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飼育

ボールパイソンの寿命の最長記録は?|47年6か月は在園期間、「62歳」は推定年齢です

eyecatch

「ボールパイソンは何歳まで生きた記録があるのか」。検索すると、だいたい2つの数字に行き当たります。47年と62歳です。

調べてみると、この2つは性質の違う数字でした。先に結論を3つ書きます。

47年6か月は、フィラデルフィア動物園のメスの在園年数です。1945年3月26日に園に来て、1992年10月7日に死亡。飼育下の長寿記録を集めた表にそう載っています。園に来てから死ぬまでの年月で、搬入時に何歳だったかは、その表に書かれていません。

62歳は、セントルイス動物園の個体番号361003の推定年齢です。1961年に個人の飼育者から園へ譲られたメスで、2020年7月23日に7個の卵を産みました。「62」は搬入時に推定された年齢(約3歳)に、園にいた年数を足した数です。動物園自身の発表は「50歳を超える」、CNN は「少なくとも62歳と見られる」という書き方でした。

そして、どちらの個体についても、参照できた資料に孵化した日の記録がありません。ボールパイソンの最長寿記録として流通しているのは、在園期間の記録と推定年齢の報道です。混ぜずに読む必要があります。

以下、数字の出どころを1つずつたどります。飼育の解説で目安とされる20〜30年は別の数字なので、そこも分けて書きます。

目次

  • 出てくる数字は2つ。47年6か月と「62歳」
  • 47年6か月——フィラデルフィア動物園のメス
    • 47年6か月は、取得日から死亡日までと一致します
  • 「62歳」——セントルイス動物園の361003
    • 動物園の発表は「50歳超」、報道は「62歳」
  • 「47年」の出どころは、1つの集計に行き着きます
  • 高齢での産卵の記録——ただし、例外として扱われています
  • 野生で何年生きるのかは、この記録からは分かりません
  • 記録と目安を混ぜない。飼育の解説で示されるのは20〜30年です
  • では、家の個体は何年生きるのか
  • 当店 LilBalls の考え方
  • まとめ
  • 参考にした資料

出てくる数字は2つ。47年6か月と「62歳」

先に、何を見ているのかをはっきりさせます。ボールパイソンの長寿記録として引かれる数字は、出どころの違う2つです。

  • 47年6か月(=47.5年)フィラデルフィア動物園のメス。個体番号300411。1945年3月26日に取得、1992年10月7日に死亡。飼育下の長寿記録を集めた表に、そう記載されています

  • 約62歳セントルイス動物園のメス。個体番号361003。1961年に個人の飼育者から園へ譲られたと報じられています。2020年7月23日に7個の卵を産み、「62歳のヘビが産卵」として世界中で伝えられました

この2つは、数えているものが違います。前者は園にいた年月、後者は搬入時の推定年齢を足した年齢です。同じ「ボールパイソンの長寿記録」として並べると混ざるので、まず分けておきます。

「47年6か月」と「62歳」が何を数えた数字かを2列で並べた図。左のフィラデルフィア動物園のメス(個体番号300411)は、長寿記録の集計に1945年3月26日取得・1992年10月7日死亡と記載があり、その差し引きが47年6か月。搬入時の年齢は表に書かれていない。右のセントルイス動物園のメス(個体番号361003)は、報道によれば1961年に個人の飼育者から園へ譲られ、そのときの推定年齢が約3歳、2020年7月の産卵までの在園年数が約59年で、足して約62歳と報じられた。動物園は50歳を超えると発表しており、報道には約62歳・少なくとも62歳という推定もあるという注記がある。どちらの個体も、参照した資料に孵化した日の記録がない。

2つの数字が何を数えているか。どちらの個体についても、参照した資料に孵化した日の記録はありません。

47年6か月——フィラデルフィア動物園のメス

いちばん広く引かれている数字です。AnAge の Python regius の項は、最大寿命を「47.5年(飼育下)」とし、出典として Frank & Kate's Web Page——飼育下の爬虫類・両生類の長寿記録を集めている Slavens の集計を挙げています。

Frank & Kate Slavens「Reptiles and Amphibians in Captivity - Longevity - Snakes」の Python 属のページを開くと、Python regius の行がこうなっています(当店の訳)。

「PHIP|個体番号300411。47年6か月。メス。1945年3月26日に取得。1992年10月7日に死亡」

PHIP は同じサイトのコード表で Philadelphia Zoological Gardens(フィラデルフィア動物園)と引けます(コード表に載っている連絡先は、1990年代当時の同園の爬虫類キュレーターです)。日付まで入っているので、搬入日と死亡日から計算できる記録です。

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「Sample size: Large」は、47.5年を支えた個体数のことではありません

同じ項には Data quality: Acceptable、Sample size: Large と書かれています。AnAge の用語の定義を読むと、それぞれ次の意味です。

Sample size は、その種のサンプル規模の区分です。飼育下の記録については「国際種情報システム(ISIS)をもとに推定した」とあり、large は「1000個体超」の区分。47.5年という値を何個体が支えているかを示すものではありません。

Data quality は、長寿データへの信頼度の評価です。原出典の信頼性、サンプル規模、飼育下で研究・繁殖されているか、矛盾する報告がないか、などを見て付けられます。区分は low / questionable / acceptable / high の4段階で、acceptable の上に high があります。

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獣医療側の資料も「47年・フィラデルフィア動物園」を引いています

動物看護師向けの解説記事 VetFolio「Ball Python Care」 は、冒頭近くで「ボールパイソンは最も長生きしたヘビの記録を持つ。フィラデルフィア動物園で記録された47年である」と書いています。ただしこの記事が付けている出典は 1995年の飼育マニュアル(Klingenberg, de Vosjoli, Barker & Barker『The Ball Python Manual』)で、園名と年数は Slavens の行と一致しますが、そのマニュアルが何を典拠にしたのかまでは確認できていません。少なくとも独立した別の観察として確かめられたものではありません。

47年6か月は、取得日から死亡日までと一致します

ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。この47年6か月は、年齢ではありません。

確かめ方は単純で、載っている日付を引き算するだけです。

  • フィラデルフィア動物園の3004111945年3月26日 → 1992年10月7日 = 47年6か月11日。表の記載は「47年6か月」

  • ブルックフィールド動物園の1968年搬入個体1968年1月25日 → 1986年5月3日 = 18年3か月8日。表の記載は「18年3か月」

  • 同園の1974年搬入個体1974年11月4日 → 1986年8月19日 = 11年9か月15日。表の記載は「11年9か月」

3件とも、取得日から死亡日までの年月が、そのまま先頭の数字になっています。ページの書式の説明も、載せる項目として「コード、年数、月数、取得日、野生由来か飼育下生まれか、成体か幼体か、性別、生存中か死亡か」を挙げています(年数の出し方そのものは、明文では定義されていません)。

つまり日付を照合できる3件では、載っている年月は取得から死亡までの期間と一致します。そして47年6か月を孵化からの年齢とする根拠は、この表にはありません。

そして、搬入時の年齢が入る欄はありません。代わりに「成体で取得」という記載が入る行があり、Python regius の8件のうち4件がそうです。

  • 「成体で取得」と書かれている行セントルイス動物園の個体は「1961年8月17日に成体で取得。野生由来」、ブルックフィールド動物園の1968年搬入個体も「成体で取得。野生由来」。この書き方の行は、搬入前にすでに生きていた年数が分かりません。日付を照合できたブルックフィールド動物園の1968年搬入個体では、表の年数は取得から死亡までで、搬入前の期間は入っていません

  • 47年6か月の行は、どちらの欄も空ですフィラデルフィア動物園の300411の行は、年数・性別・取得日・死亡日だけ。成体か幼体か、野生由来か飼育下生まれかも書かれていません。したがって「47年6か月のあいだ飼育されていた」は言えますが、「47歳6か月で死んだ」は言えません——本当の年齢は、これより上かもしれません

Slavens に掲載されたボールパイソンの飼育下の記録8件を、点で年数を示した図。フィラデルフィア動物園の1945年搬入個体が47.5年で最長、セントルイス動物園の1961年搬入個体が35.3年、フィラデルフィア動物園の搬入年不明の個体が30.5年、ブルックフィールド動物園の1968年搬入個体が18.3年、フォートワース動物園の1972年搬入個体が15.1年、ブルックフィールド動物園の1974年搬入個体が11.8年、個人コレクションの1978年搬入個体が11.0年、サクラメント動物園の1982年搬入個体が9.9年。図には「原表の年数をそのまま表示している。日付を照合できる3件では、取得から死亡までの期間と一致する。孵化からの年齢を比べた図ではない。8件のうち4件には成体で取得と書かれており、生存中・最終報告時点の記録も含む」という注記が入っている。

Slavens に載っている Python regius の8件。原表の年数をそのまま並べています。

並べてみると、47年6か月は飛び抜けています。2番目が35年4か月、3番目が30年6か月で、残りは20年を切ります(生存中・最終報告時点のものも混じっています)。ここに載っているのは「報告された記録」だけで、報告されていない個体がどれだけいたかは分かりません。長寿記録は、母集団の上端ではなく、「記録を残した人がいた個体」の上端です。

「62歳」——セントルイス動物園の361003

もう1つの数字です。2020年、セントルイス動物園の爬虫類館で、1匹のメスのボールパイソンが7個の卵を産みました。この個体に名前はなく、個体番号361003で呼ばれています。

報道が伝えている来歴は、「1961年に個人の飼育者から動物園へ譲られた」(CBS News(2020年9月11日)、地元紙の報道を引用)、「1961年から園にいる」(CNN(2020年9月11日))までです。

いっぽう、先ほどの Slavens の表には、同じ園の行があります。

「STLM|35年4か月。メス。1961年8月17日に成体で取得。野生由来。生存中」

STLM はコード表で St Louis Zoo。園・性別・搬入年(1961年)が、2020年に報じられた361003と一致します。集計当時(1990年代後半)の同じ個体の記録に対応する可能性はあります。ただし表に個体番号が入っていないので、照合はできません。

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「8月17日」「成体で取得」「野生由来」は、表にしかない情報です

361003 を取材した報道が書いているのは年(1961年)と、個人の飼育者からの譲渡までで、日付も、成体だったかどうかも、野生由来かどうかも書かれていません(個人の飼育者からの譲渡と野生由来は両立しますが、報道はそう書いていません)。この記事でも、表の行の話と、361003 の話を混ぜないように書き分けています。

動物園の発表は「50歳超」、報道は「62歳」

ここは、伝えられ方が違います。

動物園自身の発表は「50歳を超える」でした。セントルイス動物園の2020年9月8日の投稿は、「7月23日、爬虫類館で驚くことが起きました——ボールパイソンが産卵したのです! このメスは50歳を超えており(動物園で記録されている中で最も高齢のヘビです)、15年以上オスと一緒にいません」と書いています(当店の訳)。同じ日の Reptiles 誌(2020年9月8日) も、園の Facebook 投稿を引いて「50歳のボールパイソン」と伝えました(この投稿では、産卵の場所をチャールズ・H・ヘスル爬虫類館としています)。

「62歳」は、そこから計算された数字です。News For Kids(2020年9月18日)の説明がいちばん具体的で、「彼女は1961年に、およそ3歳のときに動物園へ譲られた。だから約62歳になる」としています。つまり搬入時の推定年齢(約3歳)+在園年数(約59年)=約62歳。いっぽう CNN(2020年9月11日) は、同じ個体を「少なくとも62歳と見られる」と書いています。

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同じ出来事が「50歳超」と「62歳」で伝えられました

この2つは食い違ってはいません。在園年数だけでも約59年なので、「50歳を超える」は「約62歳」とも両立します。幅のある言い方と、推定を足した数が並んでいるという関係です。この記事で「約62歳」と書くときは、推定を足した数という意味で使います。

搬入時の推定を「約3歳」と具体的に書いているのは、Fox News(2020年9月11日。AP 協力)(地元紙 St. Louis Post-Dispatch を引用)と News For Kids です。CNN は搬入年だけを書き、年齢は「少なくとも62歳と見られる」としています(CBS の見出しは「62歳」です)。

「47年」の出どころは、1つの集計に行き着きます

「47年」はいろいろな場所で見かけますが、たどれるのは1本の線です。AnAge が出典に挙げているのは Slavens のウェブ版で、そこに載っている PHIP の行が、当店が確かめられたこの数字の出どころです。

  • Slavens の集計(書籍とウェブ)報告元は236施設と425の個人コレクション(合わせて661)。これはサイト全体(爬虫類・両生類の全種)の数です。AnAge が最大寿命47.5年の出典にしているのは、このウェブ版で、当店が確認できた経路はここまでです

  • 同じ表には、1977年の集計に由来する行もあります「30年6か月。オス。取得日不明、成体で取得。野生由来。フィラデルフィア動物園にて、Bowler 1977 に掲載」。47年6か月のメスとは別個体です。この表が複数の年代の報告を集めたものだと分かります(コード表には Snider と Bowler の1992年の第2版、Biegler の1966年の集計も挙がっています)

つまり「47年」は、確かめられる範囲では1つの記録にたどり着く数字です。値そのものを疑う理由はありません——取得日と死亡日が入った、むしろ丁寧な記録です。ただし「複数の資料が独立に一致している」とは言えません。獣医療の解説記事が引いている47年も、出典は1995年の飼育マニュアルで、同じ園・同じ年数です。

高齢での産卵の記録——ただし、例外として扱われています

長寿の話をしていて目を引くのが、高齢での産卵です。先に書いておくと、資料はこれを「ふつうのこと」としては扱っていません。

VetFolio「Ball Python Care」は、「ボールパイソンは繁殖可能な期間が長い。セントルイス動物園で飼われていたメスのボールパイソンは、35歳で一腹の有精卵を産んだことで知られている」と書いています(出典は同じ1995年の飼育マニュアル)。この「35歳」がどう算定されたのかも、361003と同じ個体なのかも、参照した資料からは確認できません。なお Slavens の表の「35年4か月」は在園年数なので、数字は同じ35でも別のものを指しています。

そして2020年の7個です。15年以上オスと同居していないメスが、卵を産みました。園の説明では、2個を遺伝子解析用のサンプルに回し、3個を孵卵器に残し、2個は発生が続きませんでした。Fox News(2020年9月11日。AP 協力)で、同園の爬虫類館マネージャーはこう述べています——「卵を産んだヘビとしては、間違いなく私たちが知るかぎり史上最高齢でしょう」。同じ記事は、ボールパイソンが無性生殖で殖えることを「異例だが、まれではない」としています。

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「オスがいないのに卵が発生した」の読み方には、先に決着が必要な分岐があります

単独飼育のメスが発生した卵を産んだとき、考えられる筋は2つあります——単為生殖か、過去の交尾による精子貯蔵です。この2つは隔離期間の長さでは区別できません。

361003 の場合、CNN(2020年9月11日) によれば2009年にもクラッチを産んでおり(孵化せず)、1980年代後半から1990年代初めにはオスと接触していた可能性がある——当時は掃除のあいだヘビをバケツにまとめて入れていたためです。同マネージャーは、確認できた精子貯蔵の最長記録は接触から7年だったとも述べています。つまり精子貯蔵だとすれば、それ自体が記録を大きく更新する話になります。

単為生殖と精子貯蔵を見分けられるのは遺伝子解析だけで、その手法にも向き不向きがあります。ボールパイソンで報告された症例と、見分け方の詳細は当店の単為生殖の記事にまとめています(そこで挙げている約6年=71か月の精子貯蔵の記録はガラガラヘビのもので、ニシキヘビの数字ではありません)。

361003 の卵について、当店は遺伝子解析の結果を公表した資料に行き当たりませんでした。近年の記事でも「大学の研究パートナーと協力して、本当に単為生殖だったのかを確かめようとしている」という書き方で止まっています。

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これは「産卵が起きた記録」で、高齢個体の繁殖をすすめる資料ではありません

ここに挙げたのは卵が産まれたという事例であって、高齢で繁殖させることの安全性や適齢を調べた資料ではありません。当店は、この記録を高齢個体の繁殖を勧める根拠にしません。同じ VetFolio「Ball Python Care」 も、繁殖は雌雄どちらにとっても代謝的に高くつき、負担が大きいと書いています。

この個体は2021年に死亡したと IFLScience が書いています。ただしその根拠は「Reddit で共有された、動物園のゲスト対応部門からのメール」とされており、動物園自身の発表は確認できませんでした。

野生で何年生きるのかは、この記録からは分かりません

ここまでの数字はすべて飼育下のものです。AnAge の最大寿命も「47.5年(飼育下)」と明記されています。

野生の寿命を出すには、個体を追跡したり年齢を推定したりして、生存率を解析する必要があります。爬虫類・両生類でこれを横断的に集めた Reinke ら(2022年, Science 376:1459-1466) は、野生の107個体群・77種を解析したうえで、冒頭にこう書いています(当店の訳)。

「野生における死亡率の比較研究は、老化の進化を理解するうえで欠かせない。しかし変温性の四肢動物は、進化仮説の検証に向いているにもかかわらず、この比較研究の全体像のなかで十分に扱われていない」

同じ研究は、系統と体の大きさの影響を調整したうえで、変温動物では老化の速度が内温動物より多様で、老化がほとんど検出できない例が系統を広く横断して見られるとも報告しています。ただしボールパイソンの野生個体の寿命を答えるものではありません。当店が今回たどれた範囲では、この種の野生個体の寿命を測った資料には行き当たりませんでした。

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当店の記事のあいだでも、ここは揃っていません

当店の飼育法の記事には「野生では約10年といわれますが」という記述があります。いっぽう寿命と成長過程の記事は「野生下でのボールパイソンは、測定方法が難しく明確にわかっていない」としています。今回たどれた資料から言えるのは後者です。野生個体の寿命を測った一次資料に行き当たらなかったので、この記事では「約10年」を採りません。

記録と目安を混ぜない。飼育の解説で示されるのは20〜30年です

最長記録の話をしたあとなので、ここは強めに書きます。47年や62歳は、見込みではありません。

VetFolio「Ball Python Care」は、47年の記録を書いた直後に「飼育下で典型的な寿命は20年から30年であり、この点でボールパイソンは重い責任を伴う動物で、衝動買いするものではない」と続けています。ただしこの幅も資料によって割れます——News For Kids は「ふつうボールパイソンは30年か40年しか生きない」、IFLScience は「飼育下の平均は最大で30年」と書いています。平均を計算した資料は見当たりません。20〜30年は飼育の解説で示される目安で、平均値でも、保証でも、上限でもありません。

当店の寿命と成長過程の記事も飼育下を20〜30年とし、ボールパイソンとはの記事では、20年以上の付き合いになることを飼う前に知っておく項目として挙げています。

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この話は、当店の記事にも短く入っています

ボールパイソンとはの記事には「最高齢は62歳」として、1961年に推定3歳で来園し2020年時点で推定62歳、確実な記録として広く引用されるのは47年ほどという囲みがあります。この記事はそこを広げたもので、加わったのは「47年6か月は在園期間であること」「動物園自身の発表は50歳超だったこと」「AnAge の47.5年の出典が Slavens の集計であること」の3点です。

整理すると、47年6か月は1個体の飼育記録、20〜30年は飼育の解説で示される目安です。迎えるときに見ておくのは後者で、進学・就職・引っ越し・家族構成の変化をまたぐ年数になります。目安を超えて飼育が続く可能性も含めて考えてください。20年は、ペットとしてはかなり長いほうです。

では、家の個体は何年生きるのか

正直に書きます。この記事で並べた記録からは、答えが出ません。

長寿記録の表には、その個体がどう飼われていたかが書かれていません。温度、湿度、餌の間隔、ケージの大きさ——どれも記録されていないので、「47年生きた飼い方」を記録から取り出すことはできません。「長生きさせる〇か条」をこの数字から導くのは、やってはいけない引き方です。

言えるのは、別の資料で根拠がある話のほうです。たとえば次の3つは、いずれも長寿記録とは別の資料から出ています。

  • 温度は「1つの正解」ではなく勾配で作る資料ごとに推奨の数字が違うことまで含めて、当店の適温と温度勾配の記事にまとめています

  • 体型は「丸い」「三角」の言葉だけで決めない肥満の評価は資料によって基準が食い違います。体型の見方の記事で、何が確かめられていて何がそうでないかを分けました

  • 迎えた直後と、不調のサインが出たとき新しい個体を分けて見る期間は検疫の記事、受診先の探し方は病院の探し方の記事にあります

年齢の話でもう1つ。迎えるときの1歳差が、そのあと一緒にいられる年数にどれだけ効くのかも分かっていません。年齢ごとの残りの寿命を出した資料は、当店がベビーとヤング・アダルトの比較記事を書いたときにも見つけられませんでした。

当店 LilBalls の考え方

当店は、お問い合わせで「何年生きますか」と聞かれたときに記録のほうの数字を先に出さないようにしています。47年6か月という飼育の記録も、推定62歳という報道も事実ですが、手元の個体の寿命の予測値として使う数字ではないからです。先に出すのは20〜30年の目安のほうです。

そのうえで、この記事を書いていて印象に残ったのは、47年6か月の記録が「1945年3月26日取得、1992年10月7日死亡」という2つの日付で残っていることでした。取得日と死亡日が記録として残っているから、いま期間を確かめられます。

家庭でも同じことができます。迎えた日、体重、脱皮、拒食の始まりと終わり、受診。日付を残しておくと、「去年の同じ時期はどうだったか」が後で引けます。当店のストレスチェックツールや給餌アドバイザーも、手元の記録があるほど答えやすくなります。

まとめ

  • AnAge が最大寿命として載せているのは47.5年フィラデルフィア動物園のメス、個体番号300411。1945年3月26日取得、1992年10月7日死亡。AnAge はこの記録を「47.5年(飼育下)」として載せ、出典に Slavens の集計を挙げています

  • ただしそれは在園年数で、年齢ではありません載っている日付を引くと記載の年月に一致します。搬入時に何歳だったかは書かれていません——本当の年齢は、これより上かもしれません

  • 「62歳」はセントルイス動物園の361003の推定年齢報道の62は搬入時の推定約3歳+在園約59年。動物園自身の発表は「50歳を超える」、CNN は「少なくとも62歳と見られる」でした

  • AnAge の出典は Slavens のウェブ版です当店が確認できた経路はここまでで、1977年・1992年の集計からこの記録が引き継がれたかどうかは分かりません。「複数の資料が独立に一致している」とは言えません

  • 高齢での産卵の記録はありますが、例外として扱われています35歳で有精卵を産んだという記述があり(算定の根拠は確認できません)、2020年7月23日には15年以上オスと同居していないメスが7個を産みました。担当者は「卵を産んだヘビとしては知るかぎり史上最高齢」と述べています。単為生殖か精子貯蔵かは隔離期間では区別できず、当店は結果を公表した資料を確認できませんでした

  • 野生の寿命は、この記録からは分かりません記録はすべて飼育下のもの。野生の老化を横断的に集めた2022年の研究も、変温性の四肢動物はこの分野で十分に扱われていないと書いています

  • 迎えるときに見る数字は20〜30年の目安です記録を見込みに読み替えない。長寿記録の表には飼い方が書かれていないので、「47年生きた飼い方」を取り出すこともできません

「最長何年か」を調べ始めて、答えが「人の手元にいた期間の記録」だったのは意外でした。ボールパイソンの長寿記録は、記録を取り続けた人がいて初めて残っています。手元の1匹について同じことをするなら、必要なのは特別な設備ではなく、日付を書いておくことです。

参考にした資料

英語の資料からの引用は、いずれも当店の訳です。閲覧日はいずれも2026年10月15日です。

長寿記録の集計

  • Slavens F, Slavens K. Reptiles and Amphibians in Captivity - Longevity - Snakes(Python 属のページ)(Python regius の8件。PHIP 47年6か月/STLM 35年4か月ほか。書式の説明とコード表)
  • de Magalhães JP, Costa J. AnAge entry for Python regius(最大寿命47.5年・飼育下、出典 ref. 451)。フィールドの定義は AnAge の help ページ(sample size は ISIS 由来の種レベルの推定、large は1000個体超/data quality は low・questionable・acceptable・high の4段階)
  • Bowler JK. Longevity of Reptiles and Amphibians in North American Collections. SSAR, 1977(Slavens のコード表の LIT.a。30年6か月のオスの行がここに由来します)
  • Snider AT, Bowler JK. Longevity of Reptiles and Amphibians in North American Collections. 2nd ed. SSAR, 1992(同 LIT.e。47年6か月の行の出典としては挙げられていません)

獣医療・飼育の解説

  • Ball Python Care(VetFolio)(47年の記録、飼育下で典型的な20〜30年、35歳での有精卵。出典は Klingenberg R, de Vosjoli P, Barker D, Barker T. The Ball Python Manual. Bowtie, 1995)

セントルイス動物園の個体(2020年)

  • Saint Louis Zoo の2020年9月8日の投稿(「50歳を超える」「動物園で記録されている中で最も高齢のヘビ」「15年以上オスと一緒にいない」)
  • Oldest Known Snake In A Zoo Lays Eggs Without Aid Of Male Snake(Reptiles, 2020年9月8日)(園の Facebook 投稿の引用。チャールズ・H・ヘスル爬虫類館)
  • A ball python laid 7 eggs at the Saint Louis Zoo(CNN, 2020年9月11日)(「少なくとも62歳と見られる」、2009年のクラッチ、1980年代後半〜1990年代初めのバケツ、精子貯蔵の最長記録は7年)
  • A 62-year-old python at the St. Louis Zoo laid 7 eggs(CBS News, 2020年9月11日)(個体番号361003、1961年に個人の飼育者から、7月23日、卵の内訳)
  • Python would be oldest snake on record to give birth if eggs hatch(Fox News・Peter Aitken, 2020年9月11日。AP 協力)(1961年に推定約3歳で個人の飼育者から搬入、「知るかぎり史上最高齢」、無性生殖は「異例だが、まれではない」)
  • Hold the Male! Snake Lays Eggs By Herself(News For Kids, 2020年9月18日)(1961年に約3歳で譲られた=約62歳)
  • The World's Oldest Known Snake In Captivity Became A Mom At 62(IFLScience)(2個が孵化して1匹が生存。2021年の死亡は「Reddit で共有された動物園のメール」が根拠)

査読論文

  • Reinke BA, ほか. Diverse aging rates in ectothermic tetrapods provide insights for the evolution of aging and longevity. Science. 2022;376(6600):1459-1466(野生の107個体群・77種。系統と体サイズを調整した解析。著者機関が公開している全文)

当店の記事

  • 卵から成体まで、ボールパイソンの寿命と成長過程について解説(飼育下は20〜30年、野生は明確に分かっていない、フィラデルフィア動物園の47年)
  • ボールパイソンとは?生態・特徴から寿命・値段・飼い方まで解説(「最高齢は62歳」の囲み、20年以上の付き合いになること)
  • ボールパイソンの魅力が分かる!初めてでもできる飼育法を解説(「野生では約10年といわれますが」)
  • ボールパイソンの単為生殖|オスなしで卵が発生した記録と、精子貯蔵との見分け方
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日々100以上のヘビが食べている安心、安全の冷凍ラット・冷凍マウスです。食いつきもご好評いただいております。

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Lil Ballsは、ボールパイソンブリーダーが運営するボールパイソン専門店です。

世界最高峰のUS有名ブリーター(KINOVA等)から親子個体を購入し繁殖を行なっております。

最高の遺伝子を持ったボールパイソンの親を育て上げ、最高のボールパイソンを生み出すことを目的に日々精進しています。

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