書きます。
ボールパイソンの一般的な組み方——ケージの外にパネルヒーター 1 枚——なら、国内製品の入切式で足ります。見るのは方式ではなく、この 3 点です。
本文で取り上げた4機種です。並び順は本文と同じで、優劣を付けたものではありません。
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ビバリア マルチタイマーサーモ 爬虫類 鳥 サーモスタット 温度管理 関東当日便
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ビバリア LCD ペットサーモ ペット用タイマー機能付サーモスタット 爬虫類 両生類 小動物 小鳥用 RT-2000
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GEX エキゾテラ タイマーサーモ RTT−1 爬虫類 サーモスタット 関東当日便
センサーの位置で、設定温度の意味が変わる
サーモスタットが見ているのは、センサーが置かれた場所の温度だけです。同じ「28℃」でも、センサーをどこに置いたかで、ヘビが実際に受け取る温度はまったく違います。
そしてここは海外の飼育情報と国内製品の説明書が食い違うところです。英語圏の解説では「ヒーターマットの上にセンサーを貼って床面温度を設定する」という書き方をよく見ますが、国内製品はそう指示していません。
- ビバリア ビバサーモ RT300 の注意書きは「センサーを床材に埋めない」「センサーやコードは、ランプ・保温器具に触れないように設置する」です
- ビバリア マルチタイマーサーモも「センサーに床材などをかぶせた状態にしない。(正常な温度にならない原因)」としています
- GEX タイマーサーモは、センサーを「保温器具の熱気等が直接あたらず、生体がいたずらしにくい位置」に付属の吸盤で固定するよう案内しています
つまり英語圏でよく見る「ヒーターマットの直上にプローブを貼って床面温度を直接制御する」方法を、国内製品にそのまま当てはめてよいとは限りません。ヒーターに貼り付けると、サーモは熱源のすぐ近くの高い値を読んで早々に給電を切るので、ケージの中は設定より寒くなります。ビバリア マルチタイマーサーモの説明書も、ケージ内の温度計が設定より低くなる場合の原因として「センサーがヒーターのすぐ近くにありませんか?」を最初に挙げています。
逆向きの失敗もあります。ヒーターから遠い隅や、ケージの外に出ていると、低い値を読み続けてサーモがヒーターを切りません。これがいちばん危ない置き方です。なお本体の置き場所は決まっていて、RT300 は「必ず、本体はケージや飼育容器の外に設置する」としています。
ただし逆向きの誤解も危険です。空気の温度を測っていれば床面が安全になるわけではありません。パネルヒーターでは床面だけが先に上がるので、空気が目標どおりでも床面が上限を超えていることがあります。当店の環境では、空気温を 30℃ に合わせると床面は34℃ 前後まで上がります——ただしこの差はヒーターの種類・出力・床材の厚み・断熱・室温で変わるので、数字を持ってこないで自分の環境で測ってください(測り方は温湿度計の記事)。
順番はこうなります。センサーの置き場所は説明書に従う。サーモの設定値は、その位置で何度にしたときに床面が何度で落ち着くかを測って逆算する。サーモの設定値を床面の目標温度と同じ数字にする、という意味ではありません。
センサーの値=ヘビが受け取る温度ではない
サーモの表示は、センサーがある場所の温度です。ヘビが乗る面が何度になっているかは、放射温度計で別に測るしかありません。センサーを固定したら、必ず一度は実測して差を把握してください。
適温の考え方と測り方はボールパイソンの適温は何度?温度勾配の作り方と当店の温度設定にまとめています。

センサーの置き場所と、サーモが読む温度の関係
設定温度は「ホットスポットの上限」から決める
ボールパイソンは、温かい側と涼しい側を自分で行き来して体温を選びます。だからサーモに設定するのは「ケージ全体を何度にするか」ではなく「いちばん温かいところを何度で頭打ちにするか」です。
基準になる数字は、当店の適温記事と同じです。ホットスポットの表面温度で 30〜33℃、上限の目安は 33℃。35℃ を超えているならすぐ見直してください。
注意したいのは、これが「ヘビが乗る面」の温度であって、センサーを置いた場所の温度ではないことです。センサーをヒーター表面に付けているなら、そこは乗る面より高く出ます。つまり設定値そのものは 33℃ とは限りません。乗る面を放射温度計で測りながら、33℃ を超えないようにサーモの設定を上下させて逆算してください。サーモの本当の役目は「温める」ことではなく「上げすぎない」ことです。
手順にすると、ヘビを入れる前にここまでやります。
- ヒーターとサーモをつないで、ヘビを入れずに数時間運転する
- ホット側の床面・シェルターの中の床面・クール側の床面を、放射温度計で測る
- ホット側の床面が 33℃ を超えるなら、サーモの設定を下げるか、ヒーターの出力・床材の厚み・断熱を見直す
- 35℃ を超える場所があるなら、そのまま生体を入れない
- 床材を替えた・シェルターを動かした・ヒーターを替えた・季節が変わった——このときは測り直す
涼しい側は、ヒーターを敷かないことで作ります。ケージの一部にだけ敷くのが基本で、全面に敷くと逃げ場が無くなります。これはメーカーの指示でもあり、ビバリア マルチパネルヒーターの説明書は「飼育生体にとって床温度が暑過ぎる時に生体が避難できるよう全床面積の半分以下の範囲に設置してください。床面積全体を保温する範囲に設置しないでください。」としています。当店はパネルヒーターを床面積の 3 分の 1 程度にしています。
サーモは壊れる。危ないのは「入りっぱなし」の方
機械なので壊れます。センサーの断線、読み値のずれ、間欠動作など壊れ方はいろいろありますが、結果として起きることは大きく 2 つに分かれ、危険度がまったく違います。
- 加温が止まる … 温度が下がります。室温が十分にある季節なら数時間の停止は問題になりにくいですが、冬に暖房ごと落ちれば危険です
- 加温が止まらない … リレー接点の溶着などで、制御が切ろうとしても給電が続きます。サーモを付けていない状態と同じで、やけどの経路がそのまま開きます
厄介なのは、出力側が壊れているかどうかを、サーモの表示だけでは判断できないことです。画面に出ているのが設定温度なのか測定温度なのかも製品によって違います。実際の面が何度かは、別の温度計で測らないと分かりません。
国内製品にも異常を知らせる機能はあります。ビバサーモ RT300 の仕様には異常感知シグナルとして「センサー:異常(断線、短絡)、異常温度:設定温度±5℃以上、ヒューズ切れ」が挙げられています。ビバリア LCD ペットサーモはエラー表示を持ち、センサーのショート(E-01)・断線(E-02)に加えて、上限 55℃ 以上(E-03)・下限 5℃ 以下(E-04)を出します(取扱説明書)。
ただしE-03 が出る 55℃ は、ヘビの安全上限ではありません。機器が異常として表示するしきい値で、ボールパイソンのホットスポットの上限(33℃)とは別物です。異常検知があることと、ヘビが安全であることは別——エラーが出ていないから大丈夫、とは読まないでください。
ひとつめの対策はバックアップサーモの二重化です。つなぐ順序はコンセント → バックアップ → メインのサーモ → ヒーター。バックアップが上流に来ます。こうしないと、メインが入りっぱなしで固着したときにバックアップがメインごと給電を切れません。
- センサーは 2 本用意し、どちらもホット側の、説明書が認める位置に固定する。1 本を共用すると、そのセンサーが外れた瞬間に二重化が無意味になります。バックアップのセンサーをクール側やケージの外に置くと、ヒーターが暴走してもバックアップは切りません
- バックアップの設定はメインより数度高く。メインが固着しても予備が切ります。選ぶ基準は値段ではなく、容量に余裕がある・独立したセンサーを持つ・センサー異常と停電復帰の挙動が説明書に書いてあることです
- サーモを別のサーモにつないでよいかは製品ごとに違うので、両方の取扱説明書を確認してください
二重化は「メインの固着対策」で、床面の過熱を完全に防ぐものではありません。バックアップのセンサーも空気を測っていれば、床面が先に上がって空気が遅れて追いつく間にやけどの時間が過ぎます。だから二重化と並行して、床面の実測・ヒーター出力の抑制・逃げ場のある温度勾配が要ります。
ふたつめは高温アラームです。設定より上がったら音や通知で知らせる温度計を、サーモとは別系統で入れておきます。ただしアラームは加温を止めません。「誰が通知を受けて、どれくらいで駆けつけられるか」まで決まっていないと、二重化の代わりにはなりません。

バックアップサーモのつなぐ順序。バックアップが上流に来る
停電から復帰したとき、サーモは設定を覚えているか
見落とされがちですが、通電が切れて戻ったときの挙動は製品ごとに違います。
- 設定を保持して自動で運転を再開する … 留守中の停電では、これがいちばん困りません
- 設定は残るが、運転の再開に手動操作が要る … 気づかないと、以後ずっと加温されないままになります
- 設定や時刻がリセットされる … 昼夜で温度を変える設定をしている場合、意図しない側で動きます
実際に書かれている例を見ると分かりやすいです。ビバリア LCD ペットサーモの説明書は「本製品にはバックアップ機能がついています。停電のときなど通電しなくても、約1時間保持します。1時間以上経つと、初期設定値に戻ることがありますので、再度、設定をやり直してください。」としています。マルチタイマーサーモの仕様も、バックアップ機能は「約1時間保持(時計、設定タイマー、設定温度)」です。1 時間を超える停電では、設定が初期値に戻っている前提で確認が要るということになります。
同じ説明書は停電時の対処として「電源が復帰するまで待って、もし停電が長い時はケージ内の温度変化に注意してください。復帰した後も設定値が正常に動作しているかチェックしてください。」とも書いています。復帰したら表示を見るまでが手順です。
自分の製品がどれに当たるかは説明書に書いてあります。書いていなければ、ヘビを入れる前に、サーモをコンセントから抜いて挿し直してみてください。設定が残るか、勝手に運転を再開するかはこれで分かります(長時間の停電や時計の保持まではこれでは確かめられません)。
停止中に室温がどうなるかは、サーモが壊れて加温が止まったときと同じ考え方です。冬に暖房ごと落ちる場合だけ、別に手を打っておいてください。
温度は毎日見る。月に 1 回は別の温度計で答え合わせをする
サーモの表示は「センサーが読んだ値」であって、「ヘビが受け取っている温度」ではありません。ずれていないかは、別の測り方でしか確かめられません。
前出の Tree of Life も、やけどの予防として温度を毎日確認することを挙げています。日々やるのはケージの温度計を見るだけで十分で、そのうえで月 1 回、次の答え合わせをします。
- 放射温度計で、ヘビが乗る面を直接測る。ガラス越しではなく対象の表面に向けます。サーモの表示と大きくずれていたら、センサーの位置か固定を疑います(放射温度計自体にも誤差があるので、1℃ 程度の差で慌てる必要はありません)
- センサーが動いていないか見る。テープが剥がれて床材の上に浮いていることがあります。ヘビに押しのけられる場所に置かない、先端を指定外の材料で覆わない——この 2 点は取扱説明書を確認してください
- コードの発熱と焦げを見る。電源を抜いてから、プラグやコネクタが変色していないか見ます。熱い・焦げている場合は使用をやめます
床材を足した、シェルターを動かした、ヒーターを替えた、季節が変わった——このときも測り直してください。サーモを入れて終わりにせず、答え合わせまでが運用です。
当店 LilBalls の運用
当店はまずエアコンで室温を 27〜28℃ に保ちます(年間を通して同じで、季節による上げ下げはしていません。極端な温度変化を避けて安定させることを優先しているためです)。これは空調の設定値で、サーモスタットの設定値ではありません。そのうえでラック側の加温を別にサーモスタットで制御し、床面を実測して上限を外さないようにしています。
ただしこの数字をそのまま 1 ケージ飼育に持ってこないでください。部屋ごと温度を作っている環境での設定値なので、同じ数字をケージ用サーモに入れても、ヘビが乗る面が同じ温度になるとは限りません。決めるのは自分の環境で測った値です。
ラックについては、メインのサーモ 1 台だけで運用しています。二重化を省ける前提として、次の 3 つを置いています。
- 室温をエアコンで管理していること。ヒーターに頼る幅が小さく、必要な出力そのものを下げられます
- ヒーターの出力に余裕を持たせていること。入りっぱなしで止まらなくなったときに、どこまで上がるかが分かっている範囲に収めています
- サーモとは別に高温アラームと温度の監視を入れていること。
この 3 つのどれかが欠ける環境では、バックアップを入れたほうが確実です。とくに数日ラックを見られない環境で、サーモ 1 台に任せきりにするのは勧めません。
ラックそのものの選び方・加温の方式・メーカーについてはボールパイソンのシステムラック完全ガイドに分けて書いています。
まとめ
サーモスタットの話は、装置を 1 つ足すかどうかではなく「どこの温度を、何度で、誰が見張るか」の話です。4 つに分けると迷いません。
- どこの温度か … ヒーター側の制御もサーモの表示も、見ているのはヒーター表面かセンサー位置の温度。ヘビが乗る面は放射温度計で別に実測する(当店では空気 30℃ のときに床面 34℃ 前後。差は設置条件で変わる)
- 何度か … ホットスポットの表面温度で 30〜33℃、上限 33℃。35℃ 超はすぐ見直し。設定値はそこから逆算する
- どう制御するか … 国内メーカーの爬虫類向けは入切式が中心で、方式を比べる場面にならない。見るのはヒーター側が併用を認めているか・容量(ヒーターとライトで別枠、各 1 台)・異常を知らせる機能があるか。自己温度制御タイプでも精度には幅がある(±5℃、密閉すれば設定以上に上がる)
- 誰が見張るか … サーモは壊れる。加温が止まらない故障はサーモ無しと同じ。二重化(センサー 2 本、どちらもホット側の説明書が認める位置。バックアップは上流)か高温アラームで備える。どちらも床面の過熱そのものは止めないので、出力の抑制と逃げ場を併せて用意する
そのうえで、温度は毎日見て、月 1 回は別の温度計で答え合わせをする。停電から戻ったときにどうなるかは、ヘビを入れる前に抜き差しして確かめておく。ここまでが運用です。
なお、ボールパイソンが唇のピット器官で熱を感じているからといって、自分で適温を選べるとは限りません。何を感じているのかはボールパイソンのピット器官|何を感じているのか、温度計ではないという話にまとめています。
参考にした資料
- マルチパネルヒーター 取扱説明書. 株式会社ビバリア
- ビバサーモ RT300 取扱説明書. 株式会社ビバリア
- マルチタイマーサーモ 取扱説明書. 株式会社ビバリア
- LCD ペットサーモ 取扱説明書. 株式会社ビバリア
- タイマーサーモ. ジェックス株式会社 エキゾテラ
- ヒーティングトップ L. ジェックス株式会社 エキゾテラ
- レプタイルサーモ. 神畑養魚株式会社
- よくある質問. ピタリ適温プラス公式サイト(みどり商会)
- Thermal Burns in Reptiles. PetMD(Reviewed by Sean Perry, DVM)
- Thermal Injuries (Burns) in Reptiles. Tree of Life Exotic Pet Medical Center

