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飼育

ボールパイソンの締めつけと飛びつき|ピーク圧に効いたのは胴の太さ、孵化個体の10回の給餌では経験差なし

eyecatch

ボールパイソンは獲物に巻きついて締めつけて捕らえる種です。当店の記事でもボールパイソンとはや賃貸の記事でその一行は書いてきましたが、その「締めつけ」が獲物の体に何をしているのか、どのくらいの力なのかを正面から扱ったことはありませんでした。

調べてみると、締めつけと飛びつきは意外とよく測られている行動でした。ボールパイソン(Python regius)を対象にした査読論文が4本、別の種のヘビで、締めつけの圧力・獲物側の生理反応・体幹の筋構造をそれぞれ調べた論文が3本あります。そして測られた結果は、飼育の感覚から出てきそうな予想を、いくつかはっきり裏切っています。孵化個体に10回給餌した実験では経験の有無による締めつけ圧の差が検出されず、巻きの数を増やしても有意差は出ず、飛びつきの運動学的な性能は、調べた10匹では最初の18か月で落ちていきました。

この記事は、その7本が何を測ったのかを整理します。対象種の4本は要旨しか読めていません——購読誌で、全文の入手手段が今回は見つかりませんでした。どの数字がどの範囲の話なのかは、本文のなかで毎回明示します。

目次

  • 窒息ではなく、循環の停止かもしれない
  • 胴の太さはピーク圧と関連し、孵化個体の実験では経験差が出ませんでした
    • 巻きの数と圧力のあいだに、有意な関係は出ませんでした
    • 孵化個体に10回給餌した実験では、経験による差が出ませんでした
  • 飛びつきの運動学的な性能は、調べた10匹では最初の18か月で落ちていました
  • 飲み込み終わるまでの時間は、餌の相対的な重さで変わります
  • 飼う側が、この7本から取れること
    • 小さいから飛びつきが鈍い、とは言えません
    • 人に巻きついたときの資料は、見つかりませんでした
    • 首と肩に巻かせないのは、当店の運用です
    • 締めつけは、ヘビの側にもコストがかかります
  • この記事が言っていないこと
  • まとめ
  • 参考にした資料
    • 対象種(Python regius)を扱った査読論文(いずれも要旨のみ)
    • 別の種のヘビで測られた論文
    • 行政資料
    • 原典を読めていない資料
    • 当店の記事

窒息ではなく、循環の停止かもしれない

「締めつけて窒息させる」という説明をよく見かけます。これは長いあいだの定説でした。「コンストリクターのヘビが獲物を窒息によって殺すというのは、何年にもわたって広く受け入れられていた(For years it had been widely accepted that constricting snakes kill their prey by suffocation)」と、後で出てくる論文の導入が書いています。

1928年と1994年に、窒息ではなく循環の停止ではないかという説が出ました。ただし同じ導入によれば、「これらの議論が示されてから20年が経つが、研究者はまだ Hardy の考えを検証していない」という状態が続いていました。実際に獲物の側を測ったのが、2015年の次の研究です。

Boback ほか(2015年、J Exp Biol 218巻14号2279〜2288頁)は、麻酔したラットにボアコンストリクター(Boa constrictor)を締めつけさせ、そのあいだの血圧・心電図・血液ガスを記録しました。ラットは24匹用意され、解析されたのはヘビ9匹による18回の締めつけ試行です。体重の集計に載っているのは15匹で、平均 398±7 g、ヘビの体重の 28±3% にあたる大きさでした。解析に使われた数は指標ごとに違います——末梢の血圧は6、中心静脈圧は10、心拍は16、心電図は15、血液のカリウムは17です。なお、この論文が ± で示しているのは標準誤差(s.e.m.)であって標準偏差ではありません。ヘビは中米ベリーズで採取された野生個体とその F1 で、どの個体も最後の給餌から14日以上あけてから使われています。

麻酔をかけたのは、ラットが暴れることが締めつけ行動そのものに影響するのを避けるためだと論文に書かれています。測定は2系統で、締めつけの圧力はラットの左の背側皮下に入れた水圧プローブ、血圧は大腿動脈と頸静脈に入れたカテーテルです。下の図で同じ軸に並ぶ3本は、上の1本だけ測っている場所が違います。

ボアコンストリクターが麻酔したラットを締めつけたときの記録をまとめた図。見出しは「締めつけ中、獲物の体で起きていたこと」で、出典は Boback ほか2015年 J Exp Biol 218(14):2279-2288。上段は圧力(単位はいずれもmmHg)を横軸に点で示した図で、ヘビの締めつけ圧のピークが156、ラットの血圧(締めつけ前)が82、ラットの血圧(締めつけ圧ピーク時)が41.5。グラフの下に、平均±標準誤差(s.e.m.)は156±15/82±2/41.5±13で、ピークは飛びついてから5.9±0.8秒後と添えられている。その下の囲みは、「締めつけ前」が麻酔・手術のあと締めつけが始まる直前の値であること、測っている場所も数も違うこと——締めつけ圧はラットの左背側の皮下に入れた水圧プローブで14、末梢の血圧は大腿動脈のカテーテルで6、中心静脈圧は頸静脈のカテーテルで10——を注意している。下段は2列で、左が「心臓に帰る側は、逆に上がる」(中心静脈圧は締めつけ前から締めつけ圧ピーク時にかけて−4.2±0.5から33±8mmHgへ。論文は33を正常値およそ1mmHgをはるかに超える水準としている)と「心拍と心電図」(436±11拍/分(16)が終了時点には約3.9分の1に。心電図の異常は11匹中10匹の91%。締めつけ時間は平均6.5±1分)、右が「血液の側(締めつけ前→締めつけ直後)」(pH 7.4±0.01→7.0±0.03、カリウム4.8±0.2→9.2±0.6 mmol/L、動脈血酸素分圧132±14→89±16 mmHg、動脈血二酸化炭素分圧40±2→86±6 mmHg)と「著者らの結論」(窒息ではなく循環の停止が最も近接した死因「かもしれない」。酸素89は飽和度にすると約95%(著者による換算)で、低酸素血症は重要な要因ではないことを示唆する——ただし血中酸素の減少が他の病態と協働した可能性は否定されない、とも書いている)。図の下の囲みには、ボールパイソンの数字ではないこと、締めつけたのはボアコンストリクターで獲物は麻酔したラット(24匹用意され、解析はヘビ9匹による18回の試行。体重の集計は15匹で平均398±7g、ヘビの体重の28±3%)であること、巻きついた部位が記載されている17試行のうち2試行はラットの首にループが掛かり血圧の解析からだけ除外されていることが書かれている。

Boback ほか(2015年)が記録した値。ボアコンストリクターが麻酔したラットを締めつけたときの数字で、ボールパイソンの実測ではありません

締めつけの圧力は、飛びついてから 5.9±0.8 秒でピーク(156±15 mmHg)に達します。同じ6秒のあいだに、ラットの大腿動脈で測った末梢の血圧は 82±2 mmHg から半分(41.5±13 mmHg)に落ち、逆に心臓に戻る側の中心静脈圧——心臓に血液が帰ってくる手前の圧力——は −4.2±0.5 mmHg から 33±8 mmHg へ上がりました。論文は、この 33 mmHg が正常値(およそ 1 mmHg)をはるかに超える水準だと書いています。

著者らは、この数秒のあいだに右心へ帰る血流が大きく減るか、あるいは止まることが示唆されると書いています。血流が止まったところを直接見たわけではなく、血圧の変化からの推論です。心拍は30秒以内に下がりはじめ、締めつけが終わる時点(平均 6.5±1 分)には 436±11 拍/分 の約 3.9 分の1 まで落ちました。心電図の QRS 幅も広がり、終了時点で 91%(11匹中10匹)に心臓の電気的な異常が出ていました。

血液の側も動いています。締めつけ終了の直後に採った血液は、pH が 7.4±0.01 から 7.0±0.03 へ下がり、血中カリウムは 4.8±0.2 から 9.2±0.6 mmol/L へほぼ倍になっていました。酸素は 132±14 から 89±16 mmHg に下がり、二酸化炭素は 40±2 から 86±6 mmHg に上がっています。

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酸素も下がっていますが、著者らはそれを主役と見ていません

締めつけ後の動脈血酸素分圧 89 mmHg は、末梢の酸素飽和度に直すとおよそ 95% にあたる——だから「締めつけによる死において、全身の低酸素血症は重要な要因ではないことを示唆する」というのが著者らの読みです。ただし「血中酸素の枯渇が、灌流の低下といった他の病態と協調して組織の虚血を悪化させた可能性を否定するものではない」とも書いています。

二酸化炭素の上昇についても、著者らは「締めつけ後の動脈血の化学値は代謝性アシドーシスと整合する」として、血中に入った不揮発性の酸(乳酸など)が平衡を動かして二酸化炭素を追い出す、という説明を挙げています。換気の寄与を否定しているわけではありません——同じ論文の導入は、締めつけによる胸腔の容積とコンプライアンスの低下が換気を速やかに制限し、高二酸化炭素血症と低酸素血症を併発させうるとも書いています。ただし「動脈血の乳酸を採っていないので、乳酸が原因だと確認することはできない」と留保しています。

著者らの結論は、断定ではありません。「死の正確な機構は依然として不明瞭であるが、獲物の胸部および/または腹部に加わる全周性の圧力が、心血管機能に重大な影響を与えることは明らかである。われわれの結果は McLees(1928年)と Hardy(1994年)の考えと完全に一致する——窒息ではなく、循環の停止こそが、ヘビの締めつけにおける最も近接した死因かもしれない(may be)」。この記事の見出しが「かもしれない」で止まっているのは、原文がここまでしか言っていないからです。

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この数字は、ボールパイソンのものではありません

締めつけたのはボアコンストリクターで、締めつけられたのは麻酔したラットです。意識があり抵抗する獲物で同じ経過になるかは、この研究では分かりません。

また、巻きついた部位が記載されている17試行のうち 12%(2試行)では、ヘビがラットの首にループを掛けていました。この2試行は血圧(末梢血圧と中心静脈圧)の解析からだけ除外され、締めつけ時間・締めつけ圧・心拍・心電図・血液ガスの解析には使われています。著者らは「この点についてわれわれの結果は限定的であるが(Although our results are limited in this regard)、徐脈ではなく心拍の増加(頻脈)で反応した3匹のラットのうち2匹は、胸部ではなく首を締めつけられていた」と書いています。同じ段落は「徐脈の実際の近接原因は未解決のままである」とも締めています。首に掛かった場合は最初の反応の向きが逆になりうる、というところまでです。

圧力の側を測ったのが、同じ年のPenning ほか(2015年、J Exp Biol 218巻21号3364〜3367頁)です。アミメニシキヘビ48匹とビルマニシキヘビ17匹、計65匹で測り、どちらの種でも締めつけの圧力は胴の太さとともに有意に上がりました。最大で約 55 kPa を記録しています(Boback ほかのピーク 156 mmHg は、換算すると約 20.8 kPa です)。

この論文は、もうひとつ機構の候補を足しました。「レッドアウト効果」です。戦闘機のパイロットが負の加速度を受けたときに血液が頭に押し込まれて意識を失う現象の名前で、締めつけの圧力が獲物の血圧より大きく上回れば、血液が締めつけられた場所から頭のほうへ押しやられて同じことが起きうる、という提案です。著者らは65点のデータのうち約52点が、哺乳類の獲物の脳へ高い圧力で血液を押し込むのにおそらく(probably)十分な高さだったとしています。

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機構はどれか1つに決まる、という話ではありません

Penning ほか(2015年)は導入で、「締めつけによる死因は不確かなままであり、窒息・循環の停止・脊椎の損傷を含む、互いに排他的でない(non-exclusive)いくつかの機構が関わっている可能性がある」と書いています。

Moon と Mehta が2007年の書籍(Biology of the Boas and Pythons)の章で示した整理も、「低い圧は窒息を起こしうる、中程度の圧は循環の停止を起こしうる、極端に高い圧は脊椎の損傷を起こしうる」という形です(当店はこの書籍の原典を読めておらず、Penning ほかが要約しているところから紹介しています)。窒息が低い圧の側で候補として残っていることに注意してください。

Penning ほかも「捕食の最中に起こる動的なやりとり・動き・そこから生まれる姿勢が、どの種類の損傷が起こり、どれが最も重く、どれが最も速く獲物を制圧するかを決めているのだろう」と結んでいます。

胴の太さはピーク圧と関連し、孵化個体の実験では経験差が出ませんでした

ここからが対象種の話です。Penning と Dartez(2016年、J Exp Zool A 325巻3号194〜199頁)は、ボールパイソンの締めつけの圧力が体の大きさ・性別・経験でどう変わるかを調べました。この論文は要旨しか読めていないので、以下は要旨に書かれていることだけです。

1つめの実験は、成長にともなって締めつけの性能がどう変わるかを見るものでした。結果は要旨にこう書かれています。

「1つめの実験では、締めつけ性能の成長にともなうスケーリングを調べ、胴の直径が締めつけ圧のピークを決める唯一の有意な要因であることを見いだした(In one experiment, we tested the ontogenetic scaling of constriction performance and found that snake diameter was the only significant factor determining peak constriction pressure)」

性別は有意ではありませんでした。そして次の一文が、飼育の感覚からするといちばん意外なところです。

ボールパイソンの締めつけの強さについて、有意だった要因とそうでない要因を並べた図。見出しは「締めつけの強さに、有意だった要因とそうでない要因」で、下の2枚のカードは Penning と Dartez(2016年)の要旨に書かれている範囲であり当店は全文を読めていない、と添えられている。左の囲みが「有意だった」で、胴の直径。1つめの実験で締めつけ圧のピークを決める「唯一の有意な要因」とされ、性別は有意ではなかった。右の囲みが「有意差が出なかった」で、性別・コイルに掛けたループの数・ループの数と胴の直径の交互作用(いずれも1つめの実験)、孵化個体に10回給餌して積んだ経験(2つめの実験)の4つが並び、「有意差が出なかった」であって「関係が無い」が証明されたわけではない、と添えられている。その下の囲みは「ただし、太さは平均としての傾向です」として、同じ著者らが別の種で測った研究では「われわれが調べた中で最も小さいヘビの1匹が、試験した最大級のパイソンのいくつかに匹敵する圧力を生み出すことができた」と報告されていることを、出典(Penning, Dartez & Moon 2015年、J Exp Biol 218(21):3364-3367。アミメニシキヘビとビルマニシキヘビ。この論文は全文を読んだ)つきで示している。最下段は「2つめの実験(孵化個体・10回の給餌)で分かった、もうひとつのこと」として、10回の試行の終了時点で締めつけることを許された個体のほうが締めつけなかった個体より有意に小さかったこと、締めつけという行動自体がエネルギーを使っている可能性を示唆するが要旨はそこまでの解釈を書いていないことを述べ、最後の囲みで、比べられているのは「自分で締めつける」と「鎮静をかけて手で餌を与える」であり、家庭の給餌方法の優劣を調べた実験ではなく鎮静そのものの影響も要旨からは切り分けられないこと、締めつけさせないほうが育つという飼育上のアドバイスとして読まないよう注意している。

上の2枚のカードは Penning と Dartez(2016年)の要旨の範囲。下段には Penning ほか(2015年・全文)からの引用と、当店の読みが混ざっています

巻きの数と圧力のあいだに、有意な関係は出ませんでした

「コイルに掛けられたループの数、およびそれと胴の直径との交互作用は、締めつけの性能に有意な影響を与えなかった(The number of loops applied in a coil and its interaction with snake diameter did not significantly affect constriction performance)」

2重・3重に巻いたほうが強い、というのは直感に合う話ですが、少なくともこの研究では統計的に有意な差として表れませんでした。「有意差が出なかった」であって、「関係が無いことが証明された」ではありません。

同じ著者らがアミメニシキヘビとビルマニシキヘビで測ったとき(Penning ほか2015年)も、ループの数は有意ではありませんでした。ただしその論文は、これが先行研究(Moon と Mehta 2007年)とは逆の結果であるとはっきり書いています。理由の候補として挙げているのは、こうです。

「コイルの中の異なるループが異なる力を発揮し、したがって獲物が受ける全体の圧力に別々の寄与をしている可能性もある。たとえば、あるループが最大の力を発揮し、他のループは獲物をその場に留めて逃走を防ぐが最大の力は発揮していない、ということがありうる」

ループを増やすことに意味が無いのではなく、ピークの圧力という指標には表れないのかもしれない、ということです。

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太いほど強い理由は、まだきれいには説明できていません

力は活動中の筋肉の断面積に関係するので、胴が太いほど大きな力を出せる——という見立て自体は古くからあります(Moon と Mehta 2007年。やはり Penning ほか2015年が要約しているところから紹介しています)。直径にきれいに比例する、という意味ではありません。

ただし Penning ほか(2015年)自身が、「ヘビにおいて、力・表面積・圧力のあいだの関係はまだ十分に定量化されていない」「大型のヘビは締めつけの際に最大の力を発揮しているが、それが獲物に加わる面積のために全体としてはより低い圧力になっている、という可能性もある」と書いています。

同じ論文は「われわれが調べた中で最も小さいヘビの1匹が、試験した最大級のパイソンのいくつかに匹敵する圧力を生み出すことができた。このことは、より大きなパイソンが獲物を制圧する際に最大能力を使っていなかったことを示唆する」とも書いています。太さは平均としての傾向であり、しかもここで言われているのは上限の話ではなく、実際に測定されたピーク圧の話です。

孵化個体に10回給餌した実験では、経験による差が出ませんでした

2つめの実験は経験の効果を見るものです。孵化した個体を2群に分け、一方には自分で締めつけさせ、もう一方には鎮静をかけて手で餌を与える——つまり締めつける機会を与えない——という条件で、10回の給餌を通して比べました。

結果は「経験は締めつけの性能に影響しなかった(experience did not affect constriction performance)」。要旨には、「最後(10回目)の給餌では、すべてのパイソンが同じように締めつけ、獲物を速やかに殺すのに十分な高さの圧力を発揮した(During their final (10th) feedings, all pythons constricted similarly and with sufficiently high pressures to kill prey rapidly)」とも書かれています。

示されているのは、孵化個体の10回の給餌試験で、経験の有無によるピーク圧の差が検出されなかったということです。各個体の圧力が10回を通じて変わらなかったとも、練習一般に効果が無いとも書かれていません。初回に出せた力がどうだったかも、要旨には書かれていません。

要旨は、締めつけの絶対的な強さについても1行書いています。

「ボールパイソンの締めつけ性能は、これまで調べられてきた他のヘビとは異なるスケーリングを示し、中型から大型のボールパイソンは、獲物に循環停止を起こすと示されている圧力より有意に高い圧力を発揮できる(Constriction performance in ball pythons scaled differently than in other snakes that have been studied, and medium to large ball pythons are capable of exerting significantly higher pressures than those shown to cause circulatory arrest in prey)」

ここで比べられている相手は「獲物(prey)」とだけ書かれていて、要旨からは種を特定できません。そして比較の対象は、別の研究で報告された「獲物に循環停止を起こす圧力」です。人に対してどうかという話ではありません。

もうひとつ、経験の実験には副産物があります。「10回の試行の終了時点で、締めつけることを許された個体は、締めつけなかった個体より有意に小さかった(At the end of the 10 feeding trials, snakes that were allowed to constrict were significantly smaller than their non-constricting counterparts)」。締めつけという行動自体がエネルギーを使っている、という読み方ができます。要旨はそこまでの解釈を書いていません。

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家庭の給餌方法の優劣を調べた実験ではありません

比べられているのは「自分で締めつける」と「鎮静をかけて手で与える」です。後者は家庭の給餌でやることではありませんし、鎮静そのものが成長に影響した可能性も、要旨からは切り分けられません。この結果を「締めつけさせないほうが育つ」という飼育上のアドバイスとして読まないでください。

餌の与え方そのものは姉妹店 Lil Rats の給餌頻度のガイドと、当店の餌のサイズと頻度の記事にまとめてあります。当店は冷凍の餌を解凍して与えており、この実験と同じ条件を家庭で作ることはありません。

飛びつきの運動学的な性能は、調べた10匹では最初の18か月で落ちていました

締めつけの前には、飛びつき(ストライク)があります。当店の噛みつきの記事は「首をS字に曲げ勢いをつけて飛んでくる」と書いていますが、その速さが実際どのくらいなのかは書いていません。ここも測られています。

Ryerson と Tan(2017年、J Exp Zool A 327巻7号453〜457頁)は、生後6か月未満のボールパイソン10匹を高速度カメラで撮り、飛びつきの運動学を測りました。要旨の結論はこうです。

「幼体の P. regius は、より大きなヘビに匹敵する水準で飛びつくが、持続時間はより短く、より短い距離にわたって行われる(We find that juvenile P. regius strike at levels comparable to larger snakes, but with shorter durations and over shorter distances)」

要旨が比較の相手として書いているのは「より大きなヘビ(larger snakes)」で、それが具体的に何かは示されていません(要旨の背景にはクサリヘビ類の名前が出てきますが、それは成体を扱った別の研究の話です)。孵化して半年たっていない個体が、その水準に並ぶというのが、この論文の報告です。「水準」が何の指標かは、要旨には書かれていません——速度や加速度の話は要旨では背景(成体を扱った別の研究)として出てくるので、要旨だけから特定はできません。

そして同じ著者が、やはり10匹を追いかけました。Ryerson(2020年、Zoology 140巻・記事番号125780)は、出生から性成熟までの3年間のデータをまとめ、こう書いています(2017年と同じ個体かどうかは、要旨からは分かりません)。

「ほぼすべての運動学的指標において、最初の18か月のあいだに性能が急速に低下することが分かった(I found that performance declined rapidly over the first 18 months in nearly all kinematic measures)」

つまりこの10匹では、最初の18か月のあいだに、飛びつきの性能が上がるのではなく下がっていました。成体のデータは、ヘビ全体で「高い性能が維持される」という当時できかけていた傾向から外れるところに来ます。

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なぜ下がるのかは、分かっていません

著者自身が「この性能低下の根本的な原因は明らかでない(The underlying cause of the decline in performance is unclear)」と書き、行動・形態・生体力学・生態のいずれにも検討の余地があるとしています。

2017年の論文は、飼育が行動にどう影響するかを理解する手がかりにもなりうると述べていました。飼育下の10匹の記録です。野生の個体で同じ経過になるとは限らず、「成長すると衰える動物だ」と読むべきものでもありません。

報告されているのは飛びつきの運動学的な性能です。要旨からは、何に向けて飛びつかせたのか、どう誘発したのかが分かりません。人に向けた防御行動や反応の潜時に、そのまま当てはめることはできません。それでもこの結果から「人への飛びつきも成長とともに鈍くなる」と判断することはできないとは言えます。当店の噛みつきの記事が「タブやケースを開けてすぐなどは飛びついて来やすい」と書いている注意は、サイズに関係なく効くものとして読んでください。

飲み込み終わるまでの時間は、餌の相対的な重さで変わります

飛びついてから飲み込み終わるまでの一連の時間も測られています。Nielsen ほか(2011年、Physiol Behav 102巻1号110〜114頁)は、ボールパイソンとキイロアナコンダを対象にした研究のなかで、飛びつきから飲み込み終わりまでの時間(handling time)は、ヘビの体重に対する獲物の相対的な重さが大きいほど長くなったと報告しています。また1匹目より2匹目で有意に短くなり、ヘビの体重とも正の相関がありました。要旨はこの部分を種ごとに分けて書いていません。与えた餌の相対重量も種で違う(パイソンは10%と15%、アナコンダは20%)ので、種のあいだの差が混ざっている可能性を切り分けられません。

当店の便秘の記事では、RSPCA の書き方にならって飲み込み終わるまで見ているところまでを手順に入れています。その「見ている時間」が毎回同じとは限らないことの一例として読んでください。この研究が見ているのは餌の絶対的な大きさではなく、ヘビの体重に対する相対的な重さです。同じ個体で必ずそうなる、というところまでは要旨から言えません。この記事では、満腹感や給餌間隔についての部分には触れません。

飼う側が、この7本から取れること

ここまでの数字は、どれも家で測れるものではありません。それでも、飼育の判断に効く向きがいくつかあります。

小さいから飛びつきが鈍い、とは言えません

飛びつきの運動学的性能が最初の18か月で落ちるという記録(Ryerson 2020年、飼育下の10匹)と、生後6か月未満でも大きなヘビに匹敵する水準が出るという記録(Ryerson と Tan 2017年)は、同じ向きを指しています。小さいからゆっくりだ、という前提は置けません。

ただし、報告されているのは飛びつきの運動学的な性能です。要旨からは誘発の条件が分からず、人に向けた防御行動や反応の潜時に読み替えることはできません。大きい個体のほうが危険が小さい、という意味でもありません。

当店が持ち方の記事で「お迎えから最初の1週間」「給餌のあと」を通常のハンドリングを避ける時期として挙げているのは、ストレスの側の理由です。開けた直後に手を入れないことと、餌の匂いを手に残さないことは、サイズに関係なく効きます。

人に巻きついたときの資料は、見つかりませんでした

ここは注意して書きます。ボールパイソンが人に巻きついたときに何が起きるかを測った資料は、今回見た範囲では見つかりませんでした。締めつけの圧力について要旨が書いているのは、中型から大型のボールパイソンが、獲物に循環停止を起こすと報告されている圧力より有意に高い圧力を発揮できるというところまでで、比較の相手の種は特定できません。

いっぽう Penning ほか(2015年)は、アミメニシキヘビ・ビルマニシキヘビという別格の大きさの種について、「こうした多様な作用は、大型のコンストリクターがまれに人を傷つけるような場合に、認識して適切に処置することが重要になりうる」と結んでいます。ボールパイソンはこの文が想定している大きさの種ではありません。

国内では、環境省の「特定動物の選定基準等について(案)」が、大型ヘビ類について「巻き付いてからの締め付けが危険性の判断にあたり重要であるが、人間を獲物として認識して積極的に襲ってくるかどうか、人間を獲物にできる体のサイズまたは十分な締めつける力を持つかを考慮して判断する」という書き方をしています。この文は「体のサイズまたは十分な締めつける力」と書いていて、両方がそろうことを求めてはいません。危険性の判断に締めつけの力が入っている、というところを押さえてください。この資料と、ボールパイソンが特定動物に指定されていないことについては、当店の子どもがいる家庭の記事と賃貸の記事で扱っています。

そのうえで、資料から素直に言えることは1つです。圧力は胴の太さの関数として増えていきます(Penning と Dartez 2016年。ただし上で書いたとおり、これは平均としての傾向です)。小さいうちに扱いやすかったからといって、その扱い方をそのまま大きくなった個体に持ち越さない——ここが、この研究から出てくるいちばん実務的な線です。

巻きついた体をほどく手順そのものについては、当店が引ける資料がありません。力で引き剥がさない、という方向だけを書いておきます。当店の子どもがいる家庭の記事が体に巻き付ける形で持たせないと書いているのは、ほどく場面をそもそも作らないためです。ほどき方を調べるより、その持ち方を避けるほうが確実です。

首と肩に巻かせないのは、当店の運用です

上で引いた当店の方針——子どもにも大人にも体に巻き付ける形で持たせない——の理由は「外すのに時間がかかる持ち方を、咬傷や落下の場面で作らないため」です。研究結果から導いた方針ではなく、予防としての運用です。

首について、今回の資料が何も言っていないわけではありません。最初の節で書いたとおり、Boback ほか(2015年)の首にループが掛かった2試行では、反応が徐脈ではなく頻脈の側に出ていました。ただし著者ら自身が「この点についてわれわれの結果は限定的である」と断っています。ボールパイソンで、しかも人の首で何が起きるかを測った資料は、今回見た範囲ではありません。圧迫そのものの危険がどの程度かも、分かっていません。分かっていないことを前提に、わざわざその配置を作らない——そういう運用です。

締めつけは、ヘビの側にもコストがかかります

Penning と Dartez(2016年)の10回の給餌試験で、締めつけた群のほうが終了時点で有意に小さかったという結果は、締めつけが体の資源を使う行動である可能性を示唆します(要旨はそこまで書いていないので、これは当店の読みです)。Penning ほか(2015年)も冒頭で「締めつけはエネルギーと時間を使い、ヘビ自身が傷つくリスクを伴う」と書き(この部分はさらに別の文献からの引用です)、考察では「ヘビは自分の労力を加減して、最大未満だが十分な性能を使い、その過程でエネルギーを節約しているのかもしれない」という見方を示しています。ただし上で書いたとおり、対照群は鎮静をかけて手で給餌された個体なので、鎮静そのものの影響を切り分けることはできません。

家でこれを使う場面は、ほとんどありません。給餌の方法を変える根拠にはなりません。ただ、餌を食べたあとの個体をそっとしておく理由に、消化だけでなく捕食そのもののコストも含まれる、という見方はできます。

この記事が言っていないこと

  • ボールパイソンの締めつけの圧力の実測値は、1つも書いていません。Penning と Dartez(2016年)の全文を読めていないためです。書いたのは要旨にある「胴の直径だけが有意」「獲物の循環停止を起こす圧力より高い」という定性的な結論までです
  • 「窒息では死なない」とは書いていません。Boback ほか(2015年)の結論は「循環の停止が最も近接した死因かもしれない」であり、Moon と Mehta の整理では窒息は低い圧の側に候補として残っています
  • ボールパイソンが人に巻きついた場合を測った資料は、今回確認した範囲では見つかりませんでした。獲物側の循環を直接測った Boback ほか(2015年)の相手はラットです。圧力を測った Penning ほか(2015年)はラットとウサギを使っています。Penning と Dartez(2016年)の要旨は相手を「獲物(prey)」としか書いておらず、種を特定できません
  • Boback ほか(2015年)の数字はボールパイソンのものではありません。締めつけたのはボアコンストリクターで、獲物は麻酔したラットです。Penning ほか(2015年)の 55 kPa もアミメニシキヘビとビルマニシキヘビ、胴の直径で最大 18.0 cm までの個体の値です
  • 規模は小さいものです。飛びつきの2本はいずれも10匹。Boback ほかはラットを24匹用意していますが、解析に使われた匹数は指標ごとに違い、この記事の柱にしている「6秒で血圧が半分」は6匹ぶん(中心静脈圧は10匹、心拍は16匹)です。その6匹のうち1匹では、締めつけの開始時に逆に血圧が上がり、4.5分後に半分まで下がっています
  • 飼育下で締めつけが問題を起こす頻度の話はしていません。どの研究も発生率を調べたものではありません

まとめ

  • 締めつけで獲物が死ぬ最も近接した原因は、窒息ではなく循環の停止かもしれない、と考えられています。ただし著者らの結論は「かもしれない」で止まっており、窒息が候補から消えたわけではありません(Boback ほか 2015年、ボアコンストリクターと麻酔したラット)
  • 1つめの実験では、締めつけ圧のピークに有意だったのは胴の直径だけでした。性別・ループの数・ループの数と胴の直径の交互作用は有意ではありません。別の、孵化個体に10回給餌した実験では、経験による差が検出されませんでした(Penning と Dartez 2016年、要旨のみ)
  • 飛びつきの運動学的性能は、ほぼすべての指標で、最初の18か月のあいだに急速に落ちました。原因は著者も「明らかでない」としています(Ryerson 2020年、飼育下の10匹)
  • 家で効くのは1点だけです。孵化個体に10回給餌した実験では、経験の有無による締めつけ圧の差が検出されませんでした。いっぽう胴の直径は、平均としては圧力とともに増えます。小さいうちに扱いやすかったことを、大きくなった個体にそのまま持ち越さない——扱い方は、個体の大きさに合わせて見直してください

参考にした資料

対象種(Python regius)を扱った査読論文(いずれも要旨のみ)

  • Penning DA, Dartez SF.「Size, but not experience, affects the ontogeny of constriction performance in ball pythons (Python regius)」J Exp Zool A Ecol Genet Physiol 325(3):194–199(2016年)——締めつけ圧と体サイズ・性別・経験。実験は2つ(成長にともなうスケーリングと、10回の給餌による経験の効果)
  • Ryerson WG, Tan W.「Strike kinematics and performance in juvenile ball pythons (Python regius)」J Exp Zool A Ecol Integr Physiol 327(7):453–457(2017年)——生後6か月未満10匹、高速度カメラ
  • Ryerson WG.「Ontogeny of strike performance in ball pythons (Python regius): a three-year longitudinal study」Zoology (Jena) 140:125780(2020年)——10匹、出生から性成熟までの3年。2017年と同じ個体かどうかは要旨からは分かりません
  • Nielsen TP, Jacobsen MW, Wang T.「Satiety and eating patterns in two species of constricting snakes」Physiol Behav 102(1):110–114(2011年)——ボールパイソンとキイロアナコンダ。この記事では handling time の部分だけを使いました

別の種のヘビで測られた論文

  • Boback SM, McCann KJ, Wood KA, McNeal PM, Blankenship EL, Zwemer CF.「Snake constriction rapidly induces circulatory arrest in rats」J Exp Biol 218(14):2279–2288(2015年)——ボアコンストリクターと麻酔したラット。ヘビ9匹による18回の締めつけ試行を解析し、解析数は指標ごとに違う(体重の集計が15、末梢血圧が6、中心静脈圧が10)。全文を読みました
  • Penning DA, Dartez SF, Moon BR.「The big squeeze: scaling of constriction pressure in two of the world's largest snakes, Python reticulatus and Python molurus bivittatus」J Exp Biol 218(21):3364–3367(2015年)——アミメニシキヘビ48匹・ビルマニシキヘビ17匹。獲物はラットとウサギ。レッドアウト効果の提案。全文を読みました
  • Penning DA.「Quantitative axial myology in two constricting snakes: Lampropeltis holbrooki and Pantherophis obsoletus」J Anat 232(6):1016–1024(2018年)——キングスネークとラットスネークの体幹筋の定量研究。両種の締めつけ性能の差を説明する、有意な筋構造の差を同定できなかったと結論している

行政資料

  • 環境省「特定動物の選定基準等について(案)」(検討会に出された案。判断事項 A 毒性/B 爪牙等による殺傷力/C 物理的な圧力〈重さと運動能力による抵抗排除力〉/D 攻撃性向と、大型ヘビ類についての判断の書き方。2026年11月2日閲覧)

原典を読めていない資料

  • Moon BR, Mehta RS.「Constriction strength in snakes」Biology of the Boas and Pythons(2007年)pp.206–212 ——「低い圧は窒息を、中程度の圧は循環の停止を、極端に高い圧は脊椎の損傷を起こしうる」という整理、力が活動中の筋肉の断面積に比例するという見立て、最大 175 kPa という記録、そしてループの数が圧力に効くという(Penning らとは逆の)結果。いずれも Penning ほか(2015年)が要約・引用しているところから紹介しました
  • Moon BR.「The mechanics and muscular control of constriction in gopher snakes (Pituophis melanoleucus) and a king snake (Lampropeltis getula)」J Zool Lond 252:83–98(2000年)——締めつけ圧が、コンストリクターに食べられるマウスの収縮期血圧をかなり上回りうることを最初に示した論文。同じく Penning ほか(2015年)経由です

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