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ヘビが舌をチロチロ出す理由|ボールパイソンが舌で集めているもの

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ヘビが舌をチロチロ出しているのを見て、怒っているのか、何かを嫌がっているのかと検索された方が多いと思います。威嚇ではありません。ただし、裏返して「落ち着いているサイン」と読むこともできません。

しかもこの先は、よく聞く説明がそのまま正しいとは限りません。「舌先をヤコブソン器官に差し込んでいる」は研究の組み立てと違いますし、「二又だから左右で嗅ぎ分けている」も、いまのところ仮説です。それを直接ためして、支持しなかった実験もあります。

この記事では原典にあたって、分かっていること・まだ仮説のこと・よく見る誤りを分けます。そのうえで餌と手の扱いという、飼育で実際に効いてくる部分までつなげます。

目次

  • チロチロ出しているのは、匂いを集めているからです
    • 鼻からも嗅いでいます
  • 二又の意味——有力な仮説と、支持しなかった実験
  • 「舌先をヤコブソン器官に差し込んでいる」ではありません
  • ボールパイソンで報告されていること
  • 飼育で、匂いが効いてくる場面
    • ① 餌——人の匂いが付くのを避ける
    • ② 手——餌の匂いが付いたまま触らない
    • ③ 新しい環境——舌が増えるのは探索です
    • ハンドリング中のチロチロは、機嫌のものさしではありません
  • 舌を出さないときに、何を見るか
  • 当店 LilBalls での見え方
  • まとめ
  • 参考にした資料

チロチロ出しているのは、匂いを集めているからです

まず、確かなところから。あの動きは、空気中や地面・物の表面にある化学物質を舌に付けて、口の中にある別の嗅覚器官へ運ぶためのものです。

その器官がヤコブソン器官(鋤鼻器)です。口蓋——口の中の天井——の前のほうに、左右一対の小さな開口部があります。比較形態学の論文は、この器官を「前方で口蓋を貫いて開く管を通じてのみアクセスできる、対になった鋤鼻器」と表現しています(Filoramo & Schwenk 2009)。通り道が管しかない——この一点が、あとの話にずっと効いてきます。

そして、舌を出すのに口を開ける必要はありません。Merck 獣医マニュアルは、ヘビの身体検査について「口腔の検査はしばしば最後に回される。多くのヘビがそうした操作を嫌がるためである」と前置きしたうえで、こう続けます。

「しかし、口を開ける前であっても、舌が上唇の小さな溝から規則的に出入りしているのを観察すべきである」

上唇に切れ込みがあり、口を閉じたまま舌だけが出入りします。口を開けなくても外から見える所見——獣医師がそう扱っている、という意味です。

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舌の出入りで気分は読めません

チロチロそのものは威嚇の動作ではありません——主な役割は化学情報の収集です。ただし、裏返して「舌が出ているから落ち着いている」も言えません。情報を集めることと、警戒していることは両立します。舌の出入りだけでは、警戒しているか落ち着いているかは判断できません。気分を読むなら、姿勢・呼吸・体の張りを合わせて見ます。

鼻からも嗅いでいます

「ヘビは鼻では嗅がない」と書かれていることがありますが、これは言い過ぎです。ヘビには鼻から取り込んだ匂いを感じる主嗅覚系もあり、舌と鋤鼻器の系統と合わせて化学的な情報を取っています。

ガーターヘビで、主嗅神経と鋤鼻神経を別々に切って比べた実験があります(Halpern ら 1997)。報告されている結果は、はっきりしています。

  • 空気中の匂いがあると舌の回数が上がる。水蒸気では上がらない
  • 主嗅神経を切ると、その「回数が上がる」反応が失われる
  • 迷路で餌の匂いのする側を選べるが、主嗅神経を切ると選べなくなる

著者らは「空気中の匂い物質は主嗅覚系によって検出され、その検出は機能する鋤鼻系を必要としない」と結論しています。空気中の匂いの検出には主嗅覚系が関わっていて、舌を出すきっかけのほうを鼻が作っていることがあるという話です。

ただし「餌への行動が鼻だけで完結する」という意味ではありません。同じ要旨には、鋤鼻神経を切ると舌の回数の上がり方が弱まること、処置後しばらくすると餌の匂いの側を選ばなくなる個体があることも書かれています。どちらか一方ではなく、両方が働いています。対象はガーターヘビで、ボールパイソンで同じ実験が行われたわけではありません。

二又の意味——有力な仮説と、支持しなかった実験

では、なぜ先が二又なのか。ここには有名な仮説があります。

1994 年の Science 誌に載った Kurt Schwenk の論文「Why snakes have forked tongues」は、二又の舌を「獲物や同種個体のフェロモンの痕跡をたどるために使われる、化学感覚のエッジ検出器」とする仮説を示しました。要旨の言い方はこうです。

「化学的な勾配に沿った 2 点を同時にサンプリングできることが、痕跡の位置を瞬時に評価する基礎を与える」

左右を比べるという点では、両耳で音の方向を判断するのになぞらえられます。ここまでは、ほとんどの解説がそう書きます。ただし、これは仮説として提示されたものです。

そして、その仮説を直接ためして、支持しなかった実験があります。

ガラガラヘビ(Crotalus oreganus)の鋤鼻神経を片側だけ切って、獲物の匂いの跡をたどらせた研究です(Parker, Young & Kardong 2008)。左右を比べて跡をたどっているのなら、片側を落とせば追跡は乱れるはずです。

結果は「測定した 7 つの追跡パラメータのいずれにも変化が見られなかった」。著者らは「獲物の追跡行動に適用される限りにおいて、エッジ検出仮説を支持する結果は得られなかった」と書き、代わりに「深く分かれた舌は、匂いをサンプリングする面積を増やすための化学感覚上の特殊化であり、ヘビや一部のトカゲは化学的な跡の濃度だけを検出しているのかもしれない」という可能性を挙げています。

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「ステレオで嗅いでいる」は、まだ確定していません

この実験 1 本でエッジ検出仮説が全面的に否定されたわけではありません。対象はガラガラヘビ 1 種で、調べたのは「獲物の跡をたどる」場面だけです。繁殖期に同種の跡をたどる場面までは扱っていません。ただ、「二又だから左右で嗅ぎ分けている」を既成事実のように書くのは、現時点では正確ではありません。当店もそう書きません。

なお Schwenk は、二又の舌が「有鱗類のなかで少なくとも 2 回、4 回の可能性もあるが、独立に進化した」とも書いています。別々の系統が同じ形にたどり着いたということで、それだけ効く仕掛けだったのだろう、という読み方はできます。

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「だからボールパイソンは探し回る」ではありません

同じ論文は「より高位の分類階級では、二又の舌はつねに広く探し回る採餌様式と結びついている」とも書いています。ここで言っているのは分類群のレベルの話で、個々の種がみな探し回るという意味ではありません。少なくともボールパイソンは、1 日の大半を休んで過ごします。二又の舌はその系統が受け継いできた装備であって、今の暮らし方をそのまま説明するものではありません。

「舌先をヤコブソン器官に差し込んでいる」ではありません

日本語の解説でよく見かけるのが、二又の先が口の天井にある 2 つの穴にそれぞれ刺さるという図です。

研究はそういう組み立てになっていません。先ほどの Filoramo & Schwenk 2009 が扱っているのは「第 1 段階の輸送」、すなわち「舌先から鋤鼻器の開口部へ、化学物質を含んだ液体を運ぶこと」の仕組みです。運ばれるのは舌ではなく、舌先に付いた液体のほうという前提で議論が組まれています。

その運び方には、もともと舌下ヒダ説がありました(Gillingham & Clark 1981。進化した系統のヘビをもとにした仮説)。口の底にある舌下ヒダが、化学物質を鋤鼻器まで直接運ぶ、という説です。

Filoramo & Schwenk は、これに代えて液圧によるしくみを有鱗類(トカゲとヘビ)全体に提案しています。口を閉じるときに舌がピストンのように働いて周囲の液体を加圧し、「ほとんど瞬間的に」開口部へ押し上げる、というものです。ただし実際に形態を調べたのは「二又で引き込める舌を持たないトカゲ」で、舌下ヒダ説を否定したと書いているのもその範囲に限られます。ヘビで直接検証したわけではありません。

ヘビの側からの材料もあります。ガーターヘビで舌下ヒダの前方突起を焼灼した研究は、処置したあとも餌由来の刺激への攻撃反応が保たれ、標識した物質の鋤鼻器への到達も対照と区別がつかなかったとして、「前方突起は、鋤鼻系の機能を必要とする行動にも、鋤鼻器への匂い物質の送達にも、不要である」と結論しています(Halpern & Borghjid 1997)。この結果は、ガーターヘビで前方突起が送達に必須だという説明を支持しません。ただし、液圧のしくみを証明したものでもありません。

ボールパイソンで直接確かめられたわけではないので、この記事も「こちらが正解」とは書きません。ただ、どの説を取っても、舌先そのものが管に入るという話にはなりません。覚えておく値打ちがあるのはそこだけです。

舌のチロチロについて分かっていること・まだ仮説のこと・よく見る誤りを3列に並べた図。分かっているのは、口を閉じたまま上唇の溝から出入りすること、集めるのは空気中や地面・物の表面にある化学物質であること、器官へ運ばれるのは舌先に付いた液体で通り道は口蓋に開く管だけであること。まだ仮説なのは、二又の先で左右を嗅ぎ分けるという説(Schwenk 1994)で、ガラガラヘビの追跡実験はこれを支持しなかった(Parker ら 2008)。よく見る誤りは、二又の先が口の天井の穴に刺さる、チロチロそのものが威嚇や怒りのサイン、ヘビは鼻では匂いを嗅がない、回数だけで健康状態が分かる、の4つ

ボールパイソンで報告されていること

ここまではヘビ全般の話でした。ボールパイソンそのものを対象にした研究もあります。

1991 年の Journal of Ethology に載った Cooper の論文(9 巻 9〜23 ページ)です。要旨によれば、報告されているのは次の 2 点です。

  • マウスの体表に由来する化学物質に対して、コロン(香水)や蒸留水より舌の回数が多く、咬みつく頻度も高かった
  • 咬みついたあとに舌の回数が上がった(poststrike elevation in tongue-flicking rate)

読者にとって意味があるのは、「餌の匂いを、ほかの匂いと区別している」という 1 点めです。対照に香水が使われていたというのが、このあとの飼育の話に効いてきます。なおここで紹介した結果だけから、野生でどう狩っているかまでは説明できませんので、その筋書きは書きません。

もうひとつ、Susquehanna 大学で行われた学部の研究(Brianne Yarger)が、ボールパイソンに匂いと熱を選ばせる二者択一の実験をしています。査読論文ではないので強い根拠にはしませんが、報告されている内容は「熱とラットの匂いはそれぞれ単独でも同じくらい誘引したが、両方を組み合わせたときがいちばん強かった」というものです。

ボールパイソンは唇のまわりにピット器官を持っていて、そちらは熱を拾います。舌が化学物質を集めて鋤鼻系がそれを処理し、ピット器官が「どこが温かいか」を取っているという役割分担はありますが、「両方が揃わないと獲物だと分からない」とまでは、この実験は言っていません。ピット器官のほうは別の記事にまとめています。

飼育で、匂いが効いてくる場面

ここからは家の中の話です。「ヘビは化学的な情報で世界を見ている」を飼育に落とすと、3 つの場面になります。

匂いで世界を見る相手に飼い主ができることを3つ並べた図。餌はトングで扱う(人の匂いによる汚染を防ぐため、RVCのケアシート。トングで与えるのはRSPCAも同じ)、餌を扱ったあとのハンドリングは避け先によく手を洗う(餌の匂いがすると咬もうとすることがある、RSPCA)、新しいものには舌が増えるがそれ自体は環境が足りている証拠にはならない。あわせて、回数だけで健康は判断せず、開口呼吸や鼻からの分泌物が重なるときは受診する、確認のために口をこじ開けない、という注意を添えた図

① 餌——人の匂いが付くのを避ける

英国王立獣医大学(RVC)のロイヤルパイソンのケアシートは、解凍した餌の話に続けて「人の匂いによる汚染を防ぐため、扱うことは避けるべきである」と書いています(RVC, 2022 年 12 月改訂)。原文は「扱う(handling)」で、素手かどうかの区別はしていません。

RSPCA も「餌はトングで差し出す」としています。ピンセットやトングを使う理由は、咬まれないためだけではない——というのが、2 つを並べたときの読み方です。

ただし「人の匂いが付くと食べなくなる」ことを実験で示した資料ではありません。食いが落ちたときに環境要因の筆頭はやはり温度で、そちらは適温の記事と拒食の原因と対策にまとめてあります。匂いの話は、そのあとに来るお金のかからない見直し項目のひとつとして扱ってください。

解凍のやり方は姉妹店の解凍方法の記事にまとめてあります。餌そのものの話はそちらに譲ります。

② 手——餌の匂いが付いたまま触らない

裏返しも成り立ちます。餌を触った手でそのままケージに手を入れると、「獲物の匂いがする何か」が入ってきたことになります。

RSPCA はこれを明示しています。「餌を扱ったあとのハンドリングも避けること。ヘビが餌の匂いを嗅ぎつけて咬もうとすることがあるため——先によく手を洗うこと」

Cooper の実験で対照に使われたのが香水だったことを思い出してください。報告されているのは、マウス由来の刺激に対して、対照のコロンより強く反応したということです。手を洗う効果そのものを測った研究ではありませんが、落とすべきものが何かは、はっきりしています。

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手洗いは、人の側の衛生のためでもあります

RVC は「爬虫類を扱ったあとの衛生は重要である。一般的には、石けんで手を洗えば十分である」としています。サルモネラ対策としての手洗いは、餌に触ったかどうかに関係なく必要です。

③ 新しい環境——舌が増えるのは探索です

お迎え直後、レイアウトを変えたあと、シェルターを新調したあと。舌を出す回数が目に見えて増えることがあります。

これは「落ち着かない=悪いこと」とは限りません。情報が更新されたので、集め直しているという読み方ができます。ボールパイソン 35 匹を撮影した研究のエソグラムにも、「カメラに近づいて口で触れ、舌で探る」が独立した項目として立っています(Hollandt ら 2021, PLoS ONE)。

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この研究は、舌の回数を数えたものではありません

Hollandt らが測っているのはその行動に費やされた時間の割合で、舌を出す回数そのものではありません。しかもこの行動が記録されたのはラックの中だけで、レイアウトを組んだテラリウムでは観察されませんでした。著者らはこれを適切な飼育環境の証拠とは見なさず、「刺激の乏しさを埋め合わせるために、どんな刺激でも使っている」と解釈しています。「新しいものに舌を出す=環境が足りている」ではないということです。研究の内容と限界はシステムラックの記事に、賛否の両側を並べて書いてあります。

お迎え直後に落ち着かない状態が続くこと自体は、別の問題です。触らずに待つ期間の考え方は検疫の記事にあります。

ハンドリング中のチロチロは、機嫌のものさしではありません

持ち上げたとたんに舌が速くなるのを見て、不安になる方がいます。舌の出入りだけでは、警戒しているか落ち着いているかは判断できません。主な役割は化学情報の収集で、気分の表示ではないからです。

警戒や防御の側は、姿勢のほうに出ることがあります——首を S 字に引く、固く巻く、体を張り詰める。防御の姿勢の記事に並べてあります。当店が人に慣れるのかを扱った記事に書いたとおり、ひとつのサインだけで決めないのが原則です。触り方そのものは持ち方の記事にあります。

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手を洗えば給餌直後に触ってよい、ではありません

RSPCA は「給餌後 48 時間はハンドリングを待つこと。さもないと餌を吐き戻すことがある」としています。手洗いは餌の匂いの話で、給餌後に待つ時間とは別の話です。

舌を出さないときに、何を見るか

逆の相談もあります。「最近、舌をあまり出さない」です。

一時的に減ること自体は珍しくありません。眠っているとき、脱皮前で動きが鈍いとき、触られた直後に固まっているとき。回数だけで健康状態は判断できません。見るのは、普段との変化を活動性・食欲・体重・呼吸・口のまわりの状態と合わせたときにどう見えるか、です。

とはいえ、舌が出ているかどうかは、触らずに外から見える数少ない所見でもあります。RSPCA は健康なロイヤルパイソンを「活発で、好奇心がある。頻繁に舌を出し、澄んだ明るい目をしている」と書いています。購入前にどこを見るかは、当店の健康な個体の見分け方にまとめました。

そして口のまわりに別の所見が重なるときは、舌の話ではなくなります。開口呼吸・鼻からの分泌物・呼吸音なら呼吸器感染症の記事、口の合わせ目の汚れや腫れならマウスロットの記事に、見方と受診の線をまとめてあります。

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確認のために、口をこじ開けないでください

口腔の検査は、嫌がる個体が多いので獣医師でも最後に回す部分です。家で器具を使って開けると、顎・歯・粘膜を傷めるおそれがあります。すでに炎症があればなおさらです。見るのは自然に口を開けたときに見えたものだけにして、外から判断がつかないならそこで止めて相談してください。開口呼吸や呼吸困難があるときは、様子を見ずに直ちに病院へ連絡を。

爬虫類を診られる動物病院の探し方は別の記事にまとめてあります。先に探しておくほうが、起きてから探すより確実です。

当店 LilBalls での見え方

当店は多頭をラックで管理しています。扉を開けた瞬間にいっせいに舌が出る、ということは起きません。反応するのは、たいていその個体の周りで何かが変わったときです——掃除で床材を替えた、水を交換した、隣の個体を出した。

給餌の日はまた別です。部屋に餌の匂いが入った時点で、動き出す個体がいます。開ける前から分かっている、という言い方が近いです。これが舌によるものか鼻によるものかは、当店には分けられません——先に挙げたガーターヘビの実験では、空気中の匂いの検出に主嗅覚系が関わることが示されています。

いずれにせよ、当店は給餌の前後で手の扱いを変えています。餌に触れた手でケージに手を入れない、というだけのことですが、咬傷につながるのはここです。

まとめ

  • チロチロは、化学物質を集めて口の中の鋤鼻器へ運ぶ動作。口を閉じたまま、上唇の溝から出入りする
  • 気分のものさしではない。威嚇の動作ではないが、「出ているから落ち着いている」とも言えない
  • 鼻でも嗅いでいる。ガーターヘビでは、空気中の匂いの検出に主嗅覚系が関わることが示された(Halpern ら 1997)
  • 「二又だから左右で嗅ぎ分けている」は有力な仮説だが、確定していない。ガラガラヘビの追跡実験は支持しなかった(Parker ら 2008)
  • 舌先を器官に差し込んでいるわけではない。運ばれるのは舌先に付いた液体で、運び方はボールパイソンで直接確かめられていない
  • ボールパイソンでは、餌の体表の匂いを香水や水と区別できることが報告されている(Cooper 1991)
  • 飼育で効くのは 3 点。餌はトングで/餌を扱ったあとは手を洗ってから触る/新しいものには舌が増える
  • 回数だけで健康は判断できない。見るのは、ほかの所見と合わせたときにどう見えるか

化学的な情報で世界を見ている相手に対して、こちらができるのは匂いを散らかさないことです。餌と手の扱いを分けておく——まずはそこからで足ります。

参考にした資料

  • Schwenk K. Why snakes have forked tongues. Science 263:1573–1577 (1994)
  • Parker MR, Young BA, Kardong KV. The forked tongue and edge detection in snakes (Crotalus oreganus): an experimental test. J Comp Psychol 122(1):35–40 (2008)
  • Filoramo NI, Schwenk K. The mechanism of chemical delivery to the vomeronasal organs in squamate reptiles: a comparative morphological approach. J Exp Zool A Ecol Genet Physiol 311A(1):20–34 (2009)
  • Gillingham JC, Clark DL. Snake tongue-flicking: transfer mechanics to Jacobson's organ. Can J Zool 59:1651–1657 (1981)
  • Halpern M, Borghjid S. Sublingual plicae (anterior processes) are not necessary for garter snake vomeronasal function. J Comp Psychol 111(3):302–306 (1997)
  • Halpern M ら. The role of nasal chemical senses in garter snake response to airborne odor cues from prey. J Comp Psychol 111(3):251–260 (1997)
  • Cooper WE Jr. Discrimination of integumentary prey chemicals and strike-induced chemosensory searching in the ball python, Python regius. Journal of Ethology 9:9–23 (1991)
  • Hollandt T, Baur M, Wöhr AC. Animal-appropriate housing of ball pythons (Python regius) — Behavior-based evaluation of two types of housing systems. PLoS ONE (2021)
  • Yarger B. Chemosensory and temperature-based prey discrimination in ball pythons. Susquehanna University(学部研究。査読を経ていません)
  • Clinical Procedures for Reptiles. Merck Veterinary Manual
  • Royal python. RSPCA
  • Royal python care and advice. Royal Veterinary College(2022 年 12 月改訂)
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